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「GTO」「魔女の条件」や「女王の教室」、「家政婦のミタ」など代表作は枚挙にいとまがない脚本家・遊川和彦が満を持して初監督を務めた映画『恋妻家宮本』が1月28日に公開を迎える。"愛妻家"ではなく"恋妻家(こいさいか)"という造語を用いて大人の恋愛を描いた遊川監督に、初メガホンをとった感想や、ものづくりへの熱い思いを語ってもらった。

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人気脚本家・遊川和彦が初監督を務めた映画『恋妻家宮本』1月28日公開


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■人間の強さより弱さを描いた方が面白い!

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映画『恋妻家宮本』1月28日公開


――初監督作品となりましたが、どういった経緯で監督を務めることになったのでしょうか?

遊川:脚本を書いていた段階で、「これは俺にしか撮れないな」って思っていました。でも自分から「監督をやる」なんて言えない性格なので、「この人がいいかな」なんてプロデューサーと話はしていたんです。でも、こんなにも現場に口を出す面倒くさい脚本家と仕事をする監督も大変だろうなという思いと、原作(重松清の『ファミレス』)と脚本があまりにもかけ離れているので、世界観を正確に監督に伝える作業はとても難しいという思いが相まって、自分でやった方が早いんだろうなって思っていたんです。そうしたらやっとプロデューサーから「やらない?」って声が掛かって(笑)。

――主演を務めた阿部寛さんとは初めてのお仕事でしたが、いかがでしたか?

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映画『恋妻家宮本』1月28日公開


遊川:脚本を書いている時点では、面白いものを作ろうという思いしかないので、実はキャストまでは決めていなくて。ただ出来上がって、誰がいいかと考えたとき阿部さんはベストでした。物語って人間の強さを描くより、弱さを描いた方が面白いと思うんです。弱さを克服して懸命に生きていくのが人間。その意味で、阿部さん自身も弱くて格好悪いところを見せるのが芝居だと思っている人。さらに自分の芝居を高めたいという向上心もある。大きな体で気の弱さを演じるコミカルさもありますよね。

――天海祐希さんの主婦役も新鮮でした。

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映画『恋妻家宮本』1月28日公開


遊川:天海さんに、誰も主婦役をやらせようとはしないと思うんです。でも強さが前面に出ている方である一方、弱さが魅力だというのは分かっていたのでピッタリだと思いました。天海さんとも「新しいことにチャレンジしていきましょう」とよく話をしていたんです。

■一生懸命やり続ける持続力を持てる人間が才能のある人

――「映画監督になるのが夢だった」と完成披露試写会で話していました。監督として臨んだ現場はいかがでしたか?

遊川:基本的には楽しいし、夢が叶(かな)ったので頑張らなければという思いです。ものづくりは大変だけれど、それを乗り越えたあとに喜びが待っているということをしっかり分かっているすてきなキャストやスタッフと一緒の現場だったので幸せでした。

――新しい挑戦にはリスクもつきものですが。

遊川:失敗してもいいから新しいことにチャレンジすることが大事。今回失敗しても、またやればいい。一生懸命やったなら、それは人に伝わるんです。一生懸命やり続ける持続力を持てる人間が才能のある人。人って怠けたり、楽をしたくなるんだけど、そうやっていると人には見放されてしまうんです。この仕事って、老若男女が目標に向かって一つになれるのが素晴らしい。そういうことに携われる喜びをかみしめてほしいと思って、口うるさく言ってしまうこともあるんですけれどね(笑)。

■「僕は人を幸せにするために仕事をやっている」と断言できる

――現場では問題が起きないように摩擦を嫌う傾向がありますよね。

遊川:くさいかもしれないけれど、この仕事なんのためにやっているのっていう問いに対して「僕は人を幸せにするためにやっている」と断言できます。でも「自分のためにやっています」とか「お金のためにやっています」って意識の人もいるのは事実。そこの考えが違うと「もう結構です」と言ってしまうから問題が生じたりするんです。最終的には見てくれるお客さんがどう思うのかが大事。楽しんで見てくれることを追求するためには、我慢することも必要だし、そのためには、問題が起きてしまうかもしれなくても、言いたいことをぶつけ合わないとダメだと思うんです。

