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東日本大震災の復興支援、および震災の記憶を未来に残していくことを目的に、2013年にスタートした自転車イベント「ツール・ド・東北」が今年も9月17日(土)・18日(日)の2日間にわたって開催される。本イベントは、順位やタイムを競うレースではなく、楽しく走ることを目的としたファンライド形式。参加者からは、「沿道からの声援に、逆に自分が元気をもらった」との声が、地元の人たちからは、「震災後に応援してくれた人たちを、今度は私たちが応援したい」との声が挙がるなど、「応援する側/される側」の境界線がいつの間にか消えていくような、そんなすてきな内容だ。

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藤巻亮太『ツール・ド・東北』テーマソング「LIFE」


今回そんな「ツール・ド・東北」のテーマソングを歌うのは、藤巻亮太。早くから復興支援に参加してきた彼に、「ツール・ド・東北」への思いや楽曲を作る上でのエピソードなど、たっぷり語ってもらった。

藤巻亮太が歌う、『ツール・ド・東北』のテーマソング「LIFE」>>


テーマソング『LIFE』特設ページ>>

2016年9月17日、18日開催 自転車イベン「ツール・ド・東北 2016」大会サイト>>

■ 「応援する側/される側」の境界線が消え、お互いに支えあっていこう

ーー今回、「ツール・ド・東北」のテーマソングを書き下ろすことになった経緯は?

藤巻: 実は、東日本大震災が起こる前日と前々日に、横浜アリーナでレミオロメンのライブをやっていたんです。その場所が、震災の翌日には避難所になって。テレビでその光景を目の当たりにして、とてもショックを受けました。また、同じ月にはもう1本、神戸でライブが決まっていたんですね。当時は自主規制の風潮もあって、ライブをやるかどうかものすごく考えました。結果的に、「何もしないでいるのではなく、とにかくアクションを起こそう」と、「やる」という決断を下したことが自分の中ではとても大きかったんですよね。

ーー翌月には「炊き出し」もおこなっていますね。

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藤巻亮太『ツール・ド・東北』テーマソング「LIFE」


藤巻:はい。ap bank主宰の小林武史さんを中心に、炊き出しをすることになり、僕も4月7日に石巻へ行きました。その日は最大余震が起きた日で、専修大学のテント村で寝ていたら、夜中に遠くの方から凄まじい地鳴りが聞こえてきて。その数秒後に、今まで経験したことのない揺れを体験しました。みんなで校舎の屋上に避難したのですが、海の匂いが漂ってくるんですよ。それはもう、本当に怖かった。

ーーまだとても、「音楽を届ける」という状態ではなかったわけですね。

藤巻:ええ。でも、その日の昼に、女川の避難所にカレーや物資を届けに行ったら、僕に気づいてくださった人から、「ぜひ、歌ってください」って言われたんです。その避難所の玄関で「3月9日」を歌いました。これは、自分の中で、ものすごく大きな出来事でした。こんなことになって、再び音楽が必要とされるときがいつ訪れるのか分からないけど、自分にできることをしていこうと決心しました。そのあとap bankの「歌の炊き出し」という被災地に歌を届ける活動に参加して、2012年までは月一回のペースで被災地を訪れていました。

ーーそれが「ツール・ド・東北」へとつながっていった。

藤巻:そうなんです。最近は、なかなか行ける機会がなくて......。でもずっと気になっていたので、今回のお話をいただき二つ返事でお引き受けしました。

ーー「ツール・ド・東北」の理念についてはどんなふうに思いますか?

藤巻:今年、小林武史さん、Mr.Children桜井さんを中心に石巻で開催された「Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016」(7/29~7/31)に、僕も参加させていただいたんですが、そのときに感じたことと同様で、「ツール・ド・東北」もヤフーの宮坂社長を中心に、被災地に住んでいる方と、それ以外の地域に住んでいる人たちを、「つなげる場」を作っているのが本当に素晴らしいですよね。さらにそれを、継続させているということが大事なのだと思っています。

ーー「応援していたら、(いつのまにか)応援されていた」というのが「ツール・ド・東北」の普遍テーマであり、藤巻さんが歌う楽曲「LIFE」の歌詞にも取り入れられていますね。

藤巻:そうですね。「応援する側/される側」の境界線を消していって、お互いに支えあっていこうよっていう。そういう図式が、ファンライドを通じて生まれている。実は東北の沿岸地域って、アップダウンも激しくてコースとしては結構大変らしいんですけど(笑)、ランナーの方々が実際にそこを走り、目で見て感じたことを、日常生活にフィードバックしながら生活する。つまり一人ひとりが「媒体」となっていくわけですよね。そうやって、いろんなところで垣根や境界線を消していくとき、音楽にも何か役割があるんじゃないかなと。そういう思いは、楽曲を作る上で大きなヒントになりました。

■ 「今日はいい日だな」っていうのを、毎日繰り返していけばいい

ーー曲作りの上で、他に意識したことは?

