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『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の初回視聴率が12.9%と好発進した。

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石原さとみ, Sep 08, 2016 : 東京都内で行われた花王の柔軟剤「フレア フレグランス」の新商品発表会
写真:MANTAN/アフロ

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実は日テレのドラマは、初回の強さに定評がある。
例えば去年春以降で、クール毎に新ネタの連続ドラマに限って比較すると、日テレの全18ドラマの初回平均は12.4%。テレ朝14ドラマが12.0%、TBS18ドラマ10.4%、フジ18ドラマ9.9%なので、日テレがトップを行く。中でも水曜10時枠は13.3%とかなり強い。

もちろん理由はいろいろある。番宣CMに力を入れるのはどこの局も同じだが、主役級の俳優を他の番組に露出させる作戦が、特に他局の上を行っている点を特筆しておきたい。
今回の『地味にスゴイ!~』でも、主役・石原さとみの露出は半端なかった。
放送前1週間での番組出演数は17回。うち視聴率の高いGP帯番組が4本。しかも放送当日は朝の『ZIP』に始まり、『スッキリ!!』『PON!』『ヒルナンデス!』『情報ライブ ミヤネ屋』『news every.』『笑ってコラえて!』と1日中出ずっぱりだった。GRP換算だと凄まじい露出量で、CMなら億単位の金額に値するだろう。

こうした施策に支えられた初回高視聴率だが、『地味にスゴイ!』第1話を見る限り、日テレは前クール『家売るオンナ』に続き、新たな勝利の方程式を確立させつつあると感ずる。キーワードは、"お仕事ドラマ""強烈キャラ""バラエティー路線"の3つだ。

■キーワードは、"お仕事ドラマ""強烈キャラ""バラエティー路線"

 "お仕事ドラマ"とは、90年代に一世を風靡したトレンディードラマと一線を画し、プライベートな部分より、9時5時の仕事時間にウエイトのあるドラマ。前クールでは、不動産のスーパー営業ウーマンが主人公の日テレ『家売るオンナ』が平均視聴率11.6%と、民放のGP帯14本の中でトップとなった。中島裕翔が社会人1年生を熱演したフジ『HOPE~期待ゼロの新入社員~』は、視聴率こそイマイチだったが、関東で同じ1,000人のテレビ視聴動向を調べる「テレビウォッチャー」によれば、満足度が5段階評価で4.16と、他のドラマを圧倒した。
 その前の春クールでも、刑事専門弁護士という特定の職業にスポットライトを当てたTBS『99.9-刑事専門弁護士-』が、視聴率17.2%で断トツの首位。満足度で4.20と「テレビウォッチャー」史上最高を記録したTBS『重版出来』も、新人編集者を主人公にした"お仕事ドラマ"だった。
 近年でいえば、視聴率18.5%のTBS『下町ロケット』(15年秋)も中小企業の技術者の物語。最終回42.2%がドラマ歴代2位という大記録を打ち立てたTBS『半沢直樹』(13年夏)も、銀行の融資課長が主人公だった。"お仕事ドラマ"は、このところ間違いなく栄光の道を歩んでいる。

次に"強烈キャラクター"。
日テレのドラマは、94年の『家なき子』以降、この路線で成功するドラマを多数出している。
 『ごくせん』(02年・05年・08年)
 『女王の教室』(05年)
 『ハケンの品格』(07年)
 『曲げられない女』(10年)
 『家政婦のミタ』(11年)
 『花咲舞が黙ってない』(14年・15年)
 『家売るオンナ』(16年)
キラ星の如く輝く"強烈キャラクター"が並んでいる。

今回の『地味にスゴイ!』の石原さとみ演ずる河野悦子もスゴイ!
新卒から不採用が6回続いても、今回7回目でついに出版社に入る執念。
発言も突出している。校閲部に出社した当日に、編集者の貝塚(青木崇高)をいきなりタコよばわり。先輩の古臭いスーツを「お姉さんのおさがり?」「古臭いを通り越して、型落ちのビンテージ感」と爆弾発言。大作家の前で編集者の貝塚に「おまえ、ゆとりだな」とディスられると、「ギリゆとりですが、何か?」と切り返し、「私たちゆとりは国政の被害者です」「何であんたのような薄っぺらい中年に偉そうに説教されなきゃならない」「てめえこそ、少しは原稿に目を通してこっち持って来いよ」「詰め込み教育受けている間に、やること半端すぎるんだよ、この無能が~」と超早口にまくし立てる。
言っていることは正しいが、毒舌の極み&言葉使い最低、そして痛快極まりない。

