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「1日3割(ヒサン)」「10日で5割(トゴ)」という非合法な金利で金を貸し付けるアウトローの金融屋「カウカウファイナンス」の社長・ウシジマ(山田孝之)を主人公に、金と欲望に翻弄(ほんろう)される人々の転落人生をハードでコミカルなタッチで描く社会派エンターテインメント「闇金ウシジマくん」の劇場映画が2作連続で公開される。
9月22日より公開中の『Part3』は、原作の「フリーエージェントくん編」×「中年会社員くん編」を映像化。かたや高額アフィリエイトによって秒速で何億も稼ぎ出す男に群がるフリーター、かたや組織にしがみつく大企業のサラリーマンたちが、欲望にからめとられ、それぞれに堕ち行くさまをダイナミックに描き出す。

そんな劇場版『闇金ウシジマくん』を原作者・真鍋昌平はどう見るのか。本人に聞いてみた。

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公開中の映画「闇金ウシジマくん Part3」 原作者・真鍋昌平氏


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――今回の劇場版は、『Part3』(9月22日(木・祝)公開)と『ファイナル』(10月22日(土)公開)の2本連続で上映されることになりましたが、それを聞いた時はいかがでしたか?

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公開中の映画「闇金ウシジマくん Part3」 原作者・真鍋昌平氏


真鍋「間が空いてないのでお客さんは入るのかなという心配が、正直ありましたね。ただ、最近よくある前後編ものではなく、一本一本が独立した作品となりましたし、しかも、どちらも完成度が高く、良かったです」

――映像化されたことでの反応は?

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公開中の映画「闇金ウシジマくん Part3」


真鍋「ネットなんかで、うまくいっていない人のことを"ウシジマくんっぽい"と呼んでいるのを見つけると、世間に浸透しているんだなと感じましたね」

――2004年に連載が開始されてから12年。連載当初と比べても、扱うテーマなどが変わってきたりしたのではないでしょうか?

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公開中の映画「闇金ウシジマくん Part3」


真鍋「そうですね。連載を開始した当時はまだ、格差社会というようなことをそれほど言われていた時期ではなくて。ぼんやりと貧困層というものがあると感じつつも、でも世間的にはまだ浸透されていなかったと思うんです。だからそういった描写はあえて徹底的に描きました。でも、それからだんだんと社会状況が良くない方向に進んできたじゃないですか。そうすると、あまりにも不幸な物語を描き続けても、読む方の体力がなくなってくるんじゃないかと思うようになりました。それからは、ハッピーエンドで終わるような話も描いたりもしますし、いろいろと変えていきましたね」

――とはいえ、ウシジマくんを読んでいるとハードな描写に驚くことも多いのですが。映像に対しての意識的な気持ちはありますか?

真鍋「映像は実際にひとりひとりの俳優さんたちがキャラクターを演じるじゃないですか。本当に考えて役作りをしてくれていて。それは僕自身でも気付かないものを教えてもらう機会になりました。ただ、映画やドラマというのは、客層を考えたり、いろんな人の目に触れたりするように作らなきゃいけなくて。それは大変そうだなとは思いました。自分にはそういうのはないので」

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戌亥(いぬい)役の綾野剛


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モネ役の最上もが


――基本はドラマや映画などの映像化作品に関しては、映像のスタッフにお任せですか?

真鍋「そうですね」

――今回、『Part3』をご覧になっていかがですか?

真鍋「詰め込む要素を減らして、より見やすくなったという印象ですね。『Part2』は場面の切り替えが早くて、テンポがいい作品だったんですが、逆に『Part3』では一個の出来事を順に追っていくというか。そんな見やすさを感じました」

――「誰でも稼げる」という塾を主宰するネット長者・天生翔(浜野謙太)が登場し、高額アフィリエイトによって秒速で何億も稼ぎ出す世界というものが主なテーマとなっていました。

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「誰でも稼げる」という塾を主宰するネット長者・天生翔役の浜野謙太


真鍋「配役も皆さんハマっていて。すごく面白かったですね。特に天生翔役の浜野謙太さんは実際にはやせているのに、大金持ちになって小太りになった感じなんかの雰囲気がすごく出ていて良かったです」

