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今年シリーズ30周年を迎えるゲーム『プロ野球ファミリースタジアム』シリーズ(以下、ファミスタ)。同作の開発者であり、"ファミスタの父"と呼ばれる岸本好弘さんにインタビューしてきますと伝えると、筆者の上司が「まじか!」と叫び急にファミスタの思い出とやらを口走り始めた。

いわく「やっぱファミスタは初代だよね」「電鉄連合なんてかどた・いしみねが控えなんだよ!?」「バットちょん出しのバントは極めた」「満塁で内野フライわざと落とすのはデフォ」「やまだの変化球はトラウマ」など、誰も聞いてないのに意味のわからないことを楽しそうに語ってくる。あのう......私そろそろ取材に出ますんで......。

今までゲームの話なんてしたことがない上司があんなに熱くなるなんて、ファミスタ恐るべし。そんなファミスタの"父"岸本さんは、とても野球が好きな、野球を愛する人だった。

サムネイル

(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 岸本好弘さん)


■ナムコ社長に表彰され100万円をいただきました

「『ファミスタ』は4人のスタッフで半年間かけて作りました。私はもう関わっていないけれど、30年たった今でもシリーズが発売されているなんてありがたいですね。私はもともとプログラマーだったのですが、企画もやっていたし、ファミスタのあのキャラクターも私が描いたんですよ。素人だから、選手も歪んだような丸っこいものしか描けなかった(笑)。でも作るのが楽しかった時代なので、大変ではなかったですね。

『ファミスタ』はわざとCOM(コンピューター)を弱くしています。それで友達と一緒にプレイすることを狙っていました。『ゲームは友達や兄弟と一緒に遊ぶものなんだよ』というメッセージを込めていたんですよ。ファミコンも最初はコントローラーがふたつ付いた状態で販売されていましたしね。

最終的に初代『ファミスタ』は280万本売れました。そうしたら、ナムコでゲームを作って初めて社長に表彰されました。社長から表彰状と一緒に『岸本君、ありがとう』って現金100万円を渡されたんです。私の上司はその場に呼ばれていなかったので、あとでお金を少し分けました(笑)」

■野球は球場で見て欲しい

「『ファミスタ』はスマホで撮る写真1枚よりも少ない容量で作られているんです。ずっと任天堂の『ベースボール』とか、セガの『グレートベースボール』で遊んでいて『ここをもっと変えればいいのに!』という部分がたくさんあった。それで、自分も作ってみようと思ってできたのが『ファミスタ』でした。作っている最中から『これは結構売れるかも』という手応えはありましたね(笑)。

今の野球ゲームってすごくシミュレーションみたいなのが多いじゃないですか。当時はハードの性能も低かったし、私はシミュレーションじゃなくて"野球のゲーム"が作りたかったんです。だからものすごいバッターやピッチャーが登場したり、『ぴの』みたく人間離れした足の早い選手を出しました。そうしたほうが"野球のゲーム"としての面白さが伝わるかなと思ったんです。

プレイ画面の視点にもすごくこだわりがありました。まだ川崎にロッテオリオンズがあった時代、私は野球場で見る野球がすごく好きで、年間40試合くらい見ていたんです。そのときに、バックネット裏の最上の席から見ていた景色が、『ファミスタ』の視点になっています。テレビで見る野球もいいけれど、球場でも見てくださいという願いを込めて作った視点でした」

■選手の能力は実際に見て決めた

「選手の能力は、実際に自分で見て考えました。でもこの時代は野球場かテレビでしか野球を見ることができなかった。なので、打率とかホームラン数はわかっても、ピッチャーの球速とか変化球っていうのは実際に球場に行って見るしかなかった。選手名鑑に『カーブはA』とか書き込むんですが、これは結構大変な作業でしたね(笑)。選手のデータは全部私が作っていたのですが、初代『ファミスタ』では、あるピッチャーの右と左を間違えてしまったなんていうすごいミスをやらかしてしまったこともあります(笑)。

最初、ファミスタは阪神ファンがすごくいっぱい買っていて、関西ですごく売れていたんです。だけど、阪神がだんだん弱くなっていった時代があった。そこで、ゲーム内でも選手のデータを下げて、チームを弱く......という風に設定したんですね。そうしたら会社の営業さんから『岸本さん、阪神をもうちょっと強くしてくれないと関西で売れません!』みたいなクレームが入ったこともありましたよ(笑)

今はスマホゲームがはやっていて、コンシューマーゲーム(家庭用ゲーム)の市場はちょっと盛り下がっていますね。でも、カードゲームや『人狼』といったTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)をプレイする人も増えました。友達と集まってプレイするようなアナログゲームがはやり始めていますね。これからはこういったゲームに再びスポットが当たるのかもしれません」

そういえばしばらく友達と顔を突き合わせてゲームしていないなあ。今頃上司も昔のファミスタ引っ張りだしてるかも......?

(取材・文/おきざきみあ@HEW
(写真:トレンドニュース)


◆岸本好弘(きしもとよしひろ)
1959年生まれ。兵庫県出身。29年間に渡り、ナムコ、コーエーでビデオゲームの開発担当。代表作は『ファミスタ』で、「ファミスタの父」とも呼ばれる。51歳にしてニュージーランドへ留学した後、2012年から東京工科大学メディア学部特任准教授を務める。好きな食べ物はオムライスで、オムライス通としてメディアに取り上げられることもある。座右の銘は「笑う門には福来る」。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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>> 岸本好弘さんが出演する、GYAO配信番組「ぶるぺん」

ファミスタの父が語る初代開発の秘話 ぶるぺん(00:03:51)>>


ファミスタの視点に隠された作者の意図 ぶるぺん(00:01:06)>>


ファミスタのあるチームが弱くてクレームが ぶるぺん(00:01:47)>>


ファミスタのCPUが弱かった優しい理由 ぶるぺん(00:01:50)>>


その他の出演番組>>

・ファミスタ大ヒットで異例の社長賞受賞
・ファミスタにナムコスターズがあった訳
・ファミスタの選手の能力の決め方とは?

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