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 今年で放送開始50周年を迎える『ウルトラマン』。巨大ヒーローと怪獣が戦う特撮テレビシリーズの先駆けとなったこの作品の誕生には、どのような苦労が隠されていたのか。シリーズ50周年を祝う特別番組『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』が放映される(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)のを機に、『ウルトラマン』最初の作品を監督した飯島敏宏氏に製作秘話を語ってもらった。

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飯島敏宏氏 =『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


3時間生放送『祝ウルトラマン50』のみどころ (7月9日 午後8時〜午後11時生放送)>>


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■『ウルトラマン』制作 記念すべきファーストカットは

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『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


――第1話『ウルトラ作戦第1号』よりも先に、飯島監督演出の第2話『侵略者を撃て』が撮影されていたのだそうですね?

 まだ第1話の脚本ができていなかったんですよ(笑)。だから基本的な設定には触れずに話を作っています。赤い玉や青い玉(ウルトラマンとベムラーはこの形状で宇宙から飛来する)のことも知らないから、そのまま空を飛ばしちゃった(笑)。第2話と第3話『科特隊出撃せよ』、第5話『ミロガンダの秘密』の3本は同時進行で撮影していました。

――記念すべきファースト・カットは何のシーンだったのですか?

 確か、科特隊基地の中だったと思います。しかし、この時にイデ隊員を演じていた俳優が降板してしまったので撮り直すことになり、撮影したフィルムは全部捨ててしまいました。

――監督はその前作の『ウルトラQ』にも参加されていますが、『ウルトラマン』では別のご苦労があったと聞きます。

 『ウルトラQ』はもともと円谷英二さん(※「特撮の神様」と呼ばれる円谷プロダクション創業者)が購入した高価なオプチカル・プリンター(光学合成機)を活用するために始まった企画だったので、製作期間や製作費に余裕があったし、合成シーンについても制限がなかったんです。しかしその人気を受けて後番組として『ウルトラマン』が作られることになると、とにかく時間がない。予算にも限りがあって、合成シーンは1話に3カットなんていう制限がかけられたりもしました。だからウルトラマンと怪獣が戦うシーンはミニチュアを使って撮れますが、人間とのからみがほとんどできなかったんです。実は僕はもともと『ウルトラマン』に参加する予定はなかったのですが、「こんな状況でなんとかできるやつはおまえしかいない」とTBSで同期だった円谷一(円谷英二の長男、ウルトラマンシリーズの監督)に頼まれて行ったんです。とにかく毎日がスケジュールとの戦いでしたね。

――前例のないシリーズということで、いろいろ大変だったのですね......。

 俳優たちも新人ばかりでしたから、特にハヤタ役の黒部進くんには走り方から教えました。僕の世代は軍事教練を受けていますからね。それで科特隊員らしい動きができるようになった。あと第2話は脚本も僕が書いているのですが、そこでは隊員たちの個性を際立たせるように言われまして、一からそれぞれのキャラクターを作り上げていったんです。だから円谷一が第1話を撮る時にはすでにキャラができている上に演技もうまくなっていて楽だったんじゃないかな(笑)。もっとも当時は他の監督が作った話なんか見ている暇がなかったので、監督によってキャラが違ったりということもよくありました。

――俳優もそうですが、当時はスタッフも皆さん若い方ばかりだったのですね。

 『ウルトラQ』は円谷英二さんが中心になっていましたから、東宝で『ゴジラ』なんかを作ってきた本編のスタッフがいて映画と同じ35mmのフィルムで撮ったりしたわけです。それに比べると『ウルトラマン』はテレビ用の16mmだし、予算もかけられないので、特撮も二十代半ばぐらいの若い人が中心。しかしその分勢いがあって、冒険や実験ができたと思います。「何でもやってみよう」と現場で工夫していたんです。

■「スペシウム光線」あの有名なポーズは現場のひらめきで生まれた!

――ウルトラマンと言えば誰もが知っているスペシウム光線のポーズもそうやって現場で生まれたとか?

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『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


 初期のウルトラマンのマスクは被ると前がほとんど見えないので、怪獣と格闘させるのが難しいんです。最初は決め技にキックを使おうという案もあったのですが、視界が悪くてとても無理。そこで光線を使うことになりました。しかし科特隊のスーパーガンのように指先から細いビームを出すのでは迫力がない。点ではなくて面で考えてくれ、ということで右腕を立てて指先から肘までの部分から光線を出すことに。ところが、今度はこれじゃ安定感がないわけですよ。光線は後から書き加えるので、右腕がグラグラ揺れていたのではどうにも合成上の具合が悪い。それで左腕をクロスさせて支えることになりました。撮影現場でほんの僅かな時間の間に思い付いたことで、まさか50年にも渡ってトレードマークになるとは思いもしませんでしたよ。そもそも「スペシウム」という言葉からして僕の造語ですしね(笑)。

■バルタン星人は人類の未来に警鐘を鳴らすキャラクター

――そのスペシウム光線で倒されるバルタン星人(第2話『侵略者を撃て』)は全シリーズでも一、二を争う人気キャラクターです。これも飯島監督が作られたキャラですよね?