――取材の際には、「秒速で1億円稼ぐ男」として話題を集めた与沢翼さんにも取材をされたそうですね。後に彼の会社は経営破綻状態に陥ってしまうわけですが、それでも逆境をはねのけて活動するさまが天生翔に通じるものもあります。

真鍋「結果的に、取材する相手を間違っていなかったなと思いました(笑)。でも、決して悪意があってあれを描いたわけではなくて。何もない人間が、人よりも富を得ようと思う時に、自分自身をプロデュースして売る姿勢というものに共感しましたし、それはきちんと伝えたいと思いましたね。だから今は与沢さんが何をしているのか、気になります」

――そして『Part3』にはもうひとつ。オリエンタルラジオの藤森慎吾さん演じるサラリーマンが美人キャバ嬢にハマって転落していく話もありました。あそこの取材はどのように?

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美人キャバ嬢にハマって転落していくサラリーマン役のオリエンタルラジオの藤森慎吾


真鍋「会社に追い出し部屋というものがあるんですよね。そこでサラリーマン生活を送っている人の話を聞いて、それを参考に作っていきました。あとは自分の知り合いの会社勤めの人たちが、面白くない、ということをいつも言っていたんで。彼らが自分の生活の中で楽しみを得ることって何だろうなと話を聞いていったところ、やはり女の人だろう、となったわけです。藤森さんというのは、自分のイメージしていた、くたびれたサラリーマン像とは違っていたんですけども、実際に映画を見たらすごく演技が上手で、役にハマっていましたね」

――自分だけは大丈夫と高をくくった人たちが、ウシジマくんたちに追い詰められた瞬間に、もう自分に後はないんだと絶望を抱く瞬間を描くのが、どのエピソードでも絶品です。登場人物のリアルな気持ちという意味で、心がけていることは?

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沢村真司役の本郷奏多


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麻生りな役の白石麻衣


真鍋「最近はやり方を変えたんですが、昔は18ページをもらったら、その中に三つくらいの要素を入れて、4ページ区切りで作るようにしていたんです。2ページは見開きでとっておいて、という形で構成していて。そうすると展開も飽きさせないし、またページをめくりたいと思ってもらえるかなと思って。でも、何より自分自身が締め切りに追い詰められていたんですよ(笑)。それが形を変えて出てきたのかもしれないですね」

――どの分野のエピソードでも取材は念入りにされていますが、ただ、裏社会に精通した人物となると、アポ取りなどのセッティングなども大変ではないでしょうか?

真鍋「でも最近は楽になりました。『ウシジマくん』も知名度が上がっているんで、協力してくれる方が多くなりました。いろんな分野ごとに、いろんな人に会えるようになりました。だから取材しやすい状態にはなっていますね。ただ、飲みの誘いとか、そういうのは大変ですけど(笑)」

――例えば金を貸してくれと言われるとか。

真鍋「それはないですよ」

――あくまで取材対象者として会うと。

真鍋「後に飲み友だちみたいになる人もいますけどね。もちろん彼らは犯罪には手を染めていない人たちだと思います(笑)」

――座右の銘をお聞きしたいのですが。

真鍋「『一日一善』ですね。してほしい側です。自分もしますんでという感じです。ちょうど寒い時期だったんですけど、新宿でカバンを落としたことがあって。中にはGPSを入れていたんですけど、そのGPSの電源が切れてしまって。カード類だけは戻ってきたんですけど、カバンとサイフと現金がなくなってしまった。そうしたら、年末に新宿に行った時に、路上生活者の方が俺のカバンを持っていたんですよ。だからクリスマスプレゼントとしてあげました。心の中では絶対にあれ、俺のだよなと思いながら、不本意ながら一日一善をした、ということです(笑)」

◆真鍋昌平(まなべしょうへい)
1998年、「憂鬱滑り台」でアフタヌーン四季賞大賞を受け本格デビュー。 04年から「週刊ビッグコミックスピリッツ」で「闇金ウシジマくん」を連載中。現在37巻まで発売され、累計発行部数 1000万部を超える大人気コミックとなっている。闇金と闇金に取り立てられる債務者たちを圧倒的なリアリティーで描き、11 年に第 56 回小学館漫画賞(一般向け部門)を受賞。その他の作品に「スマグラー」「THE END」、短編作品集に「青空のはてのはて」がある。
座右の銘「一日一善」

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)
(C)2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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