以上2つの強みに、"バラエティー路線"が加わった。
前クール『家売るオンナ』から模索が始まっていた。例えば売上ゼロのダメ営業ウーマン白洲美加(イモトアヤコ)に「GO!」と命令する際、主人公・三軒家万智(北川景子)の顔にクイックズームすると同時に、小さな突風が髪をなびかせる。相手を睨みつける際にも、クイックズームやアップサイズへの短いカットの積み重ねが多用され、後光のようにキラリと光まで付加されていた。
効果音と効果音楽でも、サイボーグのようにシャキシャキ動く北川景子の動作に、細かく効果音がついた。同僚が失敗しダメダメの表情になる際には、「ぷぉ~ん」的な音が添えられた。劇画的なわかりやすさに徹しているのだ。過去30年以上に渡り、バラエティー番組が進化させてきた手法だった。
担当の小田玲奈プロデューサーも、「バラエティー番組を見る感覚で見てもらえることを意識して作った」と発言している。

実は今回の『地味にスゴイ!~』は小田プロデューサーの連投だ。
この人は長くバラエティーのディレクターとして勇名を馳せてきた方。ドラマの常識に捉われない感性が、随所に新風を吹き込んでいるようだ。
例えば『地味にスゴイ!』初回では、冒頭から石原さとみが尋ねる高層ビルに、ヴァーチャルに「景凡社」の文字をドデカく入れてしまう。面接試験の際にも、彼女が愛読してきたファッション誌「C.C」「E.L.Teen」「Every」「Lassy」「Enough」等のテロップが画面を埋め尽くす。さらにシーン代わり目には、しゃれたファッションに身を包んだ石原の写真に、「Etsuko」「KEIBONSHA」などの大きなテロップが付き、次のシーンを告知する。

効果音もやりたい放題!
『家売るオンナ』の時同様、細かく効果音が入るのは大前提。石原さとみが後輩に編集者への決意を熱く語る際には、「編集者になってやるうぅ」の大きなテロップが二段モーションでスライドインするが、その際に"ダンッ" "ダンッ"と音をつけた上で、最後に「ワウゥ~」と犬の遠吠えを入れてしまう。
役者の演技だけでなく、編集・テロップ入れ・音入れなどポスプロ部分で意味を加え、笑いを取る。ドラマのリアリティーを無視した、まさにバラエティーのやり方をどんどん取り入れているのである。
大作家に説明中も、「ミステリー×エロティシズム」のテロップに、何とパラパラ漫画を加えていた。面白くするために使えるものは何でも使う。バラエティー魂が爆発しているドラマなのである。

しかもタイトル『地味にスゴイ!~』を印象付けることも忘れない。
大作家が使った「超おいしい」という言葉を、今は「おにうま」「やばうま」「地味うま」などと使い分けると校閲する。ドラマのタイトルに入っている「地味」をしっかり印象づけようというのだ。ちなみに「地味うま」とは、「思っていたよりうまい」「後からジワジワうまくなる」の意。ドラマ『地味にスゴイ!』は、"後から"どころか、最初から飛ばしに飛ばして面白いが、なぜこんなタイトルにしたか自己主張も忘れていない。もしかしたら、「タイトルがいまいち地味!」と言ったかもしれない上司への当てつけか?
しかもドラマ中の事件が一件落着した際、大作家から石原さとみに送られた出来立ての本が届く。本には「謹呈」のしおりが挟まり、「地味にスゴイ」の直筆が大写しになる。「やられたぁ!」と思ってしまうぐらい、小憎らしいダメ押し演出だ。
バラエティー路線は今回、『家売るオンナ』より明らかに進化している。今後、演出がどこまで大暴れし、"ドラマ×バラエティー"がどんな化学反応を見せるのか。今回もちょっと目が離せそうにない。

文責・次世代メディア研究所

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