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 人気少女マンガ家・大島弓子の自伝的コミックエッセイをWOWOWがドラマ化し、2014年に放映されてギャラクシー賞、放送文化基金賞などに輝いた『グーグーだって猫である』の待望の続編がスタート! 今回は前シリーズの第3話と最終話の間、まだ猫のグーグーが元気だった頃のマンガ家・小島麻子(宮沢りえ)とその周囲の人々を描いている。このシリーズ全話の構成・監督をつとめ、さらにその以前には劇場版『グーグーだって猫である』も手がけた犬童一心監督に、作品にかける思いを聞いた。

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『グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』


グーグーだって猫である2 本編映像 第一話 冒頭21分13秒(6/30まで)>>



■少女マンガによって、知らない世界に出会えた

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『グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』犬童一心監督


――犬童監督はこのシリーズ以外にも何本も大島弓子作品の映像化をされていますが、大島作品との出会いと、監督が考えるその魅力について教えてください。

 ずっと少年マンガしか知らずに育ってきて、76~77年ごろに初めて少女マンガというものに出会ったんです。まったくの偶然で、たまたま弟が貸本屋から借りて来た萩尾望都さんの『トーマの心臓』が家にあった。何も知らずに読んでみて「これはすごい」と衝撃を受けて、しかもこれが何年も前に連載が終わった作品だったことにさらに驚きました。こんな面白いものを知らずに過ごしてきたのか、と。それまで読んでいた少年マンガは勝ち負けとか主人公の成長を描くものがほとんどで、それは高度経済成長期という時代には合っていたのかもしれないけれど、そうじゃない世界があるということを知ったんです。少年マンガが未来のために"今"を犠牲にしているとすれば、少女マンガでは"今"のことをちゃんと見ていくことで物語ができていくんだと。それから情報を集めては片っ端から読みまして、その中で大島弓子さんの作品に出会った時に、自分の中で漠然としていたものが見付かったような気がしました。

 それは「リアルとは何であるか?」ということ。子供が大人になるにつれて「世の中とはこういうものだ」と段々に見えてくるようになります。そこで、現実主義者と言われる人たちの多くは「今起きていることだけがリアルだ」という顔をするんです。でも、本当にそうだろうか? 人間の想像力、イマジネーションをそこに含めないと本当のリアルにはならないんじゃないか。「今起こっていること」だけじゃなくて「これから起こるかもしれないこと」「本当はどうだかわからないこと」も含めて考えることができるのが、本当のリアリストでは? 大島作品で出会ったそんな考えが、自分の映画作りに影響を与えているのは確かですね。それが最も活きているのが、今回のドラマだと思うんです。
 
――『グーグーだって猫である』の最初の映画版(2008)の企画は犬童監督が出されたのですか?

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毎週土曜日夜10時からWOWOWプライムで放送中


 いえ、あれは当時角川書店の会長だった角川歴彦さんから持ち込まれたものです。小泉今日子さんの楽屋にも角川さんが直々に訪ねて、「こんなマンガがあるんだけど、映画で主演してくれないか」と頼んだそうです(笑)。実は小泉さんは芸能界でも一二を争う大島マンガのファンで、僕も監督界きっての大島ファンですから、角川さんの勘はすごいですよね。

 しかし、お話をいただいた時には正直言って映画にするのは無理だと思いました。当然マンガは読んでいましたが、ちょうど違う作品の映画化を考えていたこともあって、『グーグー』を映画にしようとは考えてもみなかったんです。角川さんに「大丈夫、できる」と言われてお引き受けしましたが、なにしろ脚本が書けなかった......。何年も先延ばしにしてしまったし、やっている最中も手探り状態でしたので、今までやってきた作品の中で一番難しかった映画だと言ってもいいと思います。
完成した頃になって、ようやくやり方がわかったと言うか「こうしたらできるんじゃないか」というものが見えた気がしたので、今度は自分でドラマ版を企画したんです。2時間という一本の映画の枠ですべてを語ろうとするよりは、別のやり方がある。主役さえ見つかれば......と考えていたところで、宮沢りえさんが浮かびました。

――その宮沢さんはじめ、素晴らしいキャストがそろったことで前作が成功し、続編にもつながったと思います。キャスティングはどのように?

