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週刊少年ジャンプ誌上での原作の連載終了とほぼ同時に映画の完結編として公開される映画『暗殺教室~卒業編~』(3月25日公開)。ついに謎の生命体"殺せんせー"の正体と目的が明らかになり、物語は興奮と感動のクライマックスを迎える。大ヒットした前作に引き続きメガホンをとった羽住英一郎監督に、新作への思いを聞いてみた。

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3月25日公開 映画『暗殺教室~卒業編~』羽住英一郎監督


■マンガを読む読者のペースに負けない映画を作りたかった

――原作と同時に完結するという異例のメディアミックスですが、これは前作の撮影時から決まっていたのですか?

 いえ、前作の時には続編の製作は決まっていませんでした。もちろん作る気は満々で、あえてそういう終わり方にしていますが、映画ってヒットしないと続編は作れませんから......。ただ原作者サイドから「来年には終わらそうと思っているので、続編ができて一緒に終わらせられたらいいですね」というお話はいただいていたので、ぜひ作りたかった作品です。

――この題材を引き受けたきっかけは?

 プロデューサーからお話をいただいた時はまだ原作を読んでいませんでした。『暗殺教室』というタイトルから、教室で殺し合いをするような話だったらオレには向かないな......と思って読んでみたら、想像とは違って面白い作品だったんです。ちゃんとテーマも感じられましたし。

――原作者の松井優征先生とは綿密な打ち合わせを?

 お引き受けする前にロングプロットをいただきまして、この話がどこに向かおうとしているのかは理解して始めました。ただ、やっていくうちに、「ここは変えないと2時間の映画にはならない」という部分が出てきて、そこは打ち合わせを重ねましたね。「ここは原作的に大事だから変えないでくれ」という部分もあれば、逆に映画で変更した部分のキャラが原作で新たに登場した、ということもありました。

――全般的にテンポがよく、ダレ場のない快調なペースで展開していきます。そこは意識しましたか?

 原作のマンガを読む読者のスピードって速いじゃないですか。電車の中などで見かけると、すごい勢いでページをめくっていく。あの感覚を生かしたかったんです。特に、長い原作をギュッと詰め込むためにも、観客が乗り遅れちゃいそうなスピード感で進めたいと思っていました。この映画に限らず、僕自身がテンポのいい方が好きというのもあります。

――展開はいわゆる少年ジャンプのストレートな王道路線で、『MOZU』などの複雑な社会構造の作品とはかなり世界観が異なるような気がするのですが......?

 どちらも好きですが、難しさで言えば『暗殺教室』の方が難しいです。『MOZU』は雰囲気が大事で、そこさえ守れば全然違う話も作ることができました。振り切ってしまえば、それが味だったりもするわけです。基本的に原作ものを映画化する場合、その精神さえ変えなければ映画として完成されているかどうかが大事なんですが、『暗殺教室』では逆に原作に寄せていく必要があるな、と。それはこれが現在進行形で連載中の作品で、読者と一緒に歩んでいる最中のものであるということ。おそらくは原作に対する理解度から言うと、現役の読者の方が上だと思うからです。僕が何度原作を読み返したとしても、毎週続きを楽しみに待っていた人たちのワクワク感に追いつくのは大変ですしね。

■"変わらないこと"から感じた若手キャストの成長

――この作品は若手のキャストがほとんどですが、どういう演出をされましたか?

 E組の生徒たちには「楽しんでくれ」という話をしました。撮影も合宿形式でやりましたし。この映画の世界観はファンタジーなんですが、「こんな学校あったらいいな」と、うらやましく感じられる部分があります。それを観客に感じてもらうには、演じている方も楽しんでもらう必要がありますから。個々の役柄に関しては、たぶん彼らの方が原作をより理解している、と思っていました。それは読んだ回数とかではなくて、彼らが現実に毎週ジャンプを読んでいる子たちだからこそ持っている肌感覚によるもの。だから、ある程度は俳優たちに委ね、そこから出てくるものを撮るやり方でいきました。

――前作の撮影から1年経過しているわけですが、彼らの成長は感じられましたか?

 もちろん、それぞれがさまざまな経験を経て成長していました。しかし、E組の教室に入ると、ちゃんと以前の彼らに戻れる。それぞれのバラバラの"今"ではなく、前作とつながった時間を過ごしていたかのようになれることこそが、本当の成長だったんじゃないですかね。

――メインのキャラクターである"殺せんせー"がCGというのは撮影的には大変だったのでは?

現場で俳優に芝居をしてもらう、という点では他の映画と同じでした。違いがあるのは、その後。撮影が終わってからも、まだ触手や表情での芝居を作って行かなきゃならない。クランクアップしたのに、一人だけアップしていないキャラがいる、という感じですね。

――"殺せんせー"役の二宮和也さんのセリフと芝居はどう合わせたのですか?

