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綾瀬はるか演じる女用心棒バルサの活躍を描き出し、世界中で愛される「精霊の守り人」シリーズ。全22話を3年かけて実写ドラマ化する大型プロジェクトのシーズン2が現在放送中である(NHK 土曜・後9時)。お尋ね者となった女用心棒バルサは不思議な少女アスラとその兄チキサと出会い、そして新ヨゴ国の皇太子となったチャグムは波乱の旅路につく――。

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VFXビジュアルディレクター 丹治匠氏 NHK大河ファンタジー「精霊の守り人 悲しき破壊神」(土曜・後9時)


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広範なロケとVFXを組み合わせたイマジネーション豊かな描写と迫力のアクション、ロマンあふれる壮大なスケールのドラマが話題になった本作。シーズン1に続き、VFXビジュアルディレクターを務めるのが、大ヒット作『君の名は。』ほか新海誠作品の美術監督としても知られる丹治匠氏。原作や脚本から想起されるイメージを具現化する大きな役割を果たしている。そこで今回は丹治氏に、本ドラマにおける製作工程、アニメと実写の制作スタイルの違いなどについて聞いた。

『精霊の守り人 悲しき破壊神』予告編映像>>


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――丹治さんは新海誠監督作品の美術監督というイメージが強かったので、失礼ながらフィルモグラフィを拝見して、実写を数多く手がけられてきたということに驚きがあったのですが。

丹治「もともとは実写で、絵コンテやイメージボードを描くような仕事の方が多いんです。実はアニメは新海監督の作品くらいしかやっていなくて。ですので、どちらかというと実写作品側の人間です(笑)」

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実際のイメージボード


――日本のドラマでは珍しいスケールの大きさを誇るドラマとなっていますが。このお話が来た時はどうでした?

丹治「オファーをいただいた後に原作を読んだんですが、この原作がとても面白くて。これが映像になるならすごいと思ったし、ヨーロッパのファンタジーとは違う、アジア的なものを表現することになるから、そこに野心的な気持ちにもなり、ぜひ関わりたいと思いました」

■「VFXビジュアルディレクター」の仕事とは

――本作における丹治さんの肩書は「VFXビジュアルディレクター」となっていますが、これは一般的にどのようなお仕事なのでしょうか?

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VFXビジュアルディレクター 丹治匠氏 NHK大河ファンタジー「精霊の守り人 悲しき破壊神」(土曜・後9時)


丹治「この作品はファンタジーなので、実際に撮れないものをVFXで加工して絵作りをするんですが、ディレクターやプロデューサー、美術の方など、いろいろな人と話をしながら、そのイメージを具体的にビジュアル化していく、ということが主な仕事です」

実写の場合は実写化するまでの絵作りをイメージボードや、VFXのディレクション、絵コンテなどを指針として、美術やVFXのスタッフと共に仕上げていきます。コミュニケーションのツールを作るという感じですね」

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実際のイメージボード「絞め殺しの木 Sketch」(2016.2.13)


――このドラマの世界観を最初に提示するのがお仕事ということですか?

丹治「もちろん僕が一から考えるのではなく、基本的にはディレクターや、美術が持っているイメージがあって。それをどう具体的にビジュアル化するか、という仕事です。そこに自分の色を入れようとするわけではなく、まずは物語にマッチしているイメージを探りながら、提示してみる。やはり絵にしないと、それぞれのイメージが違っていたりするんです。絵をもとに、何度かやりとりをしながら共通認識を図る、ということです。

――新海誠作品では美術監督という肩書でしたが、その時とは仕事内容は違うんですよね?

丹治「違いますね。Photoshopを使って絵を描いているところと、物語に対してどういう絵作りにするかを考えている部分は似ています。ただし、入り口は一緒でも出口が違います。実写の場合は、実際にカメラで撮ったものをどうやって形にするかを考えるのが仕事だったりしますが、アニメの時は、絵作りをリアルじゃない方に寄せて作ることが多いですね。同じ事をドラマでやってしまうと、ちょっと絵的になりすぎて、合成が下手に見えてしまうような気がしてしまうので、そこまでやらないようにしています。アニメの場合はすごくキラキラさせるなど、あえてうそをいっぱいついているんです。でもそれをドラマでやると、うるさい絵になるんです。だからそこは節度を持ってやっています

■実写化までの手法

――新海作品はフォトライクなリアリズム志向と思われることも多いのでは?

