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日本テレビの土曜9時枠は、現実にはあり得ない物語を取り上げることが多い。
10代とその親世代の随伴視聴(一緒に見ること)を視野に入れた番組制作をしているため、多くの人の興味をひく極端な物語を採用することが多いからだが、実はドラマとして成功するのは意外に難しい。

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Kyoko Koizumi attends a press conference on January 27, 2016.(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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例えば過去10回で平均視聴率が二桁に乗ったドラマは2本しかない。
亀梨和也主演『怪盗 山猫』の10.9%と、丸山隆平主演『地獄先生ぬ~べ~』の10.2%だけだ。
ちなみに番宣が巧みな日テレは、ドラマ初回を二桁に乗せるのはお手の物。シリーズ平均で苦戦する土曜9時枠でも、初回が二桁に乗ったドラマは10本中7本ある。ところが第2話でも二桁を維持できたのは2回しかない。浮世離れしたドラマが見られ続けるのは、容易ではない証拠と言えよう。

■ドラマのなかには多彩なパロディが満載

そんな土曜9時枠の最新作『スーパーサラリーマン左江内氏』は、初回が12.9%で始まり、2~4話が9.6%・9.2%・8.9%。同枠では6~7%台に落ちるドラマが多い中、大健闘していると言えよう。
最大の力は「捨て身覚悟の何でもアリ!?」パワーだろう。
第4話でも、、話題のネタをパロディでおもしろおかしく演出している。

例えばエンディングテーマのダンスは、『恋ダンス』のパロディ。こちらは、マネできない本格的なダンスではあるが、全国的にヒットし、紅白歌合戦にまで登場した『恋ダンス』。その話題性にノれるという計算だ。

冒頭のシーン。巡査部長小池郁男(ムロツヨシ)が、海で遭難しかけたカップルを助けたとする場面。相変わらずのおふざけ演出だが、『海猿』をモチーフにしている?

藤子不二雄の懐かしのマンガ『パーマン』に出て来る「コピーロボット」まで登場している。

そしてラスト。コンペのための設計図などを隠した池杉が左江内氏に謝罪したシーンでは、左江内氏が『ハンドパワーです』と一言。これも一斉を風靡(ふうび)したMr.マリックの名言だ。やはりドヤ顔で説明する親の顔が目に浮かぶ。

■定着の中で"弾け"を狙う役者たち

スーパーサラリーマンの変身も定番になり、音楽のテーマもパターンが定着してきた。
毎週ドラえもんを見ているように、「毎回パターンは同じ」だが、藤子不二雄に許される特権のごとく、これはこれでおもしろい。漫画家が一貫したスタイルを貫いたことにより、獲得した権利のようなものだ。

使用される音楽も、ハービーハンコックのファンキーミュージック、ハリウッドヒーロー系映画のオケアレンジ、そしてサルサやチャチャチャを取り入れたアメリカナイズな音楽だ。すっかり定着してしまった。

ただし、これら定着の中で弾けようとしているのが役者たちの演技だ。
登場人物が脚本以上に、キャラを前に出す演技で、コミカルな雰囲気を色付けしている。
左江内氏を演じる堤真一や、妻円子役の小泉今日子の捨て身な演技も、俳優のイメージとは裏腹に意外性があって面白い。
万年フリーターの米倉(佐藤二朗)と左江内氏の掛け合いも、クセありだがツボにはまる。
佐藤のアドリブ能力の高さ、思わずフッと笑った堤真一の素の笑顔を見られる「おトク感」も見逃せない。
高い演技力あってのコミックが、エンターテインメントとしての質を保っていると言えよう。

■ドラマのテイストと視聴者の関係も定着か?

こうした展開は、実は視聴者の反応の仕方にも見事に表れている。
視聴率は2話目で9.6%へと急落した後、下がり方はかなりゆっくりになっている。"内容のないストーリー""バカバカしい展開""アクの強い演技や演出"に拒否感を示した視聴者が一定割合逃げた後、この世界にハマった人々も少なくなく、見られ方が安定してきた可能性がある。

「バカらしいストーリーであるが、そこが面白いと思う」男44歳
「ばかばかしいけど、おもしろい」男64歳
「途中から旦那も見ていましたが、ツボにはまっていました」女39歳
「何にも考えずに見られる」男55歳

こうした声は、満足度や次回視聴意向などにも反映されている。
データニュース社「テレビウオッチャー」の関東2,400人の定点調査では、初回の満足度は3.49とドラマの平均値より低かった。ところが3~4話は、3.71~3.74と平均を超えてきている。
次回視聴意向でも、初回の見たい率(絶対見る、なるべく見るの合計)は71%で、逆に見たくない率(たぶん見ない、絶対見ないの合計)は、15%超だったものが2%にまで減っている。

しかも視聴者層を見ると、日テレの狙い通り、10代とその親の随伴視聴にある程度なっているようだ。
第4話で言えば、F2(女35~49歳)で4割を占め、しかも好意的な見方の人が多かった。

「コピーロボットの作者と同じ作者とは知らなかった。子供が喜んでみている」女40歳
「今クールで一番おもしろいドラマです!今回も奥さん小泉今日子さんのはちゃめちゃっぷりが面白かった!」女37歳
「ゆるくて好き。のんびり見られます」女39歳
「妻と夫のやり取り、夫と上司のやり取りがおもしろかった」女42歳

いずれも高い満足度と次回への強い視聴意欲に票を投じた人々だ。
「バカバカしいけど面白い」「気楽に見られる」「ちょっと考えさせられる部分もある」などのバランスが、一定程度の人々の気持ちをつかんでいるようだ。

「初めて見た。意外と面白い!」女31歳
「堤真一さんの演技が面白くてまたみたい」女41歳

第4話から初めて見始め、最高得点を投ずる人々もいる。
ドラマに感動を求めるのではなく、ゆったりくつろいでボ~ッと楽しみたい方にはぴったりの番組と言えそうだ。爆発的とまでは行かないまでも、中後半で静かにブレークしていく可能性もありそうだ。

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文責・パリ帰りのピアニスト はたじゅんこ
   次世代メディア研究所

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