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「デュラララ!!×2」のアニメ制作会社・朱夏が手がける本格派マフィアドラマのオリジナルTVアニメ「91Days(ナインティワンデイズ)」(全12話)が、いよいよ9月30日にクライマックスを迎える。時は禁酒法時代。マフィアの抗争によって家族を殺された男アヴィリオが、仇(かたき)であるヴァネッティファミリーに侵入。報復のためにドン・ヴァネッティの息子ネロに近づく。アヴィリオの報復はさらなる殺しを呼び、男たちを悲しき運命へと導く――。

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TVアニメ「91Days」9月30日に最終回を放送
(C)91Days


本アニメのシリーズ構成を務めるのが、「ハイキュー !!」「僕だけがいない街」の脚本家・岸本卓だ。雑誌「サイゾー」編集部からスタジオジブリに入社、その後、脚本家に転向、という異色の経歴を持つ岸本に、脚本執筆の経緯、自身の脚本のスタイルなどについて聞いた。

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「91Days」脚本家・岸本卓氏


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――原作もののアニメ化作品が多い中で、オリジナルの企画で制作することの難しさがあったと思います。今回、岸本さんはどのような経緯で作品に関わるようになったのでしょうか?

岸本「確か話をもらったのは2年くらい前でしょうか。僕が参加する前からゾンビものにしようかとか韓流ドラマっぽくしようかとか、いろいろ話し合いが持たれていたようですが、結局僕のところに来た時には、マフィアもので昼ドラのようなドロドロした話を作ってほしい、というシンプルな要望でした」

――本作では、禁酒法時代のアメリカを描いた物語ですが、そのあたりの描き方はどうでしたか?

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岸本「運がいいことに、僕はマフィア映画やヤクザ映画が大好きだったので、あらためて勉強し直す必要もなく。ひたすらやりたいことを詰め込んで、土台となる構成は一日で書けました。めちゃくちゃ楽しかったですね」

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――その後もすんなりと進んだのでしょうか?

岸本「ところがどっこい大変でした。監督の鏑木さんは独特の美意識とこだわりを持った方だし、何かとえげつないことを思いつくプロデューサーもいたりして、書き直しは結構やりました。1話につき7稿、8稿は普通にいきましたね。とはいえ基本的には、ダメ出しというよりも『こんな風にやったらもっと面白くなるんじゃない?』という建設的な意見だったので、こっちも非常にポジティブな気持ちで書き直す作業ができました。特に、キレキレな意見を独特な角度から投げてくる鏑木さんの意見は常に新鮮でした。全部は理解できなかったけど(笑)。そしてだいたい11時頃シナリオの打ち合わせが終わったら、というより無理矢理終わらせて監督やプロデューサーたちと飲みに行く(笑)。本当にいいチームに恵まれました」

――いよいよ物語もクライマックスとなりますが、

岸本「基本的にはシンプルな話ですからね。家族を殺された主人公が復讐するためにマフィア組織に入るんだけど、そこで仇との間に友情が芽生えてしまう。そしてその二人が生き残り、殺すか殺さないかの決断を迫られる......。どちらかが生き残るのか、両者とも死ぬのか、はたまた両者生き残るのか......ラストシーンのアイデアを思いついたのは最終回を書いている時だったんですけど、自分の最初の予想からはだいぶ離れたものになりました。いや、そうでもないのかな......まあとにかく、二人の行く末を見届けてやってくれればうれしいです」

――「91Days」はどこか実写映画っぽい手触りがあるように思います。それは岸本さんの資質もあったのでは?

岸本「どうなんでしょう......? たんにできることをやったらこうなっただけで......むしろアニメ的な飛躍をできないことがウィークポイントだと思っています。最初、構成案を出して、次にキャラクターをどうしようかと考えた時に、プロデューサーからはひとつの材料として『超能力が使えるキャラクターを入れたらどうか?』という提案もあったんですけど『そういうのは、いらなくないですか?』と。そしたら、『それならば拳銃の達人とか、ナイフ使いといったキャラクターは?』とも提案されたんですが、『そういうのも、いらなくないですか?』と。結局、みんなただの人になっちゃった(笑)。せいぜいアヴィリオがスリのテクニックを持ってるくらい。そういった超人的な能力を付与してキャラ付けをしていけばアニメ的になるのかもしれませんが、鏑木さんも僕も、できれば今回そういうのはナシにしたいなと思って。お話で頑張ってインパクトを持たせて、それが差別化になればいいなと思ったんです」

■サイゾー&ジブリ出身という異色経歴の脚本家のスタイルとは

――ところで岸本さんは雑誌「サイゾー」編集部にいて、その後、スタジオジブリに入社。その後、ジブリを退社してから脚本家になるという異色の経歴を持っています。

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サイゾー&ジブリ出身という異色経歴の脚本家のスタイルとは


岸本「『サイゾー』で働いていたと言っても、僕がやっていたのは皆さんが思っているような社会の隠された核心を突くようなことではなくて、むしろ鉄砲玉として使われていた部分が大きいんですけどね(笑)」

――鉄砲玉とは?

岸本「編集長の指令が、「とにかく取材相手を怒らせてこい」なんですよ。某映画監督を取材した時も、興収の半分は劇中に流れた奥さんの曲のおかげじゃないですか、みたいな言い方をして、『ふざけんな!』と怒らせてそれを記事にするとか。俺だってやりたくなかったですよ。でも、取材相手よりも編集長のほうが怖かったから(笑)」

――それがどうやったらスタジオジブリ入社につながるんですか?

