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誕生日に毎年届く、亡き母からの"バースデーカード"。それは、最愛の娘の成長を見守ることが出来ないことを悟った母が、ありったけの愛を込めて綴った未来の娘への"手紙"だった――。
映画を愛する若手女優・橋本愛が「勝負をかけた作品」と想いを熱く語り、優しくて深い愛情を持つ母親を好演した宮崎あおいも、「役をとおして新たな自分を発見し、驚いた」という、映画『バースデーカード』(10月22日公開)。今回、橋本愛、宮崎あおいへそれぞれ作品の魅力について聞いた。

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橋本愛、宮崎あおい 映画『バースデーカード』(10月22日公開)


映画『バースデーカード』予告編映像>>


若手実力派女優として数多くの印象的な作品に出演している橋本愛。彼女の最新作『バースデーカード』(10月22日公開)では、幼少期に母親を亡くしながらも、毎年誕生日に届く母からのバースデーカードの導きで、自らの人生を懸命に生きる女性・紀子を好演している。原作ものが多い昨今の日本映画のなか、オリジナル脚本で挑む本作。「この映画は勝負をかけた作品」と強い視線で語る橋本に作品への想いや、映画というメディアの魅力を聞いた。

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自らの人生を懸命に生きる女性・紀子を好演している、橋本愛


■小学生の時に性格が急変しました、それこそリアルな「人の生き方」

――紀子という役柄を演じる上で大切にしたことは?

橋本:吉田康弘監督とお話した時、「王道ストーリーを丁寧に細やかに」、「母親と娘のバディムービーにしたい」という想いを聞きました。私が一番大切にしたのは「うそを極力少なくすること」です。フィクションであり、物語ではあるのですが、一人の女性が人生を歩んでいくという現実味や説得力が重ければ重いほど、この映画の意味が増してくると思いました。あとは、観賞した人が「紀子はきっと、このあとも幸せが続くんだろう」と確信をもって映画が終われるように意識しました。

――紀子は引っ込み思案な女の子でしたが、橋本さんの幼少期は?

橋本:私も同じように人前に出るのが嫌で、すごく面白そうなトランポリンがあるのに、一人だけ参加しなかったり......。でも小学何年生かのころ、性格が急変したんです(笑)。その理由って、何かきっかけがあったわけでもないんです。逆に、それまで何でそんなに萎縮していたんだろうって、自分でも不思議に思うぐらい。
今回の作品のように一人の人生を演じる上でも、小さいころと違う行動を大人になってからすると矛盾みたいに捕らえられることがありますが、むしろそういう違和感こそリアルな「人の描き方」だって思うんです。そういう意味で、子供のころとの連動性は意識しませんでした。しぐさとかって、年齢によって変わるものだと思うんです。

――今のお話はとても面白いですね。確かにそういう経験って誰にもあるのかもしれません。

橋本:何でかわからないけれど、急に内気じゃなくなったんです。そしていま、また逆に戻っている感じもありますけれど(笑)。

――本作の魅力の一つに、母親からの手紙があります。すごくすてきで愛のある手紙でしたが、橋本さんは子供が出来たらどんな母親になりたいですか?

橋本:大きく言ってしまえば、人の見本になりたいです。子供が「こうなりたい」と思えるような人。家族以外の世界でもそういう人と出会っていくと思いますが、その中の一人に自分が入れるような母親になりたいです。

■この映画は私にとって勝負をかけた作品

――演じ切って、胸に去来した想いはありましたか?

橋本:この映画は私にとって勝負をかけた作品でもあるのですが、「勝負をかけ、そして勝てる」と確信しました。

――勝負をかけた作品とは?

橋本:オリジナル作品であり、本当に豊かな作品だということ。物語の主軸は王道でまっすぐで純粋なものでも、それを丁寧に作り込むことに成功し、すごく大きなふくらみになっています。長野県の諏訪、小豆島などのロケーションの美しさもそうですが、その豊かなディティールが、この作品の大らかさや、土地の匂いが立ち込めるような描写につながっています。脚本から映像として大きく育ってくれたのがうれしいです。

――作品に取り組む上で大事にしていることは何ですか?