藤巻:自転車を颯爽(さっそう)とこいでいるような、元気な曲にしたかったですね。聞いていて心地よく前に進んでけるような、そういうテンポ感は大切に。あと、曲を書いているときに「世界を変えよう」という言葉が出てきて、それがメロディととても相性が良かったんです。ただ、いきなりそんなこと言われても、「ムリだよ」ってなるじゃないですか。だから、そのすぐあとに「驚くほど小さく」と歌ったんです。ちょっとずつなら、世界を変えていけるんじゃないか。復興もそうですけど、ちょっとずつでも変わっていければいいんじゃないかって。

ーーPVの撮影は石巻でおこなったそうですね。

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藤巻亮太『ツール・ド・東北』テーマソング「LIFE」


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藤巻亮太『ツール・ド・東北』テーマソング「LIFE」



藤巻:人生初のドローン撮影で、いろいろな性能に驚きました。ホバリングしたり、上空100メートルくらい一瞬で飛び上がったり。ちょっと興奮しましたねえ(笑)。

ーーところで、歌詞の中には「大好きな映画」が「勇気をくれる」とあります。これまで藤巻さんが、勇気をもらった映画といえば?

藤巻:中学生の頃に見た『いまを生きる』は、僕の原点になっている気がします。もう亡くなってしまった俳優ロビン・ウィリアムズが主演で、「自由」とは何かについてすごく考えさせられました。先ほどの「境界線を消していく」という話にも通じるんですが、「こうあるべき」とか「こう生きるべき」っていう枠組みの中で、人は生きていかなければならないわけでは決してなくて。その枠組みを消していく「自由」とか、「勇気」とか、「責任」とか、そういうことを深く考えるキッカケになったのがこの映画だったんです。境界線を消して自由に生きることというのは、すごく勇気がいるし責任が伴うことなのだけど、何かそこに魂の「救い」や「解放」があるんじゃないか? って。

ーー改めて、音楽にできることは何だと思いますか?

藤巻:音楽はおなかをいっぱいにしてくれるわけでもないし、雨風をしのいでくれるわけでもない。衣食住という、一番大切なことに対して何もできないんですけど、最初に話したように、人と人とを結ぶ場を作るということなら、音楽にできることもあるんじゃないかと思います。人って、日々の中でいろいろ縛られていくわけじゃないですか。社会のルールとかしがらみとか。もちろん、それが一切なくなってしまったら社会が成り立たないのもわかるのですが、そのせいで窮屈な気持ちにもなってしまう。でも、そういう線をつかの間消してくれるのも、音楽だと思う。「あー、すっきりした」だけでもいいと思うんです。そうやって心を解放することが大切なんじゃないかと思いますね。

ーー最後に、座右の銘をお聞かせください。

藤巻:ソロのセカンドアルバムにも付けた、「日日是好日」という禅の言葉です。レミオロメンを休止して、ソロになったからこそ生まれた「悩み」や「苦しみ」が多かったんですね。レミオロメンのときの自分と比べて「違うことしなきゃいけないんじゃないか?」と、過去に苦しんでいる自分。それと、「明日から本当に一人でやっていけるのかな」という、未来が不安な自分。つまり、もう届かない過去と、まだ来てもない未来に対して、今日の自分がものすごくエネルギーを使っている状態だったわけです。それって勿体(もったい)ないですよね。そのエネルギーを、今日楽しむことに使ったらいいじゃないか、今日、自分らしくいられたらいいじゃないか、というのが「日日是好日」という言葉の意味だと思っています。「今日はいい日だな」っていうのを、毎日繰り返していけばいい。そう思ったら、すごく救われたし、曲作りも楽になったんですよね。この言葉と出会って、自分を苦しめていた「線」を消すことができました。

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藤巻亮太、3月23日にリリースした2ndフルアルバム「日日是好日」


◆ 藤巻亮太
2000年12月に前田啓介(B)、神宮司治(Dr)とともにレミオロメンを結成し、ギター&ボーカルを担当。「粉雪」をはじめ数々のヒット曲を発表する。2012年2月にレミオロメンの活動休止を発表し、同月に初のソロシングル「光をあつめて」をリリース。10月には1stソロアルバム「オオカミ青年」を発表した。以降もソロ活動を活発に展開し、2016年3月に2作目となるオリジナルフルアルバム「日日是好日」を発表。

(取材・文/黒田隆憲)

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