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今年1月スタートの新ドラマ初回視聴率は、今のところ以下の順位となっている(1月23日時点)。

1位:14.2%『A LIFE~愛しき人~』(TBS)。
2位:13.8%『東京タラレバ娘』(日本テレビ)。
3位:12.9%『スーパーサラリーマン左江内氏』(日テレ)。
4位:11.8%『嘘の戦争』(フジテレビ)。
5位:11.2%『視覚探偵 日暮旅人』(日テレ)。
6位:11.0%『就活家族』(テレビ朝日)11.2%。
7位:10.9%『下剋上受験』(TBS)と続く。

サムネイル

堤真一/Shinichi Tsutsumi, May 13, 2015 : NTTドコモの新イメージキャラクターに起用(写真:MANTAN/アフロ)


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ちなみに、これら初回視聴率とドラマの主要な役者を使った番宣との間には相関関係があるようだ。
ドラマ初回前1週間で出演した番組数、うちGP帯の番組数、放送当日の番組数を列挙すると、以下のような関係になる。
                
1位:『A LIFE』 木村拓哉 :1週間出演9本:うちGP帯3本:当日1本
2位:『タラレバ』 大島優子:1週間出演9本:うちGP帯3本:当日4本
3位:『左江内氏』 堤 真一 :1週間出演12本:うちGP帯4本:当日3本
4位:『嘘の戦争』 草彅 剛 :1週間出演12本:うちGP帯2本:当日3本
5位:『視覚探偵』松坂桃李 :1週間出演13本:うちGP帯1本:当日4本
6位:『就活家族』 三浦友和 :1週間出演7本:うちGP帯1本:当日3本
7位:『下剋上~』阿部サダヲ:1週間出演8本:うちGP帯4本:当日1本

以上のように初回視聴率が二桁に乗った上位番組は、いずれもバラエティなど一般番組で、ドラマ主役たちの露出に努めていた。ところが初回が一桁に終わった『大貧乏』では、小雪の一週間以内の出演番組・GP帯・当日は、3本・1本・1本に過ぎなかった。8.1%だった『嫌われる勇気』の香里奈も、6本・2本・0本とやや少なめ。9.8%『カルテット』の松たか子・満島ひかり・高橋一生・松田龍平も、一週間以内出演番組が各4本・3本・3本・4本で、GP帯や当日は全員0本だった。視聴率二桁ドラマと一桁ドラマには、明確に俳優の直前の露出頻度との間に相関関係がある。

これら初回視聴率好調組の中にあり、本来の実力以上に健闘したのは『スーパーサラリーマン左江内氏』だったようだ。本・出演者・話題性のいずれもソコソコな感じにも関わらず、直前に最も大量の露出を果たし、おおかたの予想以上の高視聴率を叩(たた)き出した。

普段硬派な演技を魅せる堤真一が、エプロン姿で皿洗いをし、スーパーマンのような変身スーツを着るというギャップの大きさに笑った人は少なくなかっただろう。
去年10月クールの『逃げ恥』恋ダンスを本編にパロディで入れるなど、"何でもアリ"のぶっ飛んだ姿勢も好感が持てた。さらに、『逃げ恥』の二匹目のドジョウを平然と狙いに行く三代目JSBの歌に合わせたエンディングダンス等々。

視聴率向上を狙った番組宣伝作戦を含め、スゴイ努力には頭が下がる。
そしてもう1点、目立たないが忘れてはいけのが、ジェットコースターのような展開をしっかり支えたドラマ音楽の存在だ。

手掛けたのは瀬川英史氏。劇中音楽を知り尽くした、腕力とこだわりがスゴイ!
オープニングから、すでに実力発揮だ。
ポップアートに仕上げられたスタッフロールの音楽は、アメリカ映画のヒーローの象徴のようだった。シンセサイザーを駆使し、ジャズベースのマルチなジャンルの音楽提供が、大きな強みとなっている。

そもそもドラマの原作・藤子不二雄『中年スーパーマン左江内氏』は、1977年?1978年の連載だった。この頃のジャズ界は、マイルス・デイビスやハービーハンコックがモダンジャズを発展させた全盛期。ハードバップからフュージョン、アフロキューバン、ラテンジャズなどが生み出されていく、とてもパワフルな時代だった。
瀬川氏の音楽には、ブラスバンドのスィングするビッグバンドスタイルのジャズから、ハービーハンコックのキーボードでエフェクターを使用したエレクトリックモダンなジャズが、見え隠れする。

マンガのキャラクターを生かしたコミカルな効果音も、思い切りが良い。
78年のアメリカ映画の「スーパーマン」を思い出させる、シンセのオーケストラで迫力を出す効果音も、お手のものだ。
デビッド・ボウイやQueen を思わせるような、エレキギターの効いたドラムベースのロックで、ドラマに個性豊かな色を添える。
原作のアイデンティティをリスペクトした音楽で、2017年のドラマに1978年を見事に復刻させているのである。

各シーンと音楽の関係も特筆に値する。
2話目では、左江内(堤真一)が会社に遅刻しそうなところ、スーパーマンスーツをくれた謎の老人(笹野高史)とのシーンは、チョッパーという、ベースの弦をたたきながらインパクトを与える奏法で、フュージョンのグルーブ感を出している。
月島の街にところ変われば、懐かしいハーモニカがメロディを歌い、もんじゃ焼きを食べに入れば、キューバのスローなダンス、チャチャチャが流れる。こちらまで、もんじゃが食べたくなってしまう。
オフィスでは、ファンキーなハービーハンコック風なチョイスも、軽快で楽しい。
刑事が月島で張り込めば、ジェームズボンドが出てきそうだ。
街を荒らす犯人が現れれば、ハードロック、そして犯人を追えば、ハリウッド映画のカーチェイスシーンの迫力を思わせる。

シンセサイザーを得意とする、瀬川氏のマルチな音楽の引き出しと、コミカルなストーリーを色付けるグルービーな音楽チョイスのセンスが、レトロな藤子不二雄マンガを現代に復刻させ、ノリの良いリズミカルな作品に仕上げているのである。
シーンに合わせたサウンドを提供する安定したテクニックと、原作マンガのレトロな感じと音楽をリンクさせた、熟察されたジャンル選びが、音楽のクオリティをさらにアップさせていた。

ただしドラマには、かなりのリスクが内在する。
とにかくハチャメチャなギャグコメディーは、好き嫌いが分かれる可能性が高い。しかも極端な演出に、飽きてしまう視聴者が出現する可能性もある。
現に2話目の視聴率は9.6%と、初回より3.3%も落ちている。初回では驚きの連続で最後まで見てしまった視聴者の中に、2話目で冷めてしまった人が一定の割合でいた可能性が高い。強い刺激は、さらなる刺激を与え続けないと、見ている人々に飽きられてしまうということなのではないだろうか。

いずれにしても、万人にも分かるコミカルな展開と演出に、「作品の復刻と、音楽のタイムトリップ」という音楽好きには痺(しび)れる音の世界を提供している本作品。
リスキーなところを攻めているが、あなたはどう感ずるだろうか。
まだ見ていない方は、ぜひ自分の感性を確認するには面白い作品である。一読(一見)をお勧めしたい。

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文責・パリ帰りのピアニスト シャロンヌ
    次世代メディア研究所

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