橋本:出演映画に対して、「この映画、面白いので見てください」と自信をもって言いたいです。私はそういう脚本に出会うために、役者をやっています。ものすごくほれ込んだ脚本や人に出会ったとき、「絶対に崩してはいけない」と思う一方、自分で壊してしまうこともある、そういう責任感も持っています。すごく緊張しますが、その緊張感は大好きですね。

――橋本さんにとっての映画の魅力とは?

橋本:総合芸術がミラクルを起こすことがあるんです。演技、カメラ、脚本、照明、演出......なかなか完璧に融合することはないのかもしれませんが、その複雑な役割のなかでミラクルが起きた時の作品の力、その感動は忘れられないんです。ものづくりに対して誠実な人でありたいです。

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深い愛で子供たちを包み込む母親・芳恵を情緒たっぷりに演じた、宮崎あおい


 「こんなに優しい声と表情だったんだ」――自身の演技を見て驚いたという宮崎あおい。本人の言葉通り、最新作映画『バースデーカード』(10月22日公開)では、幼い子を残して他界してしまうという過酷な運命を背負いながらも、どこまでも深い愛で子供たちを包み込む母親・芳恵を情緒たっぷりに演じている。「子供がいてもおかしくない年齢になったんですよね」としみじみと語った宮崎に、本作に込めたメッセージや、パーソナルな話を聞いた。

■子供たちを前に自然と優しい気持ちに......

――宮崎さん演じた芳恵は、とても大きな愛で子供たちを包み込む母親でしたが、役柄にはどんなアプローチをしたのでしょうか?

宮崎:脚本を読むとき「こういう人物だからこう演じよう」ということを普段からあまり考えないんです。でも今回は子供たちと一緒に過ごす時間が多かったので、自然と子供たちや(夫役の)ユースケ(・サンタマリア)さんに引き出された部分が大きかったと思います。子供たちを目の前にすると自然と優しい気持ちになりましたし、出来上がった作品を見たとき「わたし、こんなに優しい声の出し方をしていたんだ」と自分でも驚いたくらいです。

――本当に家族のシーンでの宮崎さんの表情は柔らかくて温かい雰囲気でした。いつも前向きな芳恵が唯一弱音を吐く場面も、ユースケさんとの対峙(たいじ)でしたね。

宮崎:病気の人間よりも周囲の家族の方がつらいことってあると思うんです。母親がいなくなってしまう不安も強いだろうし、子供たちとこれからどうやって生きていけばいいんだろうとか、大切な人がいなくなってしまうかもしれないつらさとか......。そういうものと戦いながら私のことを励ましてくれる夫の存在を、本当にうまく演じてくださいました。何回かテイクを重ねたシーンなのですが、気持ちが途切れることなくできたのはユースケさんのおかげです。

――宮崎さんといえば"編み物"のイメージがあるのですが、劇中にもそういったシーンが出てきますね。

宮崎:編み物は私の趣味なので、日常的にやっている人とそうじゃない人だと手つきでわかると思うんです。その意味ではうそをつかずに演じられますし、個人的に映画の中でそういうシーンがあることはうれしいですね。しかもとても重要なシーンだったので、個人的にも「やったー」という感じでした。

■母親役をすると、自分の子供がどんどん増えていく気分

――母親の役を演じてみて、母親という存在に何か変化はありましたか?

宮崎:自分がいま30歳になって、親の気持ちもわかる世代。その意味ではいろいろな視点を持てるようになりましたが、母親役を演じたことで意識が変わったということはあまりないかもしれません。ただ母親役をやると、自分の子供がどんどん増えていくので、今まで一緒にやってきた子たちが違うところで頑張っていたり、テレビで見る機会があると親心は芽生えますね(笑)。今後もそういうことが増えていくと思うと楽しみです。

――宮崎さんにとって理想の母親像とは?