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 僕にとって特別な存在である市川準監督の『トニー滝谷』での宮沢りえさんが本当に素晴らしかったんですよ。この映像の中にあった彼女の魅力を自分でも見せたい、という思いが『グーグー』に結びついていきました。彼女は普通の人なら「この脚本ならこう演じる」というところで、必ずさらにもう一歩イマジネーションがふくらんだ演技をしてくるんです。それは本人が、「そうじゃないと面白くない」と考えているから。ある意味、演出家的な判断もしてくれるので、すごく楽です。経験を積んだ役者さんなので言われた通りにもできるけど、そこに創造的な演技も持ってきてくれて、しかも大概はそっちの方がすごくいい。麻子の歩き方や佇(たたず)まいは普段の宮沢りえとはまるで違うんですが、ちゃんと麻子を体に残して続編の現場に来てくれましたね。
 アシスタントのミナミ役の黒木華さんは山田洋次監督の『小さいおうち』の現場にお伺いした時にお会いして、話をした時に面白い人だと思ったので、その時の印象で選びました。『2』の第1話で宮沢さんと黒木さんの二人が酔っぱらって語りあう場面がありますが、ここは今の日本の演劇界で最も力のある二人が本気でやりあっている本当にすごいシーンになっています。演出しているのか行司をしているのかわからなくなったぐらいの迫力で(笑)、演出家にとって一番いいのは俳優に任せて「何もしないこと」だと感じました。

 田中泯さんは、僕の『メゾン・ド・ヒミコ』に出ていただいた時に、何となく「ホームレスの役が似合いそうだな」と思って、「次はホームレス役をお願いします」と言っていたんです。今回ちょうどいい役が原作にあったので、約10年ぶりに出ていただきました。ご本人もその話は覚えていてくれていましたよ。
 編集者の大森役の長塚圭史さんはプロデューサーの推薦です。『マイ・バック・ページ』での彼を見て、素晴らしい役者でぜひ出て欲しいとは思っていたのですが、今回の役はコメディー的な要素が強いので、違うんじゃないか? とも。しかしプロデューサーを信じて出てもらったら、想像以上に良かったですね。長塚さんはインテリジェンスがあるので、どんなにおかしなことをやってもハマるんですよ。
『2』では意図してコミカルな部分を増やしているので、長塚さんとともにその部分を代表しているのが『2』から登場する新アシスタント・飯田役の前田敦子さんです。面白く笑われる役なんですが、ずらりと並んだ強敵を前にしても一歩も引いていない女優ぶりを見せてくれます。

■撮影しながら、次の話のアイデアがどんどん浮かんでくる

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――『2』を作られたのは、『1』で語り残したことがあったからでしょうか?

 前シリーズを撮っている間に、どんどんアイデアが浮かんできたんです。麻子やその周囲のキャラクターが自分の中になじんでいって、完成されてくるにつれて、次はこの人たちでこういう話が見たいな、と思い付いてしまう。『2』の第1話のミナミが独立する話と2話の刑事(イッセー尾形)が麻子の家で張り込みをする話は、かなり前から決めていたものです。基本的には笑えるシチュエーションから発想してドラマを膨らませています。

――確かに、『2』はかなりコメディーに寄っている印象ですね。

 僕はこのドラマで葛飾柴又を吉祥寺に変えた『寅さん』をやりたかったんですよ。どちらも世の中から少しずれた人が主人公で、周囲をかき回していくお話です。でも、振り回される周囲の人は誰もそれをイヤだとは思っていないんです。なぜならばみんな、寅さんや麻子のことが好きだから。そういう枠組みでドラマを組み立てることによって楽しいドラマが作れるし、笑いながらも人間の機微を感じることができる、心に残るドラマができるんじゃないか、と考えました。

