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 学生時代の自主制作映画で自らウルトラマン役を演じたこともある庵野秀明氏。『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』の館長を務め、大のウルトラマン・ファンとしても知られる庵野氏が7月9日にNHK BSプレミアムで放映される『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』のゲストとして登場。今年で放送開始50周年を迎える『ウルトラマン』。この機会にウルトラマンの思い出とその魅力について語ってもらった。

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庵野秀明氏 =『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


3時間生放送『祝ウルトラマン50』のみどころ (7月9日 午後8時~午後11時生放送)>>


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■ヒーローに憧れ、ウルトラマンになりたかった少年時代

――ウルトラマンとの出会いはいつ頃だったのですか?

 小学校1年生の時で、まだ家のテレビが白黒だった時代です。日本中の子供たちがそうだったように、衝撃を受けました。それまでに見たことがないものでしたし、あらゆるものが新しかったですから。これが毎週見られるんだ、という幸せを感じていました。

――どの部分に魅力を感じたのですか?

 怪獣そのものはそこまで好きだったわけではなく、『ウルトラQ』は幼すぎて怖かった記憶しかないんです。やはりウルトラマンという、銀色に輝く巨大な宇宙人の存在が魅力でしたね。巨大で、強くて、しかも寡黙。そんなヒーローに憧れたんです。近所の友人と怪獣ごっこをやっていても、ウルトラマン役しかやりたくないような子供でした。

――ウルトラマンのデザインがお好きだったのですか?

 シンプルで無駄がないですよね。体表に描かれた赤い線は人の筋肉に沿っているように見えますし、着ぐるみの必要上存在する背中のラインも脊髄を象徴しているかのように見えます。また、カラータイマーが胸の中心にあることで完成したデザインになっていると思うんです。デザイナーの成田亨さんがカラータイマーを付けることを嫌がったのも理解できますが、ビジュアルで危機感を表現するという効果もあげています。いろんな事情でできているものがすべてプラスに働いているという点でも奇跡のような存在だと思うんです。

――科特隊(科学特捜隊)についてはどうお感じになりましたか?

 怪獣がいてあたりまえの世界があって、怪獣を退治する専門家がいるという設定がすごいと思いました。大人の世界を垣間見させてくれるような感覚が好きだったんです。難しい専門用語も普通に使っていましたし、子供におもねっていない作り方をしていたからこそ、今になっても残る作品になっているのではないでしょうか。

――ウルトラマンの世界観については。

 ウルトラマンはハヤタ隊員と一体化することによって、ヒトと宇宙人のはざまの存在になったと思っています。そもそも単独で恒星間を往来できるような異星人が、不注意の事故で巻き添えにしてしまった地球人、しかもたった一人を救うために彼と合体してしまうんですよ。さらに最後に地球を去らなければならなくなった時には、自分が死ぬことも厭わずにハヤタに命を与えようとまでする。命に関する感覚がわれわれとはまったく違うんですよね。
ベーターカプセルによってハヤタから変身するシーンも"神が宿る" 儀式のようなイメージが漂っています。この瞬間に感覚が飛んでいくというか、現実からの跳躍感があるんです。ここが実写の特撮作品とアニメとの大きな違いで、特撮では現実の中に非現実を入れ込むことができますが、アニメは絵に描かれた時点でそもそも非現実ですからね。そんな感覚を抱かせる世界観を、当時の技術で作り上げていたのですからすごいと思います。

■エヴァンゲリオンにウルトラマンからの影響はあるのか?

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庵野秀明氏 =『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』(NHK BSプレミアム、7月9日 午後8時~午後11時生放送)


――大学生時代になってもウルトラマンへの情熱は消えなかったのですよね。

 普通は「大学生にもなって......」となるところですが、"ウルトラマンを見て育った人たち"の中に、"ウルトラマンを捨てなかった者たち"が少数ながらもいて、当時の世代はテレビしか共通体験がありませんでしたので、共通言語としてウルトラマンが存在していたわけです。そんな中で子供向けでない研究本が出たりして、次第に市民権を得るようになりました。当時、大学生になってもウルトラマンの話ができる時代が来たんです。ちょうどアニメでは『宇宙戦艦ヤマト』が同じような状況ですね。『ウルトラマン』が悪い意味の子供向けに作られていなかったため、大人の目で見ても面白い作品だったのが要因だと思います。当時作っていた人たちの"大人の本気"が作品を支えていたからなんでしょうね。