岸本「ちょうど『ハウルの動く城』の公開前だったんですが、やはり編集長から突撃してこいと言われて。ジブリ作品は『もののけ姫』しか見たことがなかったんですが、どんなところか興味もありましたし、鈴木敏夫プロデューサーにむりやりアポを取ってスタジオジブリに行ったんです。その時は、『あの俳優を声優で起用したのは作品のためじゃなくて、宣伝のためじゃないですか?』とかなんとか鈴木さんに言いがかりをつけると、鈴木さんが『君は何を知っているんだ』となる。そこで僕が『きっとみんなそう思っていますよ』とダメ押しすると、鈴木さんが『勝手なことを言うな!』。はい、いただきました、と。」

――そんな人をよくジブリが雇いましたね。

岸本「そんなインタビューをした後、帰りがけに鈴木さんからジブリに来ないかと誘われたんです。最初はお断りしていたんですけど、睡眠時間がとれない「サイゾー」の仕事が身体的につらかったのと、さっきのようなインタビューの原稿にまったく朱を入れない鈴木さんの人間的なデカさに惹かれて、一年後に軍門にくだりました。ジブリはみんな昼寝をしてたり、天国みたいな平和なところだと想像していたんですが、実際に入ったら全然そんなことはなかった(笑)」

――最初はどういうお仕事をやられたのですか?

「最初にやったのは高畑勲さんの話し相手でした。『わたしは作るつもりはありませんから』という高畑さんを、何とかやる気にさせるのがミッションです。でも、会いに行こうと電話をかけて『お世話になっています』というと、『あなたをお世話した覚えはありません』と返ってくるし、会話中に相づちを打っていたら、『あなた、うなずいていますけど、どれくらい理解しているんですか? 言ってみてください』と。「サイゾー」より10倍くらいつらい毎日が待ってました(笑)」

――......ジブリでは、脚本は書かれていなかったのですか?

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「銀の匙 Silver Spoon」や「ハイキュー!!」などの作品を経て、そしてオリジナル作品となる「91Days」に続いていく


「基本的には書いていません。が、ある時高畑さんと雑談していると、ある文学小説を渡されて、10その中のあるシーンを脚本化してみてくれと言われました。オリジナル要素を足したりしながら見よう見まねで書いてみたら、「なかなか面白いね」と褒めてくれたんです。相づちを打っただけでボロッカスに言われた高畑さんから! これが僕の脚本との出会いです......って、なんだそりゃ(笑)」

――宮崎駿さんとも脚本作りでやりとりをしたことがあったそうですね。

「ある時、宮崎さんが『借りぐらしのアリエッティ』の企画を持ってきて。脚本家を探しているんだと言いだしたので、その場で『やります!』と手を挙げたら、その場で『そうか、だったらやってみろ!』と(笑)。でも書いてはダメだし、書いてはダメ出しを繰り返して、はや3カ月、『岸本、もうお前は書かなくていい、俺の頭の中で出来上がった』と引導を渡されました」

――宮崎さんとしてはいい壁打ちだったと。

「壁として機能できたかも怪しいですが、僕としては脚本を書く楽しさを知ってしまったので、さてどうしようかと。ジブリでは2年に1回しか映画を作らないし、宮崎さんに解任された自分に、また声がかかるとは思えない。そんなわけで、ジブリをやめて脚本家になったということです。といっても、最初の2年くらいはただのプー太郎でしたが」

――脚本家の原点はジブリだった?

「ある意味そういう言い方もできるとは思いますが、原点という意味では『うさぎドロップ』の方が大きいかもしれないです。もちろん宮崎さんとのやりとりはすばらしい経験だったけど、行き当たりばったりで混沌(こんとん)としていたというか。脚本ってこうやって作っていくのか、というようなことが分かるようになったのは、『うさぎドロップ』からですね」

――そこから「銀の匙 Silver Spoon」や「ハイキュー!!」「ジョーカー・ゲーム」などの作品を経て、そしてオリジナル作品となる「91Days」に続いていくわけですね。

「『91Days』について言うと、会議がとても建設的で楽しかったんです。僕の場合、初稿は仕事全体の半分で、残りの半分は直しなんです。ああだこうだと会議で出てくる、いろいろな意見を取り入れて、時には排除していく。脚本家によってはこの脚本は完璧なので、出来ればいじって欲しくない、という人もいますし、それはそれですばらしいプライドだと思いますけど、僕はどちらかというと職人タイプなので。むしろ『みんなでよくしていこうぜ』という感じです。だから会議でどれだけ生産的な意見が出てくるか、それをどう引き出すか、そしてどう取り入れていくかという方が大事なんです。そしてもっと大事なのが、そのあとの飲み(笑)」

――それはライター出身で、いろいろな人からコメントを引き出してきた岸本さんならではのスタイルじゃないでしょうか?

「そうですね。様々な意見をまとめて統一性を持ったひとつの記事を作るというスタイルがシナリオ作りにも活きているのかもしれません初稿を出したあとは、ひたすら人の意見を聞いて、何か面白い点がないか探し出し、取り入れるという感じです」

――そんな岸本さんの座右の銘は?

「考えたことないけど......『人のふんどしで相撲をとる』ですかね。ちょっとスマホで意味を調べてもらえますか?」

――はあ......「他人のものを利用したり、他人に便乗したりして利益を得る』とありますが......」

「それでお願いします。まさに自分にピッタリだと思います(笑)」

◆ 岸本卓(きしもと たく)
1975年兵庫県神戸市出身。雑誌「サイゾー」編集部に所属後、2005年にスタジオジブリに入社。その後、2009年にスタジオジブリ退社後、2011年の「うさぎドロップ」で脚本家デビューを果たす。その後も、「銀の匙 Silver Spoon」「ハイキュー!!」「銀魂」「僕だけがいない街」「ジョーカー・ゲーム」など数多くのアニメ作品のシリーズ構成・脚本を手がける。

座右の銘「相撲は人のふんどしでとる」

(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)

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