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 AV監督のカリスマ、カンパニー松尾がプロデュースすするライブ・ドキュメンタリー映画『モッシュピット』が公開された。本作は、新宿の老舗ライブハウス「ロフト」を拠点に活動するジャンク・ディスコバンドHave a Nice Day!(ハバナイ)と、彼らを中心とする音楽シーンに密着したもので、百数十名程度の集客力だったバンドが次第に知名度を上げていき、クラウドファウンディングによるアルバム・リリースパーティーを恵比寿「LIQUID ROOM」にて成功させるまでを、臨場感たっぷりに追いかけている。監督は、『遭難フリーター』で監督デビューし、数々のミュージックビデオを手がける岩淵弘樹が務めた。

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AV監督のカリスマ、カンパニー松尾が制作、映画『モッシュピット』


AV監督がライブドキュメントを制作? 実は、カンパニー松尾は音楽にも造詣が深く、ミュージシャン豊田道倫のライブを20年以上前から撮り続けており、最近ではバンド、どついたるねんの同名映画なども制作し大きな話題となった。「AVとライヴ撮影がライフワーク」と公言する松尾。彼にとって、その二つの間にどのような共通点があるのだろうか。今も精力的に撮り続けている「AV」の魅力とは?

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劇場公開中のライブ・ドキュメンタリー映画『モッシュピット』


映画「モッシュピット」プロローグWEB版>>


■ ハバナイ浅見北斗のことを何も知らなくても、「かっこいい!」って思うはず

ーー本作『モッシュピット』の撮影は、出演バンドHave a Nice Day!(ハバナイ)のMVを、監督の岩淵弘樹さんが制作したのがキッカケとなって始まったそうですね。

松尾:そうです。岩淵がハバナイのPVを撮って、それでうちのスタッフも彼らのライブに行き始めて。僕自身は、9月の「夏の魔物」(野外フェス)でやっと彼らのライブを見るんです。そのあと「blood on the mosh pit」のPVが完成して、ハバナイというバンドの持つ文学性や叙情性、それから内省的な部分、ある種の「あがいている感」が、僕は非常に好きになって。ハバナイとそれにまつわるシーンを映画館で上映することで、普段ハバナイの音楽を聴かないような人たちにも、何かしらアピールできるんじゃないかと思ったんです。ちょうどハバナイも、映画の中で恵比寿リキッドルームでのイベントを目指すんですけど、僕らはそれとはまた違う角度から彼らをサポートしたいなと。

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劇場公開中のライブ・ドキュメンタリー映画『モッシュピット』


ーー撮影を開始した時には、イベントを「恵比寿LIQUED ROOM」でやることは決まっていたのですね?

松尾:そうです。ドキュメンタリーの考え方としては、そこがゴールっていう風に設定できたので、構成は組みやすかった。もしリキッドがなくて、撮りながら(映画としての)ゴールを見つけていくとなったら、ちょっと難しかったかもしれないですね。

ーーゴールは決まっていたとはいえ、「夏の魔物」でのハバナイ飛び入り出演とか、メンバー同士の仲たがいがあったりとか、さまざまな予期せぬハプニングもあったと思うのですが。

松尾:僕としてはやっぱり、浅見さんがどんどんマジになっていくのが面白かったです。それまでの浅見さんって、「Twitterヤンキー」というか(笑)。結構、人に絡んでいったり、挑発したり、そういう武闘的な一面と、その反面シャイな部分もあって。両方が見え隠れしているような、自分でヒールを演じているタイプだったんですけど、おそらく、そこに安住してたらダメなんだろうなっていうことを彼自身も感じていて。

ーーそこから一歩踏み出すための恵比寿LIQUED ROOMたったのかもしれないですね。

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劇場公開中のライブ・ドキュメンタリー映画『モッシュピット』