宮崎:笑顔のお母さんでいたいです。お母さんに限らず一緒にいる人が笑顔だったらうれしいので、なるべく日々穏やかな笑顔で生活できて、それが子供にとってもいい影響を与えて、「こうなりたい」と思ってもらえるような母親になれたらいいですね。

――近年、母親役も増えて、ますます役柄の幅が広がっているように感じますが。

宮崎:自分の年齢が変わっていくことによってできる役柄も変わっていくのが女優の魅力のような気がします。年を重ねても定年がないというのは面白いですし、年を重ねていかないとできない役もたくさんあります。今後いろいろな役に出会えると思うと楽しみですね。

■いまがとても幸せ。穏やかに平和に、丁寧にいまを過ごしていきたい

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深い愛で子供たちを包み込む母親・芳恵を情緒たっぷりに演じた、宮崎あおい


――劇中、芳恵は「思い通りにいかないことがたくさん、後悔もいっぱいあった。でも幸せだった」と紀子に語りかけます。これまでの宮崎さんの人生を振り返ってみて、ご自身の人生は思い通りでしたか?

宮崎:子供のころに「こういう大人になりたい」とか「5年後、10年後にこうなりたい」ということを意識したはほとんどなかったんです。なので「思い通りの人生か?」と聞かれてもわからなくて。でも私はいまとても幸せで、現在の自分は充実していると思うので「満足しているよ」と答えると思います。未来についてもあまり考えることはなく、いま目の前にあることしか考えられないので。いまを丁寧に誠実に積み重ねていった結果にいい未来があるのではないかと思って、日々過ごしています。

――多くの人は過去を振り返ったり、未来を案じてみたりしてしまうものですよね。

宮崎:未来にも過去にもいけないですからね。でも私は「絶対幸せになれる」って変な自信があるんです(笑)。穏やかに平和に、丁寧にいまを過ごしていきたいです。

――この作品には娘へのすてきな手紙がたくさん出てきますが、宮崎さんにとって手紙とは?

宮崎:手紙は大好きで自分でも書きますし、人からもらうのも好きです。手紙を書くとき、自分の心がそのまま表れると思っています。書きながら自分の気持ちが整理されていく感じがするので、友達への手紙などは、支離滅裂だったりします(笑)。それがいまの自分だからいいやって送ることもあれば、送らずにしまっている手紙もあります。メールとかじゃなくて、自分の字で書いたものってぬくもりが感じられるし、私にとって手紙はとても大事なものですね。

――作品の見どころを教えてください。

宮崎:この映画を見るとき、私は母親目線でみてしまうんです。悲しいシーンもありますが、自分がこの世からいなくなったとき、子供に何を残せるかという前向きな気持ちや、残された家族が成長していく姿、娘がいろいろなことに少しずつ悩みながらも大きく成長していく姿に感動したので、そういう部分を見ていただければと思います。

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橋本愛、宮崎あおい 映画『バースデーカード』(10月22日公開)


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橋本愛、宮崎あおい 映画『バースデーカード』(10月22日公開)


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橋本愛(はしもとあい)
1996年1月12日生まれ、熊本県出身。映画『Give and Go』(10年)でスクリーンデビューを飾ると、同年の『告白』で注目を集める。その後も、『桐島、部活やめるってよ』(12年)、『リトル・フォレスト 夏・秋』(14年)『ワンダフルワールドエンド』(15年)など数々の話題作に出演し、2016年には「残穢-住んではいけない部屋-」「シェル・コレクター」「うつくしいひと」に出演。本作公開後も12月に『古都』、2017年には三島由紀夫原作を映画化した『美しい星』の公開を控えている。個性的かつ強い存在感を持つ注目の若手女優だ。座右の銘は「早寝早起き」「左側を歩く」。

宮崎あおい(みやざきあおい)
1985年11月30日生まれ、東京都出身。01年には初主演作『害虫』で第23回ナント三大陸映画祭コンペティション部門主演女優賞を受賞。その後も映画を中心に女優活動を展開していたが、06年放送の連続テレビ小説『純情きらり』でヒロイン桜子を、08年には大河ドラマ『篤姫』で圧倒的な演技を披露し、ドラマでも存在感を示す。多くの代表作を持つ日本を代表する女優だ。座右の銘は「一生懸命」

※宮崎の「大」は「立」表記、吉田の「吉」は「土」に「口」表記。
(取材・文:磯部正和、撮影:中村好伸)

木村カエラが本作のために書き下ろした主題歌「向日葵」>>


バースデーカード 特集 見どころ映像(1)>>


バースデーカード 特集 見どころ映像(2)>>


バースデーカード 特集 見どころ映像(3)>>


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