――もうひとりの主人公である猫について。

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 グーグーは『1』から引き続いてグミという猫が演じていますが、間違いなく最高の演者です。猫がこちらの指示通り動いてくれるということは通常あり得ないことなんですが、グミは宮沢さんの演技に対してリアクションもするんです! ラッシュを見ながら、「これ、CGなんじゃないの?」と思ってしまうぐらいちゃんと演技をしています。

 他の猫は残念ながら思い通りには動きません。しかし、こっちも慣れてきているので、そこは臨機応変にやりました。あらかじめコンテを決めてあっても、猫の動きに合わせて構成を作り直すんです。これが例えば『のぼうの城』での、周囲を大群衆に囲まれて舟の上で舞うシーンなんかの場合では、カットバックを多用したりもするので完全にコントロールした撮影が必要ですが、今回は猫と宮沢りえと吉祥寺があればなんとかなるドラマなので(笑)。実際、猫じゃなくて俳優であっても基本は同じなんですね。演技をしている部分はその人たちのやりたいことをやってもらいます。それが自分が考えていた以下だった場合は修正してもらいますが、自分が思っていたよりも面白いものになっていたのであれば、それに乗っかってどんどん変えていきます。これは、それが許されるドラマでもあるんです。『2』を撮りながらも次々とアイデアが浮かんできていますので、できたら続きもまたやりたいですね。

出演者インタビューも公開!「グーグーだって猫である2」ミニガイド(6/30まで)>>


グーグーだって猫である2 90秒映像(6/30まで)>>


猫好き必見! 猫の魅力満載の60秒映像(6/30まで)>>


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■『グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』は大島弓子のコミックエッセイを原作にしたドラマ・シリーズの第2弾。前シリーズの最終回、マンガ家・小島麻子(宮沢りえ)が15年8カ月をともに過ごした猫のグーグーは亡くなってしまったが、今シリーズでは時間をさかのぼり、まだグーグーが元気だった時代の出来事が描かれる。アシスタントのミナミ(黒木華)の独立話と新アシスタント・飯田(前田敦子)の登場、犯人を追う刑事(イッセー尾形)が麻子の家で張り込みをする話、麻子と大学の同級生(西田尚美)の再会、担当編集者・大森(長塚圭史)の結婚エピソードが吉祥寺の井の頭公園周辺を舞台に描かれ、そして最終回では麻子はグーグーを彼女に託して姿を消したホームレス(田中泯)を探して富士山へ......。全5話のシリーズ構成と監督は前作に続き犬童一心が手がけた。6月11日からWOWOW連続ドラマWとして毎週土曜日夜10時からWOWOWプライムで放送中(翌週土曜の午前10時から再放送も)。

犬童一心(いぬどう・いっしん)
1960年6月24日東京都出身。高校時代から自主製作映画を作り、大学卒業後はCMディレクターとして数多くのCMを手がけた。94年、『二人が喋ってる。』で長編劇映画を初監督、2003年の『ジョゼと虎と魚たち』で注目された。近年のおもな監督作に『タッチ』『メゾン・ド・ヒミコ』(05)『黄色い涙』(06)『眉山』(07)『ゼロの焦点』(09)『のぼうの城』(12・樋口真嗣との共同監督)『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(14)がある。大島弓子原作の映像化は『赤すいか黄すいか』(82、16mm)『金髪の草原』(00)劇場版『グーグーだって猫である』(08)テレビ版『グーグーだって猫である』(14)に続いて本作が5本目となる。
座右の銘:「急いで2回やるよりも、ゆっくりと1回やった方がいい」(撮影は時間に追われることが多いが、周囲があせっても自分はあわてない。集中してじっくりやった方が結果的にいいものができるから)

(取材・文/紀平照幸)

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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