松尾:そうそう。そこで彼はマジになったんだな、と。そういう心情の変化が垣間見られるのも、ドキュメンタリーとして非常に面白いと思います。あと、単純に浅見さんが踊っている姿がカッコイイんですよ。それは、彼の音楽性とか精神性とか関係なく、肉体性の部分であり、強烈なインパクトがあると思いました。例えば、ハバナイも浅見さんも知らない女性が彼のステップを見た時に、「かっこいい!」って思うはずだと。

ーーそういう目の付けどころは、やはり長年AVを撮ってきた経験で養われたものなのでしょうか。

松尾:それはどうだろうね(笑)。でも確かに、今回ポスターは彼がステップを踏んでいるところを、ポスター用に撮影していますね。音楽系のドキュメンタリー映画っていうと、ライブで演奏している写真を使うことが多いじゃないですか。でもそれだと弱いなと思ったので、彼をフィーチャーしました。

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ポスター写真はハバナイ浅見北斗がステップを踏む姿


■ 音楽であれAVであれ、「僕が撮りたいのは、人間性が出るもの」

ーーハバナイの音楽や、その周囲のシーンを知らない人たちに、「ドキュメンタリー」として面白く見せるための工夫は?

松尾:例えばライブ映像だったら、幕が開いて終演まで、ただただステージを映しているだけのような、ファンだけに向けて作った映像ってたくさんあると思うんですけど、僕は全然好きになれないんですよ。で、そういうフォーマットを、メジャーという立場で壊したのがAKB48だと僕は思っていて。彼女たちの映画って、ステージだけじゃなくてその舞台裏や、ミーティングの様子、もっといえばスキャンダル騒動まで、丸ごとパッケージにして上映するじゃないですか。それってドキュメンタリーの手法なんですよね。しかも、回を増すごとにどんどん過激になっていく(笑)。ファンだけに作っているんじゃなくて、ドキュメンタリー好きな映画ファンにも向けた作品というか。僕が作りたいのもまさにそういう作品です。

ーーなるほど。

松尾:浅見北斗がどういう人なのか、どういう葛藤や苦悩を抱えてライブに挑んでいるのか、そういう部分が撮れたらいいなと思った。もっといえば、『どついたるねん』や今回の『モッシュピット』のような作品だけでなく、AVを撮っているときも僕はドキュメンタリーのつもりなので、映像としてキッチリした作品を作りたいのではなく、その人自身の気持ちみたいなものが、ちゃんと刻まれているような作品が作りたいというか。

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劇場公開中のライブ・ドキュメンタリー映画『モッシュピット』


ーー他に、AVの撮影と音楽の撮影に共通性はありますか?

松尾:AVも音楽と一緒で、例えば巨大クレーンを入れて、カメラを何台も回すような、そんなハイクオリティな映像のAVを撮る気は、僕には更々ない。プロの男優と女優が、プロのカメラマンの前で、「ヨーイ、スタート!」で絡む......世にある99パーセントのAVはそうやって撮られているんだけど、でも実際のセックスって「ヨーイ、スタート!」なんて叫んで始めないでしょう?(笑)僕がハメ撮りするのも、ショウアップされたセックスが撮りたいワケじゃないからです。ハメ撮りしながら「ヨーイ、スタート!」とは言わないよね(笑)。

ーー確かにそうですね(笑)。

松尾:僕が撮りたいのは、よりリアルなもの。人間性が出るものなんです。ショウアップされたセックスで、「もっと本性を出せ、もっと感じるんだ!」って言ったって無理です。若い頃は、そういうAVの撮り方を横で見てて、「いやそれ、絶対おかしいだろ」ってずっと思っていた。それで独立してハマジムを立ち上げたんです。だから音楽も一緒で、より素に近いもの、よりリアルなもの、より人間性が見えるような撮り方をしていますね。脚付き(三脚)では撮っていないし、控室の様子も必ず収めるし。音楽であれAVであれ、「その人がどういう人なんだろう?」っていうのを撮ることがテーマです。

ーーそのために気をつけていることは?