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『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


 造形に関しては最初から『ウルトラQ』に出て来たセミ人間(『ガラモンの逆襲』の回に登場)のマスクやスーツを再使用ということが決まっていました。当時、外来種であるアメリカザリガニが増えて話題になっていたので、そのイメージも足されています。両手のハサミからはいろいろな武器が出てくる予定だったのですが、実現できませんでしたね......。再登場した際(第16話『科特隊宇宙へ』)にかなりスリムなデザインに変わっているのは、もともとのコンセプトに近いものに戻したからです。

 タイトルこそ『侵略者を撃て』ですが、実はバルタン星人は侵略者ではありません。故郷のバルタン星を一部の科学者の危険な実験の失敗で破壊されてしまった難民と言える存在。これはわれわれ地球人も一歩道を誤ればこうした状況になってしまうぞ、という反面教師的なものなのです。物語の中でも、最初は話し合いで共存の道を探ったりしますが、結局は互いの行き違いから対立することになってしまいますしね。別の選択はなかったのか? ということが見ていた子供たちの記憶に残ってくれれば、という思いもありました。

――2000年代にもウルトラマンシリーズを手がけられ、バルタン星人を再登場させていますが......?

 シリーズが続く中で、「初心に帰ろう」という声が出てくると、製作者に僕が呼び戻されるみたいです(笑)。ただウルトラマンの名前は変わっても、精神は初代『ウルトラマン』のつもりで撮っています。まあ、バルタン星人とは長い付き合いなので、だんだん悪役にしたくなくなっているんですけどね......(笑)。

――CG主体の最近の現場はどう思われますか?

 最近の監督さんは偉いな、と思いますね(笑)。ひとつのシーンを変更するだけでも、絵コンテから作り直し、本編撮影もCG作業もやり直さなければならないですから。僕はやはりその場で作って行く"口立て"というやり方のほうが好きですね。それに、打ち合わせ通り撮影が進むのって、本当言うと退屈なんです(笑)。作って行く過程の面白さというのがあるわけで。「コンペイトウを作るつもりがアメ玉になってしまう」という言い方をしますが、いろんな人が入ると尖(と)がっている作品も丸くなってしまうので、自分でパッと決めてサッと撮るのが一番だと思っています。

■誰の心にも、それぞれの「光の国」がある

――50年たった今でも世代を超えて子供たちに愛される理由は何だと思われますか?

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飯島敏宏氏 =『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


 作っている時には予算を守ることと期限に間に合わせることしか考えていなかったので、作品の出来とか評判は考える余裕がなかったんです。たまたま札幌公会堂で上映会があるのに参加して1話と2話を16mmで映したんですが、その時初めて『ウルトラマン』を見た子供たちの熱狂を目の当たりにして、「ああ、一番バッターの仕事は果たせたな......」と感じたのを覚えています。最近でも近所の駐車場で『科特隊宇宙へ』の上映会があって、今の子供にはチャチな特撮だと馬鹿にされるんじゃないかと思っていたんですが、こっちでもちゃんと夢中で見てくれた。先祖から受け継がれている何かがDNAの中にあって、それが子供たちの共感を呼ぶんじゃないでしょうかね。昔、金城哲夫(沖縄出身の脚本家、初期ウルトラマンシリーズの設定や企画を担当した)と話した時に彼が「自分の中に少年が一人降りてくるんだ」と言っていたのがつまり、そういうことだったのでは?

――ウルトラマンの基本設定は金城さんがお考えになったんですよね。

 彼はウルトラマンの故郷である「光の国」とはニライカナイ(沖縄に伝わる理想郷のこと)だ、と言っていました。あくまでも平和の使者であり、子供たちに希望を与える者がウルトラマンだったんです。だからウルトラマンには他のヒーローものを追いかけることなく唯一無二のものとして歩んでいってほしいと思っています。ウルトラマンはただの戦士ではありませんから、ウルトラマン同士が戦うような話は見たくないんです。

――最後にウルトラマンシリーズのファンに向けてひとこと。

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飯島敏宏氏 =『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


 このシリーズに心構えはいらないので、素直に楽しんでくれればいいと思います。ウルトラマンを撮るという機会を与えてもらったことには感謝していますね。自分の中の少年を出すことができましたから。皆さんにも自分の中にあるそれぞれの「光の国」を大切にしていただきたいですね。


「祝ウルトラマン50 乱入LIVE!怪獣大感謝祭」は3時間生放送。テレビシリーズに登場した歴代ウルトラマンがスタジオに集結し、スタジオ生出演する。そのほか歴代ウルトラマン俳優たちが続々と登場し、VTRとスタジオトークで盛り上がる深イイ話が展開されるなど、盛りだくさんの内容となっている。

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飯島敏宏(いいじま・としひろ)
 1932年9月3日、東京都出身。もともとは脚本家志望で、TBSテレビに入社して『月曜日の男』などを演出。国際放映に出向して渥美清主演の『泣いてたまるか』も手がけた。円谷プロダクションにも出向し『ウルトラQ』に参加。『ウルトラマン』の立ち上げに関わり、『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』も演出。TBS退社後は木下プロダクション(現ドリマックス・テレビジョン)の社長、会長を歴任。『それぞれの秋』『金曜日の妻たちへ』などの人気シリーズを製作している。千束北男のペンネームで脚本も執筆。特撮関係では劇場映画『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』(72)『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』(01)を監督・脚本、テレビ『ウルトラマンマックス』で再びウルトラマンとバルタン星人を描いた。
座右の銘:「生涯大衆作家」(芸術的姿勢で作品を撮ったことはなく、常に娯楽作品を作ることだけ考えてきたから)

(取材・文/紀平照幸)
(写真:トレンドニュース)

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