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短編小説の主人公を演じるように歌う、原田知世のラヴソング・カヴァーアルバム第2弾『恋愛小説2~若葉のころ』が5月11日にリリースされる。前作が英語曲のカヴァー集だったのに対し、今作はリクエストに応えて全編邦楽曲で構成されているのが特徴。「原田知世の少女時代」をテーマに、彼女が姉とともに長崎の実家で歌手の真似事をしていたころから、芸能界デビューしたころ(1970年代半ば~1980年代前半)にかけて流行した、本人にとっても思い入れの深いポップスや歌謡曲が詰まっている。プロデューサーは、前作に引き続き伊藤ゴロー。近年の原田の作品を数多く手がけるギタリスト/作曲家で、いつものなじみ深いサポート・メンバーたちとともに、ナチュラルでオーガニックなバンドサウンドを構築した。

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5月11日 ラヴソング・カヴァーアルバム第2弾『恋愛小説2~若葉のころ』をリリースする原田知世


優しく透明感のある歌声と、凛(りん)とした佇(たたず)まい。いつまでも変わらぬ魅力を放つ原田に、今作への思い入れや恋愛観、伊藤ゴローとのコラボレーションの魅力についてなど、たっぷりと語ってもらった。

リードトラック「September」(竹内まりや・1979年)>>


■ 変わっていく男の人を、すべて受け入れて送り出すのも「愛」

ーー少女時代に親しんだ楽曲を今歌ってみて、改めて気づいたことはありましたか?

原田:例えば「September」は、竹内まりやさんの歌声からは、こんなに切ない失恋曲というふうには子供のころは思っていなくて。曲名にもかかわらず「春に聴きたくなる曲だなあ」なんて思っていたくらいなのですけど(笑)、実はとても切ない失恋ソングなんですよね。この明るい曲調や歌声と、悲しい歌詞の組み合わせがより切なくなるというか。すごくすてきな曲だなとあらためて思いました。「ラブという言葉だけ 切り抜いた跡」とか、すごくかわいらしい女子だなあと思って、キュンってします(笑)。

ーー男女の立場も、当時と今とはかなり違う気がしました。「木綿のハンカチーフ」とか、男女逆なんじゃないかと。

原田: (プロデューサーの、伊藤)ゴローさんも同じようなこと言っていました(笑)。この曲も、当時こんなふうにストーリー仕立てになっているとは気づきませんでしたね。しかも、男女の気持ちが手紙のやり取りのように描かれている。こういった歌詞って、あまりないんじゃないかなって。このアルバムのテーマの一つが、「演じるように歌う」でしたので、そういう意味ではピッタリだなとも思いました。ああいう設定、今となってはまずあり得ないかもしれないですけど(笑)、でもそれがまたグッとくるというか......。なんていうか、本当の「愛」ってこういうことなのかなと思ったりもしたんです。女性の心がすごく澄んでいるんですよね。変わっていく男の人に対して、それも全て受け入れて「送り出してあげたい」っていう。

ーー受け入れて、送り出すことも含めて「愛」ということですよね。

原田:そうなんです。それってすごく大人の女性だなと思って。当時、この曲を聴いたときの私はまだ子供で、恋愛の切なさは全くわかりませんでしたが、いまはこの歌詞がとても胸に響きます。この歌はオリジナルの主人公よりもう少し大人の女性として歌ってみました。

■ 奇跡のような出会いは......あるかもしれない

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5月11日 ラヴソング・カヴァーアルバム第2弾『恋愛小説2~若葉のころ』をリリースする原田知世


ーー今回、歌ってみて思い出す恋愛はありました?

原田:思い出す恋ですか(笑)。うーんと、そうですね。前回の『恋愛小説』もそうでしたが、ラヴソングっていうのは、誰か特定の人を思い出すというより、恋しているときのキュンってする感覚がよみがえる感じだなって思うんですよね。なんとも言えない切ない気持ちとか。恋愛する相手が変わったとしても、毎回すごくドキドキしたりするのって、同じじゃないですか。その感覚を思い出したんです。

ーー特に印象に残った曲は?

