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平和な日常が、ある日突然崩壊する......。想像を絶する出来事が主人公・鈴木英雄を襲う、まったく先の展開が読めない新感覚サバイバル・パニック映画『アイアムアヒーロー』(4月23日公開)。謎の感染症によりZQN(ゾキュン)と呼ばれる生命体に変貌してしまった人々が、生き残った人間に襲いかかるという状況の中、英雄は生き延びることができるのか? 花沢健吾の人気マンガの映画化に挑んだ『GANTZ』『図書館戦争』の佐藤信介監督に、作品にかけた思いを聞いた。

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4月23日公開『アイアムアヒーロー』佐藤信介監督
(写真:トレンドニュース)


アイアムアヒーロー 特集 本予告>>


■脚本で最も重視したのは登場人物のキャラクター造形

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4月23日公開『アイアムアヒーロー』
(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
(c)2009 花沢健吾/小学館


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4月23日公開『アイアムアヒーロー』
(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
(c)2009 花沢健吾/小学館



――映画化を引き受けられた時の状況を教えてください。

 3~4年前ですかね。いくつか企画をいただいた中にこれがあって、もともと原作は読んでいたので、ぜひやりたいと思いました。

――脚本の成立にも関わっていらっしゃいますか?

 もちろん参加しています。脚本家をどなたにしようか、というところからスタートして、こうしたジャンル映画の場合はそっち方面に詳しい方を普通は選ぶんですが、あえてそうではなく、『図書館戦争』やテレビドラマ『ラッキーセブン』で組んだ野木亜紀子さんにお願いすることにしました。人物造形の面白さに重点を置きたかったからです。1年以上かけてじっくりと脚本は仕上げていきました。

――原作はまだ連載中ですが、そうした題材を映画化することに難しさは?

『GANTZ』も映画化した時はまだ連載中で、原作が完結した今になって振り返ってみてもストーリーは半分もいっていないんですよね。あの時前半は原作通りで、後半はオリジナル要素を加える、でも必ず映画の中では完結させるんだ、という企画意図を軸にして作っていました。そんな経験もあって、原作をそのままトレースするんじゃなくて、映画としてのカタルシスを感じさせるようにしようと。コミックスの8巻ぐらいまでを映画化しているんですが、そこまでで一本の映画にすると決めた時点で、その中で完結するように脚本を練り上げました。

――原作の花沢健吾先生とはどんなお話を?

 あの方もこういうジャンル映画が大好きなんですよね。それで「自分が何度も見たくなるような映画を作って欲しい」と言われました。マンガと映画は似て非なるものだから、原作に忠実にすることばかり考えて狙いを外さないように、原作にとらわれず自由にやってもらいたいと最初のうちに言われましたので、萎縮せずに映画が撮れました。

――原作自体がネームに頼らない、ある意味映画的なマンガになっていますが、演出でそこは意識されましたか?

 そのあたりも『GANTZ』に似ていますよね。映画好きな方が描いているんだろうな、と思える作品です。でもそれをそのまま映画にすると縮小再生産になってしまうんですよ。映像は積み重ねなので、1カットがうまくいっても、その前後の数10カットがつながらないとどうにもならない。だから「このコマを再現しよう」とは考えませんでした。

――日本の大メジャーの東宝が、この題材をR15で映画化したのは驚きでした。

 この原作を読んだ時に、レーティングを下げるために表現をマイルドにするのは考えにくかったんです。やると決めたら精一杯やるしかない。自分たちの持っている技術の一番トンガったところで思いっきりやりたいということで、企画当初からR15で行こうと決めていました。

――後半のアウトレットモールのシーンは韓国でロケされていますね。

 どうしても日本では撮れない部分が出てきてしまうんです。でも、日本でも撮れるように内容を縮小しようとは考えなかった。なんとか撮れるところを探そう、という方向でいきました。最初は日本でもどこかにあるんじゃないかって探したんですけどね。結局、韓国の閉鎖されたモールを使ったんですが、日本のものに見えるように装飾しなければならないので、ものすごく手を加えています。

■できれば、何も知らない白紙の状態で映画を見てもらいたい

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4月23日公開『アイアムアヒーロー』
(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
(c)2009 花沢健吾/小学館


――主人公・英雄の日常から物語が始まって、彼の視線を通してどんどん話がマクロに広がっていく展開が新鮮でした。

 そこは絶対にそうしたいと思っていました。今は情報社会だし、実際にこうしてインタビューで話もしているので、「こういう映画です」と知られてしまう。でも内心では「何も知らない状態の人に突然この映画を見て欲しい」と思っているし、それを想定して撮っていたんです。「原作のことも何も知らない人が見て、どう思うか?」それしか考えていませんでした。「いったい何が起こるんだろう?」と英雄の行動を追いかけて見ていると、どんどん話がとんでもない方向に向かっていく。それがこの映画のユニークなところなので、今これを読んでいただいている皆さんも、一度何もかも忘れてから見てもらうのがこの映画を最大に楽しめるやり方だと思います。

――その主人公・英雄役に大泉洋さんを起用なさったのは?

