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初回視聴率こそ二桁に届かなかったが、『カルテット』の視聴者層には特徴がありそうだ。
普通ドラマの初回に対して、第2話は1~2割数字が落ちることが多い。試し見の人が初回に多く、2話で辞めてしまうケースがあるからだ。
今クールでは、『就活家族』が2話で15%数字を落とした。『嫌われる勇気』は21%、『スーパーサラリーマン左江内氏』26%、『大貧乏』43%の下落である。

そんな中で『カルテット』はほぼ横ばいだった。2話で辞めた人はもちろんいただろうが、その流出を補う新規の視聴者がいたからだ。その原動力はカッコイイ、カルテットの音楽だった可能性が高い。

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満島ひかり, Jan 09, 2017 : ドラマ「カルテット」(TBS系)の舞台あいさつ(写真:MANTAN/アフロ)


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カラオケボックスで偶然知り合った男女4人が、軽井沢で弦楽四重奏『カルテット』を結成し共同生活を始める。
東京銀座の路上でチェロを弾いていた世吹すずめ(満島ひかり)は、謎の女性の巻鏡子(もたいまさこ)に、「この女性と友達になってほしい」と仕事を頼まれる。
その女性とは巻真紀(松たか子)。カルテットの中では、ヴァイオリンを弾いている。
第2ヴァイオリンを弾くのが別府司(松田龍平)。4人が暮らす軽井沢の別荘は、世界的指揮者の祖父の所有である。
ヴィオラの家森諭高(高橋一生)は、美容室で働くが資格を持っていないので、35歳にしてアシスタントをしている。

4人は軽井沢のレストランで、カルテットの演奏を始めるようになる。奇妙な共同生活のスタートである。

このドラマの音楽は、QUARTET PAPAS という弦楽四重奏のグループと、fox capture plan が手がけている。
ドラマ冒頭、ショッピングセンターで演奏したのはドラクエのテーマ。誰もが知るゲーム音楽を美しい4重奏に仕上げている。
レストランで演奏したスメタナ作曲のモルダウは、オーケストラの原曲を4重奏にアレンジされたもので、オーケストラの迫力に負けない、力強い演奏が心に響く。

一方、fox capture plan は、シーンに合わせたドラマ音楽を提供しながら、アーティストとしての存在感があるグループだ。
別府(松田)の運転で別荘に向かう中、4人の出会いの回想シーンに、軽快なジャズロックが流れる。ただのリズムベースにハーモニーを乗せただけのサウンドではなく、ドラム・ベース・ピアノの個性が絡み合った格好良さがある。

カルテット活動開始のシーンでは、ギターがリズムを刻み、クラリネットがメロディを奏でるジャズマヌーシュという、ジプシースウィング風の音楽も新鮮みがある。
カルテットのメンバーそれぞれが思いをはせる森の中のシーン。塵(ちり)と枯れ葉がキラキラ舞いながら、エフェクトをかけたピアノの音がハーモニーを響かせる。幻想的で叙情的な世界は、どこまでも美しい。

第2話では、おとなしめではあるものの、ハイセンスな彼らの世界を魅せてくれた。
巻真紀(松たか子)の義母、巻鏡子に雇われているすずめ(満島ひかり)。ICレコーダーで録音した真紀と別府(松田龍平)の会話を巻鏡子に渡すシーンでは、シャカシャカとエッジの効いたドラムとベースでJazzのイントロでスリリングな高揚感が新鮮だ。

ライブレストランの「ノクターン」では、第1話のクラシック音楽に変わり、アイリッシュ民族色の強い音楽で、木靴を履いた東欧の民族衣装が浮かび上がり、躍動感のある楽しい演奏に、観客も思わず手をたたく。

カルテットの4人が、タンブリンの単音がドラムを誘い、シンプルなメロディモチーフを背景に、家で夜食を食べながら"男女の言葉のやりとり解説"をする。
役者間の空気感、独特なテンポを決して邪魔しない、シンプルで選び抜かれた、ひとつぶずつの音に自然と耳を傾ける。

夜の買い出しに出かけたコンビニの前での、アコーディオンのスローなソロも、映画のワンシーンのようだ。
シンプルな音楽ほど、作曲するのは難しく、作曲家のセンスが問われる。「たったのこれだけ」で勝負する。セリフと空間を生かすため、ムダを削ぎ落とし、洗練された音楽が、カルテットを魅惑の世界に引き立てている、と言っても過言ではないだろう。

しかし、何より一番カッコイイのは、エンディングロールの完成度の高さと言えるだろう。
椎名林檎が作詞作曲をプロデュースした、『大人の掟』をカルテットの4人が歌う。
ヴァイオリンとヴィオラの刻みに、ささやくようにヴォーカルが入り、アンティークな洋館で大人のエレガンスと怪しげな世界が、魅力的で、松たか子の歌唱力の高さが、クオリティをアップさせている。

ドラマ音楽が、映像用の効果的なBGMに留まらず、アートとしての音楽が独立して存在し、見ている者に「サウンドトラックがあればぜひ欲しい」と思わせる。
そのクオリティに達しているがゆえに、映像の上にいつも効果音があるという怠惰な演出ではなく、音楽がない時間にこそ、役者のセリフと演技の空間に集中できる出来になっている。
ポピュラーなアレンジを使用して万人ウケを決して狙っていない。こだわりの音楽スタイルがあるからこそ、『カルテット』が引き立つ出来になっている。
この音楽にハマっている人は少なくないはずだ。
爆発的に視聴者が増えるか否かは分からないが、音楽のように静かにドラマの支持が広がって行く予感がある。騙(だま)されたと思って、一度この静謐(せいひつ)な音の世界を堪能してみていただきたい。

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文責・パリ帰りのピアニスト シャロンヌ
    次世代メディア研究所

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