 まず俳優さんに"殺せんせー"の造形の中で演じてもらって全編の撮影を行います。それをざっと編集して、この段階で二宮さんに声を入れてもらいました。その声に合わせてCG部が表情などを作っていき、さらに編集。最終的にはもう一回声を録り直します。

――さらに今回はCGキャラ同士のバトルという、監督の作品には珍しいシーンもあります。

 CGの量が多いので、絵コンテをまず作る必要がありました。しかしフルCGのキャラといっても、実際に表情の部分は俳優さんに演じてもらい、それを生かして作りましたので、普通の現場と同じ感覚でやれました。

――原作をお読みになって、お気に入りのキャラとかはいらっしゃいますか?

 生徒ではカルマ(赤羽業・あかばねかるま)が自分たちの世代に近い考え方をしているので親近感がわきました。あとは、やっぱり"殺せんせー"ですね。彼はある意味"理想の教師像"だと思うんですよ。しかも、こういう世界観だからこそ描ける存在。70年代なら生身の先生役が演じていて、いわゆる"熱血先生"で成立できたかもしれない。しかし今の時代にそれをやったら、あちこちからクレームが来ちゃいますよね。もう学園ものとしては描けなくなった理想の教師を、このブッ飛んだ世界だからこそ描けると思って作っていました。

■テレビドラマが"サラダ"だとしたら、映画はじっくり煮込んだ"シチュー"

――そんな監督ご自身を映像の世界に目覚めさせてくれたものは何ですか?

 名画座で見た映画『第三の男』(49・キャロル・リード監督)です。中学生の時には小説家になりたかったんですが、映画にはストーリーだけじゃなく、芝居、音楽、映像、ライティング...すべてがあるということを教えられました。この映画にはそれが完璧にそろっていて、すごく衝撃を受けたんです。

――映画でもテレビでもご活躍ですが、その違いを意識されていますか?

 技術的には同じですが、テレビの連続ドラマは"サラダ"、映画は"シチュー"だと考えています。テレビは旬な素材(売れているキャストやヒットしそうな歌)を手際よく集めて新鮮なうちに作って見せるもの。極端に言えば"撮って出し"の場合、2週間前の出来事を入れ込むことも可能です。映画はその逆で、最低でも半年はかかりますから、スピード感で勝負するのは無理。その代わり、じっくりと時間をかけて作り込むことで商品にするわけです。どちらもおいしい料理にする、ということでは同じですけれどね。
 また、それぞれの成り立ちも違います。テレビはラジオから進化したものなので、音やセリフが大事。一方の映画はもともとがサイレント(無声映画)だったわけで、まず映像で表現するものなんです。見る環境の違いも含めて、そこは意識しています。

――最後に、ジャンプ世代以外の人に向けてのメッセージをお願いします。

 もしタイトルから殺し合いのある殺伐とした映画を想像しているのであれば、まったく違いますし、これが初めての『暗殺教室』体験で、前作を見ていなくても大丈夫です。原作と同時進行ですから、映画を見てから原作を読んでも楽しめると思います!


映画『暗殺教室~卒業編~』は昨年春に公開されて大ヒットした、映画『暗殺教室』(週刊少年ジャンプ連載の人気マンガの映画化)の完結編。2学期を迎え、残された暗殺の時間もあと少し。そして謎の生命体"殺せんせー"が語り始める。「先生は...かつて"死神"と呼ばれる殺し屋でした...」その驚愕(がく)の過去を知った時、3年E組の生徒たちは分裂。先生を助けたいと願う潮田渚(山田涼介)と、暗殺を続行しようとするカルマ(菅田将暉)が対決することに。そして、"殺せんせー"消滅をたくらむ大きな陰謀も動き出していた...。出演はほかに二宮和也、山本舞香、桐谷美玲、知英、成宮寛貴、椎名桔平。監督は前作に引き続き羽住英一郎。3月25日から公開。


羽住英一郎(はすみ・えいいちろう)
1967年生まれ、千葉県出身。ROBOT所属。数々のテレビドラマの演出を手がけ、『海猿』(04)で映画監督デビュー。大ヒットした同シリーズ(06~12)のほか、『逆境ナイン』(05)『銀色のシーズン』(08)『おっぱいバレー』(09)『ワイルド7』(11)『劇場版 MOZU』(15)などを監督している。
座右の銘:映画作りを楽しむ。自分だけでなく、参加したみんなにも楽しんでほしい。


(取材・文/紀平照幸)
(写真:トレンドニュース)

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エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
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