――その頃の自主制作映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(1983年製作の8ミリフィルム映画)では監督だけでなく変身後のウルトラマンを素顔で演じていらっしゃいますが......。

 大学生の自主制作とはいえ、SF大会の広報活動が目的で、インパクトが必要だったんです。なので、自主制作で一度作っていたウルトラマンをもう一度きちんとした作品でやってみようと。ウルトラマンが出現するまでは徹底して大真面目に真剣にやっておいて、ラストがこれかよ! というのがあの作品のインパクトというかテーマでした。だから前半は本家よりもハードなくらいの展開にしています。

――もし今後ウルトラマンを自分が撮るとしたら、こんな風に......というお考えはありますか?

 いつかは自分でもウルトラマンを撮ってみたいという思いはありますが、難しいです。『ウルトラマン』という作品があまりにも完成されていて、それと並べられる作品じゃないと作る意味がないので、僕の中でのハードルが高すぎるんです。学生の時の勢いなら作れるでしょうけど(笑)、新しい何かを見つけられるといいんですが、なかなか手が出せないですね。

――ご自身の作品に『ウルトラマン』を引用したりということはありますか?『エヴァンゲリオン』へのウルトラマンからの影響を指摘する意見もありますが......。

 意識して引用したことはないんですよ。しかし『ウルトラマン』がフォーマットとして完璧なので、面白いものを作ろうとすると、意識するしないに関わらずあれになってしまうというのはありますね。アニメーターに発注する時に「ロボットじゃなく、人みたいな動きをする巨大なもの」と言っても、「それはどういうものなんですか?」と聞かれてしまうわけで、共通言語として「ウルトラマンみたいなもの」という言い方をしたことはあります。『エヴァ』の第壱話を見た友人から「あれってウルトラマンがロボットの格好をしているものだよな?」と言われるまで、自分自身でも気が付いていなかったんです。

――そんな庵野氏の創作に対する基本姿勢は何なのでしょうか?

"面白いものを作りたい"ということしかないですね。で、その"面白いもの"とは何か? ということになると、もうこれは子供の頃にたまたま『ウルトラマン』を見たことで決められてしまったとしか言えないです。それだけ子供の頃に受けたインパクトは強烈で、自分で消したりいじったりはできません。「ウルトラマンみたいなものを作りたい」というのが自分の創作に対するモチベーションの何割かを占めているのは確かですし、たとえば「ウルトラマンじゃないものを作りたい」と考えた場合でも、そこには"ウルトラマン"という基準が存在するわけですからね。もし仮に『ウルトラマン』と出会わずに来たら、また別の"面白いもの"を作ろうとしていたと思いますが......。


「祝ウルトラマン50 乱入LIVE!怪獣大感謝祭」は3時間生放送。テレビシリーズに登場した歴代ウルトラマンがスタジオに集結し、スタジオ生出演する。そのほか歴代ウルトラマン俳優たちが続々と登場し、VTRとスタジオトークで盛り上がる深イイ話が展開されるなど、盛りだくさんの内容となっている。

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庵野秀明(あんの・ひであき)
 1960年5月22日、山口県宇部市出身。大阪芸術大学在学中に自主制作映画グループ「DAICON FILM」に参加。『風の谷のナウシカ』などでアニメーターをつとめ、88年のOVA『トップをねらえ!』でアニメ初監督。テレビでは『ふしぎの海のナディア』(90)『新世紀エヴァンゲリオン』(95)『彼氏彼女の事情』(98)を監督。劇場映画にはアニメ作品に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air /まごころを、君に』(97)『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(07)『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09)『ヱヴァンゲリオヲン新劇場版:Q』(12)、実写作品に『ラブ&ポップ』(98)『式日』(00)『キューティーハニー』(02)がある。宮崎駿監督のアニメ『風立ちぬ』(13)では主人公の声を演じた。脚本・総監督をつとめる新作『シン・ゴジラ』(7月29日(金)全国東宝系公開)が待機中。

(取材・文/紀平照幸)
(写真:トレンドニュース)

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