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 昨年ミニアルバム『DANGEROUS くノ一』でメジャーデビューを果たした男女5人組バンド、アカシックが初のフルアルバム『凛々フルーツ』をリリースする。まるでフランス映画の主人公のように、生々しく赤裸々で、刹那的な女性を描くヴォーカル理姫(りひ)の歌詞と、疾走感あふれるギターサウンド。そうした従来の路線を引き継ぎつつも、本作ではよりカラフルでバラエティ豊かなアレンジや、ハッピーな歌詞が増え、バンドとしての引き出しの多さを感じさせる内容となった。本作で初めてキーボディストHachiが作曲した、ジャジーでダークな楽曲もアルバムにさらなる深みを与えている。
 チャーミングかつユーモアたっぷりの人柄が、会う人誰をも魅了する理姫。そんな彼女にアルバムのこと、近況などについてたっぷり聞いた。

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「アカシック」ヴォーカル理姫(りひ):アルバム『凛々フルーツ』をリリース


アカシック 「8ミリフィルム」>>


■ 岡崎京子のマンガ『リバーズ・エッジ』の感想文が歌詞に

ーーメジャーデビューアルバム『凛々フルーツ』の由来は?

理姫:「ちょっと爽やかでポップな感じがいいな」と思って。お菓子とかジュースでも、「フルーツ味」って爽やかっぽいじゃないですか。なので、果物をテーマにしたらいいかなって。
それで、「フルーツ、フルーツ......」って頭の中で繰り返してるうちに、ゲシュタルト崩壊してきてよくわかんなくなってしまったんです(笑)。こんなに「フルーツ」という言葉について考えたこともないし、いいやフルーツで! ってなって。最初は「フルーツ!」みたいなタイトルにしようかなと思ったんですけど、他の言葉もつけようと。私は「凛(りん)としている」とか「凛々しい」っていう言葉が、響きも含めて好きなんです。それで、「今年のアカシックは凛(りん)として、一枚脱いで爽やかに」っていう意味も込めて、『凛々フルーツ』(ヨミ:リンリンフルーツ)にしました。

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「アカシック」ヴォーカル理姫(りひ):アルバム『凛々フルーツ』をリリース

ーーなるほど。「フルーツ」にはカラフルで爽やかなイメージもあるし、「りんりん」っていうかわいらしい語感と、「凛(りん)として」の意味のギャップも面白い。いろいろなイメージが湧いてきますね。まさに本作のイメージそのままって思います。

理姫:ああ、よかったです!

ーー相変わらず理姫さんの言葉のセンスは絶妙で。"馬鹿なハスキーエイジジャーニー"(「馬鹿なハスキーエイジ」)とか、どこから思いつくんですか?

理姫:わたし岡崎京子さんが大好きで、この曲は彼女の『リバーズ・エッジ』を読んでの感想文なんですよ。「なんか、スレた青春時代を過ごしてるなぁ」っていう人たちばかりの話で。あの人たちが大人になってから当時のことを思い返したら、「馬鹿だな」って思うのかな......とか考えているうちに浮かびました。

ーー「スレてる」から、「ハスキー」なんですね。なるほど! 確かに理姫さんの歌詞の世界観は、通じるものがありますよね。

理姫:あ、すごくうれしいですそれ! そうなんです。岡崎京子さんのマンガに出てくる女の子のイメージは、結構多いです。

■ スナックに行くとチョコを食べて、泣きながらカラオケやってる

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「アカシック」ヴォーカル理姫(りひ):アルバム『凛々フルーツ』をリリース


ーーメジャーデビュー・ミニアルバム『DANGEROUS くノ一』は、「女」について歌った歌詞というふうにテーマが決まっていましたが、今回は?

理姫:歌詞も、ちょっと今までのイメージとは違くて。過去の3枚を書いていた頃は、自分自身がよく夜に遊びに出かけていたし、お酒も飲んでいたし、「フリーターで好き勝手やってて、合間にバンドやってました」みたいな生活が、そのまま出ているんです。歌詞も遊んでいたり、お酒を飲んでいたり、男の人との話だったりとか。
でも最近は、生活リズムも変わってきて、昼はこうやってヨコハマから東京に出てきて仕事して......ってなると、お酒を飲んだり夜遊びしたりする時間も無くなってきて。そしたら書きたいことが、今までより溌剌(はつらつ)としてくるっていうか。「太陽の下が似合うイメージの歌詞が欲しいな」って。あんまりドロドロした感じは匂わせないようにってなりましたね。

ーーそんな中、「ヨコハマカモメ」や「ロリータ」に出てくる女の子は、『DANGEROUS くノ一』の女の子に近いのかなって。

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「アカシック」ヴォーカル理姫(りひ):アルバム『凛々フルーツ』をリリース


理姫:うん、近い!「ヨコハマカモメ」はまさにそうですね。私自身、ネットとかで「ケバい」ってよく言われてるし(笑)。「夢見ながら歩いてきたけど、イマイチ成功できない」とか、「物足りてない」とか、そういう気持ちをそのまま歌った曲でもあり、世のケバい女性に、怒りをぶつけながら歌って欲しいなと思って作った曲でもあります(笑)。歌詞の中に「チョコ」というワードが出てくるんですけど、スナックとかに行くと、よくおつまみでチョコ食べるんですよ。チョコ食べて、泣きながらカラオケやってるんです。

ーー(笑)。「8ミリフィルム」は、アルバムの中で唯一の理姫さん作曲ですよね?