■"恋妻家(こいさいか)"と愛妻家"との違い

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映画『恋妻家宮本』1月28日公開


――本作では"恋妻家(こいさいか)"という造語を使っていますが"愛妻家"との違いはどうお考えですか?

遊川:"愛妻家"って自信と余裕を持って安定している感じ。今の日本に"愛妻家"なんているのかなって思います(笑)。一方"恋妻家"は、アップダウンがあるというか、妻を嫌だと思うときもあるし、好きだと思うこともある。安定していない大人。こういった感情を認識することが大事だと思うんです。何年結婚生活をしていても、分からないことってありますよね。特に女の人って、旦那さんに対しても隠していることってあると思うんです。

――この映画でも妻の離婚届を見て夫はパニックですよね。

遊川:そうですよね。引き出し一つ開けただけですごい発見や驚きがある。そういうことがきっかけで「なぜこの人は自分を選んだんだろう」って考えることもあるだろうし、相手を思う新たなモチベーションになるし、いとおしくなる。妻の弱さを一つ知ることで、守ってあげたいと感じたりするんだと思うんです。

■僕も61歳だけれど全然大人じゃない

――若い世代では味わえない大人の恋愛が描かれている?

遊川:でも、50代が大人かと言えば違うと思うんです。僕は61歳ですが、全然大人じゃないですから。いつまでたっても子どもです。年を取ると、いろいろなことが分かっていると勘違いしてしまうだけで、基本的には未熟なんです。ただ、年を取ると、若いころには悩まなかったことを悩み出すんです。

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人気脚本家・遊川和彦が初監督を務めた映画『恋妻家宮本』1月28日公開


――初監督作品が完成しました。次作への意欲も増しましたか?

遊川:もちろん。でも監督をやったことで「演出家とはなんぞや」と考えましたね。自分を含めて演出部門はもっと勉強しないといけないと痛感しました。役者やスタッフの何倍も勉強して引っ張っていかないとダメだと思いました。勉強すれば人間って成長できるんです。芝居も演出も永久に答えなんて出ない。だから面白い。しんどいですが、成し遂げたときの達成感は得られると思うんです。

――これまでオリジナル脚本をたくさん世に送り出してきました。今回は原作がありましたが、オリジナルへのこだわりはありますか?

遊川:自分が何を考えて、どう生きてきたかを伝えるのがものづくり。遊川和彦を分かってもらうには、自分なりに必死に考えてオリジナリティーを出すのは当たり前なんです。どんどんオリジナル作品を作っていきたいと思っています。

――座右の銘をお聞かせください。

遊川:「分かっちゃいるけどやめられない」かな。自分の性格だったり、仕事のやり方だったり、問題があるって分かっているけれどやめられないんですよね。それが人間の性。人にはいろいろ言われても、自分では自分を好きでいたいですよね。頑張っていきたいです。

(取材・文・撮影:磯部正和)
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遊川和彦(ゆかわ・かずひこ)
1955年10月24日生まれ。東京都出身。広島育ち。テレビ制作会社のディレクターを経て、87年にテレビドラマ「うちの子にかぎって...スペシャルⅡ」で脚本家デビュー。03年放送の「さとうきび畑の唄」の脚本で、文化庁芸術祭大賞(テレビ部門)を受賞。その後も「女王の教室」(05年)、「家政婦のミタ」(11年)など数々の人気ドラマの脚本を手掛ける。そして『恋妻家宮本』で念願の映画監督デビューを飾る。座右の銘は「分かっちゃいるけどやめられない」。


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