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 「M-1グランプリ」で勝ち進む漫才師を人工知能が予想する!? そんなビックリ仰天のプロジェクトが筑波大学で進められている。昨年の「M-1グランプリ」では、決勝に残った8組から最終決戦に進んだ3組中、2組を的中。さらに今年の「M-1グランプリ」でも、「3回戦」から準決勝に勝ち進んだ上位コンビ8組を的中させている(※この取材が行われたのは決勝発表前)。的中率は6~7割というこの人工知能システムとはいったいどういうものなのか? 本プロジェクトを推進する筑波大学 知的コミュニティ基盤研究センターの真栄城哲也准教授に話を聞いた。

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「M-1グランプリ」の勝敗を人工知能で予想 / 筑波大学 知的コミュニティ基盤研究センターの真栄城哲也准教授


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■「人が面白いと感じるものって何だろう」

「漫才の面白さって厳密に定義されていないじゃないですか。人が面白いと感じるものって何だろうと思ったんです。ある人があのコンビの漫才が面白かったと思っても、勝ち進まないこともよくあることですし。実際に面白さを測れるようになったら面白いなと思ったんです。
それが5、6年前で、ちょうどその頃に「M-1グランプリ」が終わってしまった。そこで研究はそのままになっていたんですが。2015年からまた「M-1グランプリ」が復活することになったので、またやってみようと思ったんです。そうしたら昨年、予想が当たったので、(M-1グランプリを放送している放送局)ABCさんから「今年も調べてもらえないか」と連絡をいただいたということです。今回は、準々決勝に出場した97組の漫才データ(3回戦の映像をサンプルとして使用)を解析しました。その結果、準決勝に進んだ28組のうち、評価点が高い上位8組がすべて予想に入っていました」

■ 人工知能が漫才を測定する......そんなことができるの?

「ニューラルネットワークというシステムを使っています。これはもともと人間の脳に似たような人工知能を作りたいという気持ちから出発したシステムで、人間の神経細胞がどういう動きをするのかをまねて作ったものです。過去にあったものと似たもの、例えばこの画像とこの画像は似ているな、というものを探し出すのが得意だという特徴があります。最近出てきたディープラーニング(深層学習)がそれに当たります。囲碁の対局で人工知能が名人に勝利したというニュースがありましたが、あれも同じ技術です」

■ 具体的にどうやるの?

「2001年から2010年、それから復活してからの2015年の決勝戦の漫才データをすべて人工知能に読み込ませて学習させました。決勝戦では審査員が得点を出していましたから、どの漫才がどれくらい評価されたか、ということもデータとして取り込んで学習させて蓄積させたわけです。いい漫才を教えた時にはこれはいい漫才ですよ、ダメな漫才に出会ったらこれはダメなものですよと。ある種、褒められたり叱られたりするパブロフの犬状態で、人工知能がいい漫才を判断できるように学習させていきました。すると、新たな漫才のデータが入力された時に、ニューラルネットワークが、それまでに自分が覚えたものと比較して、その漫才がいいものなのか、悪いものなのか、という点数をはじき出すことができるというわけです」

■ 漫才データって何を分析するの?

「文字放送のために作成された漫才の文字データがあるので、それをABCさんから取り寄せました。その文字データをもとに、実際の映像を見ながら、観客が笑ったところを手作業で記録していき、それをもとに人工知能が分析します。主なチェックポイントはテンポ、観客の反応などを主軸とした6つの項目です。2人がどれだけテンポ良くしゃべり続けたか、適当な長さであるか、なども評価の基準となっています。これはフィギュアスケートでいうところの技術点みたいなものであり、100パーセント、技術的なものだけで測定します。漫才のテーマや時事的なものなど、内容はまったく審査に影響しないため、フィギュアスケートでいう芸術点を測定するわけではありません」

■ 観客の歓声が大きい人気コンビの方が有利なのでは?

「6つの項目を見ると言いましたが、その組み合わせがどのような形がいいのか。それは人工知能が勝手に出してくれるので、解析するのは非常に難しい。例えば観客が絶え間なく笑い続けていればいいというものでもなく、どういう組み合わせならば高得点になるのかといった範囲は非常に複雑で、正直よく分からないんです。ただ精度としては、今のところ6割、7割くらいの確率ですね。例えばスリムクラブなんかは、ひとりはしゃべり方が遅いですし、もうひとりは何も言わない。あれは極端に外した例で、ああいうコンビは人工知能はあまり評価しないです。それから南海キャンディーズも、人工知能は下位に評価してしまう場合があります。その他、パントマイムとか、動作だけで笑いをとるグループもあまりいい評価にならないという傾向があります」

■ 人工知能の今後はどうなるの?

「今は画像検索とか、囲碁の能力が高くなっていますが、まだまだ人間の脳にはかないません。例えば「M-1グランプリ」の審査員がいらなくなるかというと、そんなことはない。例えばその場で会場の反応が良くなくても、今後そのコンビが生き残って、テレビで売れるかどうか、という将来性を審査するということもあるでしょう。でも人工知能にはそれができない。本当に目新しいものには、過去の蓄積がなければ評価できないんです。
ただし人工知能も、技術の進化により、2045年には人間を越えると予想されています。そうすれば演説とかスピーチにも活用できるでしょうし、カラオケで点数が出るように、ユーモアを評価できるようになるのかもしれない。もともとは人工知能で漫才を自動生成できないかというのが目的だったので、今後どうなるのか楽しみです」

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「M-1グランプリ」の勝敗を人工知能で予想 / 筑波大学 知的コミュニティ基盤研究センターの真栄城哲也准教授


真栄城哲也
まえしろ てつや
1992年リオデジャネイロ連邦大学工学部中退(飛び級)。97年北陸先端科学技術大学院大学で博士号を修得。現在、筑波大学 知的コミュニティ基盤研究センターおよび図書館情報メディア系 准教授。

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