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ノラ・ジョーンズが、およそ4年半ぶりの最新アルバム『デイ・ブレイクス』を10月5日にリリースする。グラミー賞を受賞したデビューアルバム『ノラ・ジョーンズ(原題: Come Away With Me)』以来、実に15年ぶりにピアノで作曲をおこなったという本作は、デンジャー・マウスをプロデューサーに迎えた前作『Little Broken Hearts』の「オルタナティヴ路線」から一転、改めて「ジャズ」と向き合った「原点回帰」とも言える内容で、ウェイン・ショーター(サックス)やドクター・ロニー・スミス(オルガン)らスウィング界のレジェンドたちをゲストに迎えたり、ホレス・シルヴァーの「ピース」やデューク・エリントンの「アフリカの花」、意外なところではニール・ヤングの「ドント・ビー・ディナイド」をカヴァーしたりと、「ジャズ色」を強めながらも、そこに収まりきれない内容に仕上がっている。

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最新アルバム『デイ・ブレイクス』を10月5日にリリースする、ノラ・ジョーンズ


今回プロモーションのため来日し、「ブルーノート東京」で一夜限りのショーケースライヴもおこなった彼女に、新作アルバムについて聞いた。

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■ いい曲は常に生き続けていて、時によって違うフィーリングを人に与えるものだと思う

ーーおよそ4年半ぶりとなる今作『デイ・ブレイクス』は、久しぶりにジャズ色の強いアルバムとなりました。これは、2014年5月にワシントンDCの「ケネディ・センター」で開催されたブルーノート・レーベル75周年コンサートで、マッコイ・タイナー(ピアノ)やウェイン・ショーター(サックス)、ドクター・ロニー・スミス(オルガン)、ロバート・グラスパー(ピアノ)らと共演した経験が大きかったそうですが、そのときの感想をお聞かせください。

ノラ:とても感銘を受けたし、彼らとまた一緒にプレイしたいという気持ちになった。でも、そのためにはまず曲を書かなきゃと思って、少しずつ曲をストックしていったの。それらを整理しつつブラッシュアップしていくうちに、アルバム1枚分のボリュームになっていったわけ。

ーージャズを基調としつつ他の音楽的要素もちりばめられた、シンプルながら情報量の多い作品ですよね。

ノラ:ええ、私もそう思う。曲を作っている間はジャズ以外の音楽もたくさん聞いたし、そこからのエレメンツも無意識のうちに入り込んでいるはずよ。曲作りのときにある程度方向性を決めて取り掛かっても、進めていくうちにだんだん別の方向性が見えてきて、気が付いたら全く予想もつかない場所へ着地することもしばしばあったから。

ーー多くの曲は、ピアノで作曲したそうですね。

ノラ:そう。これまではエレキギターで書くことが多かったのだけど、数年前にチャリティーワークなどで、ピアノの弾き語りをする機会が多くなって。それで練習しているうちに、ピアノにインスピレーションを受けることが多かったの。自宅のピアノはキッチンにあって、子供を寝かしつけた夜中によく弾いていたわ。

ーー15年ぶりにピアノで作曲してみて、何か発見したことはありますか?

ノラ:私はピアノに比べてギターがあまり得意ではないので、使えるコードの数も限られているの。でも、その中で工夫しているうちに全く予想もしなかったアイデアが浮かんでくることがあって、それが楽しくて今までエレキギターで曲を作っていたの。ピアノはもっと自由に弾けるので、いつもより楽しい気分で作曲ができたと思う。

ーー歌詞の内容は、幸せの中に悲しさが含まれていたり、あるいはその逆だったり、聞く角度によって違った印象を聞き手に与えるものが多いと感じました。

ノラ:それはうれしい感想だわ。数年前に書いた曲が、今聞き返すとまた違った意味を持つことは私自身もあるし、いい曲は常に生き続けていて、時によって違うフィーリングを人に与えるものだと思うから。

■ 他の人とコラボすることで、自分一人では辿(たど)り着けない場所まで行けるのがうれしい

ーーサックス奏者のウェイン・ショーター、オルガンのドクター・ロニー・スミスなど、ジャズの大御所たちが参加していますが、彼らとの共演はいかがでしたか?

ノラ:思っていたよりも怖くなかった(笑)。みんな子供のようなところがあるし、特にウェインは優しくて感激した。大事な思い出になったわ。

ーーホレス・シルヴァー(「ピース」)、デューク・エリントン(「アフリカの花」)、そしてニール・ヤング(「ドント・ビー・ディナイド」)のカヴァーを取り上げています。それぞれ、どんな思い入れがありますか?

