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『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』は、業界モノとして同じく出版界を描いた今春の『重版出来!』と類似点が多い。
ヒロインが出版社に勤務する点。書籍は作者だけでなく、編集者・校閲者・デザイナー・印刷・営業など、裏方と呼ばれる人々の努力や連携で成り立っている状況をリアルに描いている点。そして漫画が原作という点などだ。

★地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子 第7話 2016年11月16日放送分>>



サムネイル
石原さとみ, Sep 08, 2016 : 東京都内で行われた花王の柔軟剤「フレア フレグランス」の新商品発表会
写真:MANTAN/アフロ


見られ方も似ている。
視聴率こそ『地味スゴ!』は、7話までの平均が12.2%に対して、『重版出来!』は7.8%なので圧勝だ。ところがデータニュース社「テレビウォッチャー」による満足度では3.90対3.88とまったく互角。『重版出来!』は最後2話が4.0を上回り、10話全体平均が3.93に上がっているので、『地味スゴ!』も今後踏ん張らないと逆転を許してしまうかもしれない。いずれにしても、出版界の裏側を舞台に、表現に関わる仕事の大変さと、前向きに一生懸命仕事をすることの尊さを描くことで多くの視聴者の感動を得ている点で、似た部分の多いドラマと言えよう。

さてここで筆者が注目したいのは、似たようなドラマなのに視聴率に4.4%もの差がついたのかという点だ。
「テレビウォッチャー」で男女年送別の視聴者数を見てみると、M1(男20~34歳)では、実は『地味スゴ!』より『重版出来!』の方が視聴者数は多い。ここは石原さとみより黒木華の方が若い男性に人気があるということではなく、校閲という地味な世界が主戦場なのか、マンガ雑誌の編集部が舞台かの違いのような気がする。
逆に『地味スゴ!』が圧倒したのは女性視聴者数だ。F1(女20~34歳)で1.7倍、F2(女35~49歳)1.4倍、F3(女50歳以上)1.6倍と大差がついた。

女性たちの声を聴いてみよう。

「話の内容はどうあれ、石原さとみの服とか髪形がかわいくて見ていて楽しい」女29歳
「石原さんのファッションが面白い」女32歳
「ファッションを見るドラマ」女59歳
「毎回、石原さとみの洋服のコーディネートがかわいい」女52歳

まず目につくのは、石原さとみのファッションを評価する声だ。「おしゃれ大好き!」「夢のファッション誌編集者を目指し、出版社に入社。なのに、配属されたのは......超地味~な校閲部」「今日もド派手ファッションという戦闘服に身を包み~」とドラマのホームページに出て来るが、制作陣のこの作戦は見事に当たったようだ。
満足度がこれまでで最高となった第7話でも、依然としてファッションを評価する声が一番大きい。

「相変わらず石原さとみの服がかわいい」女29歳
「えっちゃん! おしゃれで参考になった」女31歳
「毎回ファッションが奇抜でおもしろい」女45歳
「ファッションがすてきです」女54歳

ファッション目的の視聴者により、視聴率は確実にかさ上げされている。
加えて奇抜な演出にも高い評価がくだされている。

「コメディチックで面白い」女40歳
「テンポが良く所々笑える要素があって楽しい」女41歳
「軽い感じで見られる」女45歳
「漫画をみているみたいで楽しい」女51歳

実はこのドラマは、『家を売るオンナ』に引き続き小田玲奈プロデューサーが担当している。長くバラエティのディレクターとして勇名をはせてきた方である。もともとドラマ希望だったが、しばらくバラエティ担当となり、その後に念願のドラマ担当となったそうだ。今回の「ファッション誌の編集希望だが、最初は校閲担当」とは、まさに小田Pの経歴に重なる。

そんなバラエティ出身プロデューサーのドラマの常識に捉われない感性が新風を吹き込んでいるようだ。
例えばヒロインが働く高層ビルに、ヴァーチャルに「景凡社」の文字をドデカく入れている。フィクションゆえにリアリティを重視してきた伝統的なドラマの作法からはほど遠い演出だ。

他にも随所に新しい演出が見られる。
例えば第7話の冒頭。校閲部での会話で、北野章太郎作品の説明に「主人公・回道刑事」「謎を解く」「北陸の地図」「北野先生気づかず」などのテロップが次々に出現し、中には簡易アニメのように動きまわるものまである。まるで漫画を見るような演出である。

シーンとシーンの代わり目も奇抜だ。しゃれたファッションに身を包んだ石原さとみの写真に、「Etsuko」「KEIBONSHA」などの大きなテロップが上下に付き、次のシーンを告知するパターンが多用されていた。その意味合いが分かり易いとは言えないが、「オッ!」と心に引っかかる演出であることは間違いない。賛否があるだろうが、テンポやメリハリが出ていることだけは間違いない。

ヒロインが前向きで、ガムシャラに暴走する展開は、『重版出来!』の黒木華も『地味スゴ!』の石原さとみも似ており、これが高い満足度につながっていることは間違いない。加えてファッションやバラエティ的演出が絶妙な調味料として味付けされ、さらに恋愛要素も適度にまぶしてある点が、両ドラマの決定的な違いである。そんな部分でも、視聴率4~5%の差につながるらしい。

さて今後の『地味スゴ!』だが、話の盛り上がりをどこに持って行くのか。その時に感動はどんな質のものとなるのか。『重版出来!』がクライマックスに向け視聴率も満足度も大きく上がっていたので、『地味スゴ!』もストーリー次第で視聴率はまだまだ上がるドラマと言えよう。


文責・次世代メディア研究所

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