松尾:ミュージシャンを撮る時も、あまりその人を尊敬しすぎたり、崇拝したりしないように気をつけていますね。もちろんリスペクトはしますが、一人の人間として撮るということです。

ーー俯瞰(ふかん)で撮るのではなく、正面から向き合って反応を引き出したり、横に寄り添って同じ目線にたってみたりっていうことですね。

松尾:そうです。だから僕は、相手の個人的な部分に、もっと深く入り込みたいのかもしれないですね。単に奇麗に撮りたいっていうのではなくて。ミュージシャンの豊田道倫を、もう何年も撮り続けているのも、彼の音楽性だけじゃなく、その奥にある詩的な部分というか......うまく言葉に言い表せない魅力があって。だからこそ追い続けているのかもしれない。映画にしても音楽にしても、人間にしても、ちょっとはみ出ていたり、ちょっとイビツだったり、「おかしいぞ?」っていう部分に強烈に惹(ひ)かれるんですよ。下手なバンドは昔から好きだしね(笑)。あ、あと、非日常を垣間見られるっていう部分でも、音楽とAVは似ているかもしれないです。

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AV監督のカリスマ、カンパニー松尾が制作、映画『モッシュピット』


ーー今後のハマジムの展望は?

松尾:これからも音楽を手がけるなど、やりたいことをやっていきたいと思っているんですが、あくまでもAVを軸にするっていうのは、この先も変わらないと思います。僕が今までやってきたジャンルの中で、やっぱり一番面白いのがAVだから。人間性を映しやすいし、単純にテレビと比べて制限が少ない。スポンサーとかいるワケじゃないし、コンプライアンスもないですしね。もちろん、自分自身の中にコンプライアンスはあるのだけど、それは僕らが自分たちで自由に決められることですし。

ーーなぜそんなにAVの撮影が好きなのですか?

松尾:女の人ってセックスをした後が一番キレイだと思うから。で、セックスまで撮らせてくれるのはAVしかないわけだから、だから撮りたくなるんですよ。こんな素晴らしいジャンル、他にないんじゃないかって僕はずっと思っていますね。

◆映画『モッシュピット』
浅見北斗を中心に結成され、新宿の老舗ライブハウス「ロフト」を拠点に活動するジャンク・ディスコバンドHave a Nice Day!(通称ハバナイ) と、彼らを中心とする東京アンダーグラウンド・シーンに密着したドキュメンタリー映画。次期町田市市長候補の関率いるバンド、NATURE DANGER GANGや、2人組アイドルユニット、おやすみホログラムらとともに主催するイベント「SCUM PARK」の熱狂や、音楽フェス「夏の魔物」で起きた"ハプニング"を経て、ハバナイのリリースパーティーを恵比寿LIQUID ROOMにて大成功を収めるまでを、臨場感あふれるカメラワークで追いかける。監督は、『遭難フリーター』で監督デビューし、数々のミュージックビデオを手がける岩淵弘樹。AV監督、カンパニー松尾の立ち上げた画像制作会社「ハマジム」で作られたことも話題となった。

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Have a Nice Day!


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NATURE DANGER GANG


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おやすみホログラム


◆ カンパニー松尾
1965年生6月29日 愛知県春日井市生まれ。高校卒業後、上京して映像専門学校へ入学。卒業後、TV番組の制作会社を経て、87年V&Rプランニングに入社し、翌年AV監督デビュー。91年全国の素人女性を巡るロードムービー的AV「私を女優にして下さい」を発売(シリーズ継続中)。AV界にハメ撮りのジャンルを確立させた第1人者。また、ポップな映像や音楽を取り入れるなど、アプローチの方法の面でも業界に与えた影響は大きい。2003年にHMJM(ハマジム)を設立。現在も、ハマジムの社員監督として活躍中。座右の銘は、「SEX, Curry and Rock&Roll」

(文/黒田隆憲@HEW)
(写真:トレンドニュース)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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