ノラ:ホレス・シルヴァーは以前カヴァーしたことがあって、ウェイン・ショーターとコラボしたら面白くなるんじゃないかと思って取り上げてみた。歌詞がとても気に入っているの。デューク・エリントンの「アフリカの花」は素晴らしい曲で、こんな曲を書きたいなと思っていたんだけど、書けなかったのでカヴァーすることにした(笑)。ニール・ヤングの曲は、私がやっているガールズユニット、プスンブーツが彼のオープニングアクトを務めたことがあって。それがキッカケでやってみたくなったの。

ーー「アフリカの花」は、アルバムの中でも異彩を放っている曲で、個人的にも非常に感銘を受けました。

ノラ:ありがとう。演奏はとっても難しかったのだけどね。まず、ウェインとのセッションでこの曲を取り上げてみたの。もう、何度もなんども繰り返し聴かなきゃマスターできないくらい複雑な曲で。これが全てインプロヴィゼーション(即興演奏)で作られていると知って、さらに驚いたわ。あと、この曲は歌詞がないのでどうしようかと思っていたのだけど、演奏しながらハミングしてみたらいい感じだったので、そのまま使うことにした。

ーーアルバムの中では「トラジディ」という曲がとても好きです。この曲はどのように生まれましたか?

ノラ:この曲の、"It's a tragedy"とリフレインする部分は随分前から出来ていて、その後の展開や、歌詞の全体像がなかなか浮かんでこなくてそのままにしていたの。それで、今作をレコーディングするとなったとき、共作者の一人であるサラ・オダにデモを聞かせたら、そのまま持ち帰って残りの部分を仕上げてくれたの。普段の共作は、二人で膝を突き合わせて話し合いながら一緒に仕上げていくことが多いのだけど、この曲に関しては、そんなわけで完全に分業というスタイルになったわ。

ーーリフレインするメロディの後ろで、コード進行が刻々と移り変わっていくのがとてもセンチメンタルだなと思いました。

ノラ:私もそこが気に入っているわ、ありがとう!

ーー前作ではデンジャー・マウスをプロデューサーに起用したり、今作では複数の共作者を起用したり、これまでにさまざまなコラボを積極的に行ってきた理由は?

ノラ:一人でやっていると、どうしても「手グセ」などに頼ってしまいがちじゃない? 他の人とコラボすることで、自分でも気づかなかった領域に気づいたり、自分一人では辿(たど)り着けない場所まで行けたりすることがうれしいのだと思う。

ーー中でもロバート・グラスパーとは、彼のアルバム『Black Radio』に参加するなど交流が深いですが、新世代ジャズミュージシャンである彼の印象は?

ノラ:彼とは高校時代からの友人で、当時は「テキサス出身の痩せっぽちなピアノキッズ」っていう印象だったんだけど(笑)、今や音楽シーンに多大なる貢献をした偉大なミュージシャンよね。そんな彼を誇りに思う一方、相変わらず今も会えば楽しくおしゃべりできるのが、とてもうれしいわ。

ーー日本に来たのは4年ぶりですよね。これから行ってみたいところはありますか?

ノラ:まず、こんなに暑い季節に来たことがないから驚いている。もう9月よね?(笑)今回、あまり時間がなくて、そんなにいろいろなところはまわれないのだけど、日本にいる友達に会ったり、買い物したり、できる限り楽しんで帰りたいと思っているわ!

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最新アルバム『デイ・ブレイクス』を10月5日にリリースする、ノラ・ジョーンズ


◆ノラ・ジョーンズ
1979年3月30日ニューヨーク生まれ、テキサス育ち。ジェシー・ハリス(「ドント・ノー・ホワイ」の作者)、リー・アレキサンダーらと自己のグループを結成。ブルース・ランドヴァルの目にとまり、ブルーノート・レコードと契約。2002年2月26日、デビューアルバム『ノラ・ジョーンズ』(原題: Come Away With Me)をリリース。翌年1月25日付ビルボード、アルバム・チャートで1位を獲得。以後3週連続で1位の座に。2 月、ブリット・アワードにて最優秀洋楽新人賞を受賞。さらに、第45回グラミー賞にて主要4部門を含む 8部門全てを受賞。全世界で2000万枚を超えるセールスを記録した。2004年、セカンド・アルバム『フィールズ・ライク・ホーム』をリリース。以降、オリジナル・アルバムを4枚、企画アルバムを2枚リリースした他、リトル・ウィリーズ、プスンブーツのメンバーとしても活動中。常に世界のトップアーティストとして存在感を放っている。

(取材・文/黒田隆憲)

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