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石原さとみ主演の『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』が終了した。

平均視聴率12.4%は、日テレ水10枠としては抜群の数字というわけではない。
ただし今年7月クールと今クール、同枠は新たな路線に挑戦した。"バラエティ化"という新たな演出で、ドラマの可能性を広げた。この意味で、これら2作は大きな意味を持ったと言えよう。

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石原さとみ, Nov 03, 2016 : 「ハリー・ウィンストン名古屋店」のリニューアルオープニングセレモニー(写真:MANTAN/アフロ)


"バラエティ化"とは、ドラマの常識だったリアリティを無視し、バラエティ的要素をふんだんに盛り込み、見やすい面白い番組にしている点を指す。
例えば7月クールの北川景子主演の『家売るオンナ』。「私に売れないイエはない」が口癖の北川は、ダメ部下に「GO!」と命令する際、彼女の顔にクイックズームすると同時に、小さな突風が髪をなびかせた。相手を睨(にら)みつける際にも、ズームやアップサイズへの短いカットの積み重ねが多用され、後光のようにキラリと光まで付加された。
リアリティを追及するドラマなら絶対やらない手法だが、キレを出すため細かいところにまで仕掛けが施されていた。見る側にとっては、刺激に満ち心地よいテンポを感ずる、まるでバラエティのような演出だった。

今クールの石原さとみ主演『地味にスゴイ!』で、バラエティ化はさらに進化した。
高層ビルにヴァーチャルに会社の名前をドデカく入り込ませた。会話の中で言葉に合わせて大きなテロップが画面を次々に埋め尽くす漫画を見るような演出があった。シーンとシーンの代わり目も、しゃれたファッションに身を包んだ石原さとみの写真に大きなテロップが上下に付き、次のシーンを告知するパターンが多用された。
役者の演技だけでなく、ポスプロ時に編集・テロップ入れ・音入れなどでどんどん意味を加え、笑いを取る演出方針である。結果としてリズムやテンポが出て、「視聴者を飽きさせない」つまり「チャンネルを替えさせない」工夫になっていた。これまでドラマが重視してきたリアリティを無視し、バラエティの工夫と知恵をどんどん取り入れていたのである。

この結果、視聴率という量的な評価に加え、「満足度」や「次回見たい率」などの質的評価で、同枠は進化を続けているように見える。データニュース社「テレビウォッチャー」の調査結果を見てみよう。
7月クールの『家売るオンナ』の満足度は3.89、全14ドラマの中で4位だった。そして10月クール、『地味にスゴイ!』は3.92と成績を上げている。このまま行けば、TBS『逃げるは恥だが役に立つ』に次いで2位となる可能性もある。

「(次回)絶対見る」「なるべく見る」を足しあげた「次回見たい率」でも、『家売るオンナ』は88%で5位につけていた。それが『地味にスゴイ!』は88.4%とわずかだが上昇させている。やはり『逃げ恥』に次いで2位となる可能性が大きい。

特に意味があるのはF1(女20~34歳)とF2(女35~49歳)から強く支持されている点だ。
F1の満足度は4.06で、『家売るオンナ』より0.14ポイント上がっている。F2の満足度も3.98で0.07ポイント上がった。両ドラマとも9時5時がメインとなる"お仕事ドラマ"だが、バラエティ化で若年層でも見やすいように仕立て、しかも恋愛だけでなく、仕事を通じて"いかに生きるか"という哲学も絶妙なバランスで込めた分、満足度が上がっている。

実は両ドラマとも、長く朝の情報番組やバラエティ番組を担当してきた小田玲奈氏が手掛けたドラマだった。
バラエティ班の頃に『有吉ゼミ』の"坂上忍、家を買う"シリーズに関わり、人生最大の買い物となる不動産に向き合う客の真剣さや、不動産業の舞台裏に接した体験をドラマに生かしている。
「コメディのふりをした哲学ドラマ」と、出演した仲村トオルはコメントしていたが、「ダメなものをダメと言いきる勇気をたたえ、強いヒロインによって周囲が変わっていくプロセスを描く"成長のドラマ"」を目指していたと小田プロデューサーは語っている。

そんな彼女のドラマ班異動後の2作目が『地味にスゴイ!』だ。
実は彼女自身、ドラマ志望で日本テレビに入社したものの、朝の情報番組やバラエティ番組に回され、13年の歳月を経て、ようやくドラマ班に異動している。つまり『地味スゴ』の河野悦子とまったく同じ位置づけだ。
「どんな小さな仕事でも一生懸命頑張っている人を応援するドラマ」を作りたかったという小田プロデューサー。13年間感じていた「本当はやりたい仕事じゃなくても、本気でやれば自分をほめていい」という思いが反映されたドラマゆえ、見る者の心を撃ち、質的評価が高くなったと考えられる。

ドラマはテーマとストーリーが命だ。要は"何を言うか"である。
しかし同時に、テレビドラマは誰が演ずるか、どう演出するかで視聴率が大きく異なる。要は"どう描くか"だ。

日テレ水10枠は、バラエティ化でこれら両方の要素のバランスを最適化した新たなドラマの境地を開拓し始めている。13年もの間、本来の希望と異なる場所で仕事をした小田プロデューサーの経験と思いをドラマに反映させることで、水10枠に新たな命を吹き込み始めたような気がする。
同枠のさらなる進化に期待したい。

文責・次世代メディア研究所

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