 『ラッキーセブン』で探偵役を演じてもらって、すごくスマートでクレバー、カッコ良かったんです。その時に演技に対する姿勢、役のキャラを一緒に作っていく感じが素晴らしかったので、彼なら英雄をナチュラルにふくらませてくれるんじゃないか、と思いました。大泉さん本人は英雄と似ている部分はないんですが、こういうフィクション性が強いストーリーと、日常と地続きの部分の両面を信じさせられるキャラは彼しかいないのではないか、と。実際に台本を読んでいただいたら「ホントにできるんですか、これ?」と聞かれちゃいましたけど(笑)。

――女優陣もものすごい演技を見せています。

 有村架純さんは、2年前の撮影なので、まだ『ストロボ・エッジ』も『映画 ビリギャル』も撮る前。「いや、すごい人が来たな......」と思いましたね。今の彼女とほぼ同じテンションの演技を当時からやられていました。長澤まさみさんも振り切った演技をしてくれましたし。彼女たちも最初は「どこまでやるのかな?」という戸惑いがあったかもしれませんが、キャラクターが面白いし、絶対に他の映画では演じられない役なので、そこは信じて付いてきてもらうしかないと思っていました。大泉さんも合わせた3人それぞれの個性が絶妙のバランスなので、まだ撮影する前のキャスティングの段階で「最強だな、これ」と成功を確信したんです。

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4月23日公開『アイアムアヒーロー』
(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
(c)2009 花沢健吾/小学館


――この映画に登場するZQN(ゾキュン)を、他の同種の映画とはどう差別化したのですか?

 いつも映画を作る際に考えているのは「この映画の今までにない特徴は何だろうか?」ということなんです。同種の映画は世界にも日本にもたくさんありますよね。だからといって「この手の映画はこう撮ればいいんだよ」というやり方だけは絶対にしたくなかったんです。ZQNは喋(しゃべ)ったりもするし、生前の習慣を繰り返したりして、単に人を襲うだけでなく、どことなく憎めないやつやビジュアル的に「何だこれ?」という変なやつもいる。そんなユニークさというかユーモアに力点を置いて描きました。ともかく「今まで感じたことのない感覚」「見たことのない感じ」を出したかったんです。特殊効果に関しても、エキスパートの人の「こうすれば?」という意見に対し、「違うやり方はない?」と答えるといった具合に、ひとコマごとに「どうしよう?」と意見を出し合って作りました。

――この映画はアメリカのサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2016で観客賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭で観客賞と最優秀特殊効果賞、ポルト国際映画祭で観客賞とオリエンタルエキスプレス 特別賞、そしてブリュッセル国際ファンタスティック映画祭グランプリと、世界のファンタスティック映画祭で受賞しています。海外の反響はいかがでした?

 お客さんの反応がすごかったです。いわゆる見せ場のシーンだけでなく、日常の、「フフッ」と笑って欲しかった部分でも大爆笑でした。日本の文化の独自性を出そうとして、英雄が銃のライセンスにいつまでもこだわっている部分を残したのですが、見事にツボにはまって大ウケでしたから。「恐怖感だけでなく、ユーモアや人間の心情などすべての要素が入っていた」という評価を受けたのはうれしかったですね。日本では珍しいタイプの映画ですが、"一点突破"でやり抜いた甲斐(かい)がありました。

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4月23日公開『アイアムアヒーロー』
(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
(c)2009 花沢健吾/小学館


■『アイアムアヒーロー』は花沢健吾の人気マンガの映画化。35歳のマンガ家アシスタント鈴木英雄(大泉洋)の平凡な日常は、ある日突然終わりを告げる。謎の感染症によってZQN(ゾキュン)と呼ばれる生命体に変貌する人間が続出、次々と生存者を襲い始めたのだ。英雄は趣味で持っていた猟銃を抱えて決死の逃避行。その途中で女子高生・比呂美(有村架純)と出会い、アウトレットモールに立てこもった人々と合流するが...。監督は佐藤信介。共演は長澤まさみ、吉沢悠、岡田義徳、片瀬那奈、片桐仁、マキタスポーツ、塚地武雅、徳井優ほか。世界各国のファンタスティック映画祭で高い評価を受けている。4月23日から公開。


佐藤信介(さとう・しんすけ)
1970年9月16日、広島県出身。武蔵野美術大学卒業。PFFグランプリを経て監督デビュー。脚本家、ゲーム映像の監督としても活躍。主な監督作に『LOVE SONG』『修羅雪姫』(01)『COSMIC RESCUE』(03)『砂時計』(08)『GANTZ』『GANTZ PERFECT ANSWER』(11)『図書館戦争』(13)『万能鑑定士Q モナ・リザの瞳』(14)『図書館戦争 THE LAST MISSION』(15)などがある。テレビシリーズ『ラッキーセブン』(12)では構成・演出を手がけた。
座右の銘:「ラストマン・スタンディング」(最後に立っていたやつが勝ち。困難な状況があって、辞めたいとか倒れたいとか思っても、最後までやり抜くことが大切だから)

(取材・文/紀平照幸)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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