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「もし~だっタラ」「あの時~していレバ」など、時間を巻き戻してやり直したい人生の時はいくつもある。その"タラレバ"の呪縛を解き放ち、前向きに次の可能性を切り開けるか否かが勝負の分かれめ......

30歳独身、売れない脚本家の鎌田倫子(吉高由里子)。
ネイリスト・山川香(榮倉奈々)と、父の居酒屋の看板娘・鳥居小雪(大島優子)は親友。
何かある度に「女子会」とかこつけて、小雪の店、"呑んべえ"で酒飲みを催してきた。
この3人の"タラレバ"を軸に物語が展開する、話題のドラマ「東京タラレバ娘」。

サムネイル

吉高由里子/Yuriko Yoshitaka, Jan 23, 2014 : 「第25回日本ジュエリーベストドレッサー賞」授賞式(写真:MANTAN/アフロ)


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■日テレ水10の新たな路線

日本テレビ水曜10時枠では、北川景子主演の『家を売るオンナ』や石原さとみ主演の『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』と、がアラサー女子の奮闘を描きながら、職業を描くことにもかなりウエイトを置いていたことで、若年層だけでなく、中高年も取り込むための作戦だったと思われる。ところが今回は、圧倒的にアフター5にスポットを当て、色恋に焦点を絞ってきている。F1やF2狙いに徹した、従来とは異なる作戦のように見える。
しかも『逃げるは恥だが役に立つ』のような、若年女子の新しい生き方にチャレンジしているようにも見えない。同世代の最大公約数たる"結婚願望"に、やや乗り遅れ気味のアラサー女がどう対処するのかを楽しむバラエティ・ドラマ路線で、しっかりターゲット層を勝ち取ろうとしているようだ。

■ドラマ音楽の位置づけ

原作は東村アキコの「東京タラレバ娘」というマンガ。
ドラマでもマンガらしい非現実の世界が見え隠れする。ゆるキャラのタラとレバが、倫子の心の声にアドバイスするが、マンガの世界に一瞬戻るような演出だ。
この現実とマンガの世界を行き来したり、バラエティ・ドラマのテイストを出したりしながら、ドラマとしての完成度をどう上げるか。ここで音楽が、縁の下の力持ちとしてかなり頑張っている。

担当は、アニメ・ゲームを初め、映画や多数のドラマ音楽で活躍中の菅野祐悟氏。オーケストレーション、ロック系のJ-POPを得意とするのだろう。アカデミックな技術を持ちつつ、電子系のロックやテクノ、ポップスと幅広く多才な音楽を提供している。

マンガのイメージを壊さない軽快さと、心情を演出する優しいメロディも、シーンの雰囲気作りも、手のひらの上で転がしているように、うまくまとめられている。
倫子が振られてしまう場面や、"キンパツ男"にバッサリと斬られるシーンなど、倫子の心が傷つく時、エレキギターのエッジの効いた音楽で演出するのは、意外性があって面白い。

そもそもドラマ音楽は、いわゆる「基本形」があって、必要最低限のジャンル分けした音楽が用意されていることが多い。
例えば迫力感やスピード感など、場面の環境を演出する音。登場人物の心情を表すセンチメンタルなメロディ。効果音として存在するインパクトのある雑音などだ。
これらを使い分けることで、ドラマ音楽はじゅうぶん成り立つ。
だが、作曲家が書いた作品として魅力的なドラマ音楽とは何か?
鳴る音すべてのどこかに、ミュージシャンとしてのメッセージや個性があるのではないだろうか。

■1話と2話で微妙に変化した音楽

第1話で菅野氏は、まとまりのある、シーンに合わせた音楽を提供し、ドラマ音楽の王道を見せつけていたような気がする。
ところが第2話では、"音楽の構成"で面白い工夫が加えられている。
例えば、倫子(吉高由里子)が、香(榮倉奈々)と小雪(大島優子)と一緒に、回転寿しでランチをしながら、「"キンパツ男"のKEY(坂口健太郎)が実はモデル」という事実を知らせるシーン。KEYを彩る音楽にはROCKが使われる。
後でKEYが、倫子の前に偶然現れる時も、やはりROCK。

香が元カレと別れたことを後悔する時や、倫子が今までの自分を振り返り後悔する時は、一転して音楽はヒーリング音楽的なメロディに代わる。

香と元カレの涼ちゃん(平岡祐太)の幸せな過去をめぐる回想シーン、再会した2人が惹(ひ)かれ合い、涼が香を電話で誘うシーンでは、ヒーリング系の音楽にオーケストラが加わり躍動感を増すメロディが流れる。

倫子がドラマの脚本担当から降ろされてしまい落ち込む時や、仕事も恋も失敗し落ち込む時は、ピアノソロで心情に染み入るような演出になっている。

2話では、登場人物のキャラクターを音楽にリンクさせ、リピートすることで、ストーリーの中の人物像がクリアに浮き彫りになった。
倫子と香と、2人の別ストーリーが平行して展開するため、見る側の意識は拡散しがちだ。ところが音楽が、「落ち込み後悔する」心情を共通点と捉え、あえて同じ楽器を使用し、しんみりしたメロディで、共通点が共感に変わるように工夫されている。

役者とシーン別に、音楽を固定し使い分ける。
実はこれは、古典芸能の舞台によく見られる手法だ。
そしてラストシーンで、倫子も香も、それぞれの恋愛が意外な方向に急転する。
そこへエンディングテーマのイントロを、上からスドーン! と挿入することで次話の期待感を一挙に醸し出す。

初回では、基本を外さない音の使い方が際立った。ところが第2話では、古典的な構成に秘められた細やかな工夫が見えるようになっていた。
第3話以降、作曲家の知恵とテクニックに、ますます期待が持てるドラマと言えよう。

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文責・パリ帰りのピアニスト シャロンヌ
    次世代メディア研究所

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