ここから本文です

放送中のテレビ朝日系ドラマ「就活家族~きっと、うまくいく~」(毎週木曜21時~)は、三浦友和を主演に、全員が就活することになってしまった家族を描いた、異色のホームドラマ。第3話では、富川家の家族4人が困難に直面し、次第に家族関係にもひびが入り始める。洋輔を中心に、親×子供、夫×妻、自分×仕事を巡るそれぞれの関係が、徐々にバランスを崩し始めたのである。

サムネイル

三浦友和, Jan 04, 2017 :ドラマ「就活家族~きっと、うまくいく~」制作発表記者会見(写真:MANTAN/アフロ)


「就活家族ーきっとうまくいくー」最新話を無料配信中>>


日本鉄鋼を辞めた富川洋輔(三浦友和)は就職活動がうまくいかず、苦肉の策で川村優子(木村多江)に頭を下げ、叔父の会社を紹介してもらう。採用条件は「経営コンサルタントの統括」と待遇は良いが、会社を辞めたことも、再就職のことも、妻の水希や家族には言えずにいる。

娘の栞(しおり)(前田敦子)は外商部に異動。売り上げを伸ばしたい一心で、セレブが集まる婚活パーティに参加してみた。ところが病院御曹司の医師に出会い、高額な取引きを交換条件に、体の関係を強要されてしまう。

就活に苦戦していた息子の光(工藤阿須加)は、ようやく内定をもらった会社が有名なブラック企業だった。そのため父の洋輔に入社を反対される。努力を理解してもらえないと思った光は、父にその思いをぶつけ、親子の関係に亀裂が入ってしまう。

妻の水希は、学校で生徒の内申書を取り間違えるミスを犯してしまった。不登校になってしまった生徒宅を訪れ、立ち直らせようと説得するが、生徒の父から突き付けられた条件は、同等の辱めを水希も体験するという究極の内容だった。

■「ハリウッド仕込みのアレンジ」の意外性――揺れる拍子が特徴

家族崩壊の始まりを描くドラマの音楽を手掛ける一人は、ゲーム音楽、バンド編成やオーケストラ編曲まで幅広くサウンドプロデュースする江口貴勅氏。そしてもう一人は同じ事務所に所属する穴沢弘慶氏。「ハリウッド仕込みのオーケストラアレンジ」が評判のアメリカ帰りの若手クリエイターだ。

今回の第3話では、不協和音が出始めた富川一家の状況を、二人は音楽の拍子の変化で見事に暗示している。

洋輔の再就職先での新しい出発となるシーンでは、新たな世界が広がるかのように、3拍子のリズムに躍動感あるオーケストラが、風を切って飛んでいくようだ。

ところが洋輔が川村優子から、意味深に時計をプレゼントされる時、ハリー・ポッターのテーマを思わせる、グロッケンのメロディが、不吉な予感を醸成する。

続いて、このメロディに拍子の違う3拍子のアコーディオンをかけ合わせ、2つのモチーフが絡み合い、独特の雰囲気を醸し出す。この音楽で、洋輔の失業中の公園仲間である天谷五郎(段田安則)から、家族に失業を隠すコツを教えてもらうシーンを演出する。

さらに、おでん屋でのワンシーンでは、変拍子と言って、1曲の中に、3拍子と4拍子を混ぜ込み、"不安定な違和感"を個性とした音楽で、失業中の2人のステイタスを表現しているようで、面白い。

この「掛け違えたボタン」のような拍子のズレ感を、栞の営業用婚活パーティシーンでも用いている。

光と父洋輔の会話の中では、2人の意見の交差で、関係に亀裂が入り始める瞬間、スペイン音楽印象派のような暗さを帯びた美しいハーモニーが、バラバラとこぼれ落ちる。

ラストシーンでは、水希が生徒の部屋で、罪償いと覚悟を決め行動に出るとき、カーペンターズのヒット曲、『雨の日と月曜日は』の美しいメロディをピアノソロアレンジが流れ、胸を締め付けられる。
そして、挿入歌にもなっている、林部智史のカバーソングへとつながる進行は、アレンジ力だけでなく、構成も塾察された実力で、高い説得力には脱帽せざるを得ない。

■揺れる拍子は崩壊と再生の暗示?

ドラマ音楽の中では頻繁に使用される4拍子。しかし二人はこの安定したリズムを採らず、冒頭から3拍子を選ぶ。
さらに、この2つのリズムを組み合わせて、新しいテイストを生み出す。奇数と偶数の掛け合わせは"想定外のぐらつき"を見せ、崩れ落ちていく家族の安定をみごとに侵食していく。

他にも、アイリッシュフィドルというバイオリンが奏でるアイルランドの民族音楽を大胆に用いて、"異様な風"を吹かせるアイデアは、面白い。

悲劇的な家族の崩壊は、はっきり言って救いがない。ところがパターンや形式にとらわれない自由な発想で演出する音楽が、窮地に追い込まれていきながらも、なぜか次回の展開に期待を抱かせる"前向きなパワー"を秘めているところが奥が深い。

崩れゆく富川家の"この先"と、「ハリウッド仕込みのアレンジ」の意外性に、目が離せそうもない。

「就活家族ーきっとうまくいくー」最新話を無料配信中>>


by : パリ帰りのピアニスト シャロンヌ

Facebookコメント
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。
PR

最新記事

rss

もっと見る

本文はここまでです このページの先頭へ