原田:「やさしさに包まれたなら」は、とてもグッとくるんですよね。大人になっていろんなことが見えてきて、それでも何か、奇跡が起こる瞬間を信じていたい気持ちというか......。「目にうつる全てのことは メッセージ」というフレーズとかも、すごく深い歌詞だなあって。子供の頃のそういうピュアな気持ちは、誰しもまだどこかに持っていて、そういうものがこの曲の中に詰まっている気がするんです。なんの不安もなく、長崎の実家にいて、姉がいて、一緒に二人で歌っていた頃を思い出すというか。あのときみたいに、なんのしがらみも制約もなく「好きだから歌う!」っていう気持ちを思い出させてくれた、このアルバムの中でも一番胸に響く歌詞なんですよね。

ーーそういう子供の頃のピュアな気持ちを、大人になって思い出せるのが、恋に落ちた瞬間なのかもしれないですね。「おとなになっても 奇蹟はおこるよ」っていうフレーズは、そういうことなのかなって。

原田:あ、なるほど。今までそんなこと考えていなかったですけど、確かにそうかもしれないですね。だって、人と人とが出会うって、本当に奇跡みたいななことですし。「そんな奇跡なんて、もう起きないのかな......」と思っていても、もしかしたらまた起こるかもしれない。

ーー最近、原田さんに「奇蹟」は起こりましたか?

原田:(笑)。うーん、なかなか......ね。おかしいなあ(笑)。でも、誰でもそうですけど、「絶対にこうです!」っていうのはないと思うので、奇跡は......あるかもしれないってずっと思っています。

■ 「答え」っていうのはずいぶん先にあるものだから、途中ではわからないですよね

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5月11日 ラヴソング・カヴァーアルバム第2弾『恋愛小説2~若葉のころ』をリリースする原田知世


ーー今回、歌ってみて難しかった曲はありましたか?

原田:「秘密の花園」は、聖子さんの声の印象が強烈だから、歌おうとするとどうしても聖子さんの声が聞こえてくるんですね。そのくらいインパクトがあるから、どうやって歌おうかなと思っていたんですけど、アレンジがガラッと変わったおかげで新鮮に歌うことができました。ただ、やっぱり聖子さんのあのかわいらしさはすごく大切なところなので、ゴローさんからも「聖子ちゃんっぽい感じで」っていうリクエストがきました。もっとも私から遠いんじゃないかなという気もしたんですけど(笑)、私もそこがこの曲の魅力だと思ったので、できるだけポップなキュートさを出そうと心がけて歌いましたね。聖子さんと比べると、だいぶ薄味ですけど(笑)。

ーー歌と女優業、両立してきたことで得たものは?

原田:私はデビューした10代の頃から、歌と女優の仕事を両方やらせてもらえるという恵まれた環境でした。それで、20代の半ばくらいからは、「役」ではなく「自分自身」を出す場所として音楽は面白いのではと思うようになって。最初は鈴木慶一さん、そのあとトーレ・ヨハンソンさんに出会い、気づいたときには女優と歌手、二つの世界があって初めて"自分"というふうになっていて、それが個性にもなってきたのかなと思います。
計画立ててやってきたのではなく、本当に奇跡のように、とてもいいタイミングで、いい人たちと出会ってきて。そのおかげで自分の新しい扉を開くことができたんです。その中にゴローさんもいて、これまでずっと一緒にやってきました。音楽を始めていなかったら、こんなふうに長く続けてこられたかどうかわからないですよね。形は全然違うものになっていたかも。「答え」っていうのは、ずいぶん先にあるものだから、途中ではわからないですよね。

ーーそのときそのときで、興味があるものに素直に飛び込んでいったからこそ、今の原田さんがある?

原田:そう思います。

ーー来年で10年を迎える、伊藤ゴローさんとのコラボレーションの魅力は?

原田:ゴローさんは、私の声の魅力を一番よくわかってくれる人。いつもリラックスして、いい状態で歌えるように、常に考えてくださって。レコーディングでもすごく丁寧にディレクションしてくれるんです。その一方で、時々アルバムの中では、まさかと思うようなアレンジもあったり。今作ではキャンディーズの「年下の男の子」がそうですよね。すごくロックな一面もあって、毎回驚かせられるんですよ。安心感と刺激、両方があって、そのさじ加減が絶妙だから、これだけ長くやってこられたのだと思います。


◆ 原田知世(はらだともよ)
長崎市出身。11月28日生まれ。1983年、オーディションで5万7千人の中から選ばれ、映画『時をかける少女』で主演デビュー。近年は映画『サヨナラCOLOR』『紙屋悦子の青春』『しあわせのパン』、NHK連続ドラマ小説『おひさま』、NHKドラマ10『紙の月』、CBCドラマ『三つの月』、WOWOW連続ドラマ 『海に降る』など数々の話題作に出演。歌手としてもデビュー当時からコンスタントにアルバムを発表。1990年以降は、鈴木慶一、トーレ・ヨハンソンを迎えてのアルバム制作などで、新たなリスナーを獲得。2007年、プロデューサーに伊藤ゴローを迎え、アルバム数枚を発表。現在は高橋幸宏らと結成したバンドpupaとしても活動中。そのほか、ドキュメンタリー番組などのナレーションを担当するなど幅広く活動している。座右の銘は「いつも笑顔で」

(文/黒田隆憲@HEW
(写真:トレンドニュース)

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