理姫:これはもともと、(奥脇)達也(ギター)からデモが上がってきて、聴いたらイマイチだったんです(笑)。そのとき彼は、自分でも言ってるけど「落ちていた時期」というか、何を作っても良くない時期が2カ月くらい続いて。「ほんとダメだな」って私も思ってたんですけど(笑)、まぁ別に慌てて曲作らなくてもいいからしばらく放っておこうと思って、このデモも聞かずに放置してたんですよ。だけど、リハもあるしと思ってもう一度聞いてみたら、コード進行とかそういう全体の雰囲気は、意外と悪くないなって思い直して。それで、もったいないから別のメロディを考えてみたんです。わたし、何かにガムシャラに打ち込むことって年に1回くらいしかないんですけど(笑)、このときは夜、家でピアノと向かいながら歌詞まで一気に作りました。

ーーそこから達也さんも奮起して?

理姫:うん、きっと彼も悔しかったと思うんですよ、ボツにされて。

ーーそりゃそうですよ。じゃあ、「8ミリフィルム」は今回のターニングポイントだったんですね。ミュージックビデオはiPhoneのアプリのみで撮影したとか。

理姫:はい。木村(豊)監督のアイデアで。そもそもは「ホンモノの8ミリで撮れたらいいね」って話もしてたんですけど、今の技術を使って8ミリっぽくアプリで撮る方が今っぽいし、アカシックっぽくもあってその方がいいんじゃないかなと。

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「アカシック」ヴォーカル理姫(りひ):アルバム『凛々フルーツ』をリリース


ーー撮影中、印象に残っているエピソードは?

理姫:実は、この撮影現場に飼い犬を連れてったんです(笑)。最近、わたし柴犬(しばいぬ)を飼い始めたんです! レコーディングに行くとき、いつもと違う道を通っていったら、なんだか陰気なペットショップがあって(笑)。普段、わたしはペットショップとか苦手だし、動物にも全然興味がなかったんですけど、ガラスケースの中で座っている柴犬(しばいぬ)と、つい目が合ってしまったんですよね(笑)。そのあと2回見かけて、2回ともオスワリしているのを見て、たまらず連れて帰ってきちゃいました(笑)。『凛々フルーツ』の制作中に出会ったから、「凛(リン)」っていう名前なんです、PVの撮影で登場させたかったんですけど、それは今回実現しませんでした。でも、みんなで犬をかわいがりながら、和気あいあいと撮影したのが「8ミリフィルム」のPVです(笑)。

■ 経験として一度、結婚してみるのもアリかな~みたいな

ーーアルバムの1曲目が"結婚"というタイトルで、これもなかなかインパクト大きいですよね。

理姫:この曲は、「幸せな結婚をします!」とかそういうテーマではなくて、例えば自分がずっと好きだった人が結婚しちゃったとか、逆に、「わたしは結婚するから、元カレに悔しい思いをさせたい」とか、そういうちょっとネガティブな気持ち。これ、私が二十歳くらいのときに歌詞が出来ていて、曲もデモまで作ってあって。それをあらためて引っ張り出してレコーディングしてるんです。

ーーその当時の実体験?

理姫:実体験が元になっています。「結婚してもいいかな?」って思うくらいの人が二十歳のときにいたんですけど、うまくいかなくて。その人はわたしと、もう一人別の女の子と両方にいい顔してて、あるとき、「崖から二人が落ちそうになったら、僕は彼女を助けます」って言われたんですよ。「はあ?」って感じで馬鹿馬鹿しくなって、そのときにできた歌詞。「将来、絶対に幸せな結婚して思い知らせてやろう」って。

ーー理姫さんは結婚願望ってあります?

理姫:こないだ占いをやったら、「来年結婚します」って言われて「マジか?」って(笑)。でも、生まれたときの運命で見ると、結婚に向いてるのは42歳らしいんですよ。結構、晩婚ですよねそれって(笑)。でもまあ、確かに私、42歳くらいにならないと落ち着かないのかも。一度くらい、経験として結婚してみるのもアリかな~みたいな。離婚はしたくないですけどね(笑)。

ーー相変わらず実体験をもとにした歌詞が多いのですか?

理姫:最近は空想も少し入ってますね。さすがに自分のエピソードだけでは足りなくなってきたので、映画を見たり本を読んだりして。「8ミリフィルム」は、ベースは実体験なんですけど、『Jam Films』(ショートフィルムを集めた日本映画のオムニバスシリーズ)と同じシリーズで、女性をテーマにした『female』というのがあって。その中の、『桃』っていう短編映画(監督:篠原哲雄 / 主演:長谷川京子)にインスパイアされた要素を入れています。やたら桃が出てくる変な映画だったんですけど(笑)、この曲の歌詞の中にも「桃」を入れたらかわいいかなって。

ーー理姫さんの歌詞は、一度読んだだけではよくわからなくて、でも曲の中で聞くと映像がヴィヴィッドに浮かんできたり、突然理解できたりして、とても文学的だなって思うんですよね。

理姫:私自身は、実は何も考えてなくて。歌詞については、誰からも何も言われないので、本当に自由に書いているだけなんです。お客さんにも、私の歌詞は意味がわからないところが好きだって言われるんですけど、自分では完全に辻褄(つじつま)が合ってるつもりなんですよ! なので最近は、ちょっとでもわかって欲しくて、「恋は媚薬だなんて冷めるわ」のサビとか、過去最強にわかりやすくしています。

■ 今日は三代目 J Soul Brothersを聴いてました!

ーーサウンド的にも、これまでの疾走感あふれるバンドサウンドから、非常にいろいろなタイプの曲が一気に増えました。

理姫:そうなんです。今までのように、「売れるためには、どういう曲を作ったらいいのか?」とかあんまり悩みすぎず、自然にできた曲を突き詰めようってなってたのかなって、後から思いましたね。これまでのアカシックの「刺々しい曲」っていうのは、あえて「そういう曲を作ろう」と思って、頑張って作ってた部分もあったんです。それを、ちょっと力を緩めてリラックスして作ると、アカシックはこういうサウンドになります......っていうアルバムになりました。

ーー等身大のアカシックが、そのまま詰まったアルバムなんですね。ところで、バンドのみなさんは普段、どんな音楽を聴いていますか?

理姫:わたしは、以前は浜崎あゆみさんとかが大好きで、Jポップをよく聴いてたんですけど、最近はわりと洋楽を聴いてるかな。あ、でも今日は三代目 J Soul Brothersを聴きながら来ました! あとはセレブロ(ロシアの3人組女性グループ)とか、メジャー・レイザー(ダンスホール集団)とか? 洋楽の中でもちょっとクラブ系が好きで、私たちのバンドサウンドとはかけ離れてますね(笑)。達也は今、カーディガンズが好きって言っていました。「あらためて聴いてる」って。ドラム(山田康二郎)はゲスの極み乙女。とか聴いているし、みんなバラバラですね。

ーーHachiさん(キーボード)が書いた"ギャングスタ"と"うたかたの日々"は、バンドにとって新機軸といえる楽曲ですよね。

理姫:そう、キーボードのギャル担当が(笑)、このバンドで初めて曲を作りました。達也が書く暗い曲とは、また違う暗い曲を書いてくれるんじゃないかなと思ったので、"うたかたの日々"に関しては、「テーマは"うそ"で、暗い曲を」ってリクエストしました。予想通り、達也の書く曲よりも闇が深かった(笑)。なんか演奏も難しそうですよね。

ーー(笑)。以前インタビューした時は、「ここから売れなかったら意味がない。だから焦っています」とおっしゃっていましたが、これからアカシックが必要だと思うことは?

理姫:諦めないこと。楽しく、けんかをしないこと。なんか、前は「売れたい売れたい」って「売れる為には?」って常に考えてたんですけど、何が売れるかなんてわからないし、はやりに寄せてこうとするよりも、自分たちで何か一本筋を通していったほうが、売れていくんじゃないかって。「いつまでこの事務所にいられるのだろう?」とか不安ももちろんありますけど、せっかく等身大のアルバムができたのだし、どんな環境になったとしても、あと何年かはこのバンドで続けていきたいです。といいつつ、次にお会いしたときは「ランニングマン」踊っているかもしれない(笑)。

◆ 理姫
理姫(ヴォーカル)、奥脇達也(ギター)、黒川絢太(ベース)、Hachi(キーボード)、山田康二郎(ドラム)からなるアカシックのボーカリスト。理姫、奥脇、黒川の3人で2011年に結成。誰もが口ずさみたくなるキャッチーなメロディと、ヨコハマ生まれ繁華街育ちのヴォーカル理姫による、彼女のキャラクターが全面に出た独特な詞の世界観で話題を呼ぶ。2014年8月、Hachiと山田康二郎が加入し現在の5人体制となり、10月にセカンドミニアルバム「プリチー」をCOCONOE RECORDSからリリース。2015年6月、unBORDEよりメジャーデビュー・ミニアルバム「DANGEROUS くノ一」をリリース。座右の銘は、「考えずに食べること」

(文/黒田隆憲)
(写真:トレンドニュース)

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