丹治「実はそんなことないんです。実は全然リアルじゃないですね。結局、向き合い方、考え方がちょっとだけ違うということですが、似ている部分もあるという感じです」

――本ドラマのシーズン1では「シルクロード」をイメージしたとおっしゃっていましたが、今回もそれを引き継いでいるという形ですか?

丹治「そうですね。リアルタイムで見ていた番組ですし、ああいう世界観が好きだったんです。今回は舞台がアジアなので、スタッフとは世界観を共有できたんじゃないかと思うので良かったです」

――イメージボードを描くときは、実写化の実際の作業がしやすいように絵を描いているのでしょうか? それともイマジネーションの赴くままに描いているということなのでしょうか?

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実際のイメージボード


丹治「そこは難しいところで。一応、プロデューサーには実現可能なプランでお願いしますと言われるんですが(笑)、実現可能なプランを考えると、小さくなって、絵が面白くなくなる事が多いんです。だからパース(遠近法)を度外視することもありますし、その方が面白くなることも多い。もちろん実現できないことをあえてやるつもりはないのですが、それでも現実的じゃない絵作りをすることはあります」

――現場から「これは作れない」といった声があがることはないのでしょうか?

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VFXビジュアルディレクター 丹治匠氏 NHK大河ファンタジー「精霊の守り人 悲しき破壊神」(土曜・後9時)


丹治「おそらく現場に入ったら、そういう声は聞こえてくると思います。僕は現場にあまりいないので聞こえてきませんが(笑)。でも、もちろんイメージボード通りに作ってほしいとは思わないし、ひとつのきっかけになってくれればいいし、そのための指針になればいいと思っています

――アニメの仕事で得たものを、実写にフィードバックすることはありますか?

丹治「それはありますね。アニメの外連味(けれんみ)というか、光の具合など、実写に使えるものはどんどん取り入れて、派手にやってみることはあります。逆に、アニメの場合は、地に足がついていない感じになることがあるので、実写の方法論やカメラのレンズ感をアニメの中に積極的に取り入れたりもします。

これからはアニメもリアルになっていくし、実写とアニメの垣根が取り払われていくようになると思うんです。アニメだって実写だってCGを使っているわけですから。こういうファンタジーという題材だと、それは顕著だと思う。今回、タルシュの国のデザインはアニメの美術設定をするような感覚でやりました」

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実際のイメージボード「タルシュ・都市のデザイン案」(2016.4.15)


――座右の銘を教えてください。

丹治「特に考えたことはなかったんですけど、ベルナルド・ベルトリッチという映画監督がインタビューで「われわれが観客を望まないなら、どうして映画がわれわれを望むだろうか」と言っていて。つまり独りよがりな作家性ではなく、観客を見据えなくてはいけないという。座右の銘というわけではないですが、たまに思い出して。好きな言葉ですね」

■大河ファンタジー「精霊の守り人 悲しき破壊神」


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「精霊の守り人 悲しき破壊神」(NHK 土曜・後9時)


人と精霊が共生していた世界で、女用心棒バルサと幼い王子チャグムの冒険を描く。世界中で愛される上橋菜穂子のファンタジー大作を、全編、4K実写ドラマ化し、毎週土曜日午後9時にNHKにて放送中。

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丹治 匠(たんじ・たくみ)
1974年福島県生まれ。東京芸術大学美術学部絵画科卒業。美術スタッフを経て、アニメーション美術監督、VFXアートディレクター、絵コンテ、イメージボードアーティストとして、さまざまな映画、テレビドラマ、アニメーション作品に携わる。主な作品として、「日本沈没」「CASSHERN」「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」「るろうに剣心」「清洲会議」「劇場版 進撃の巨人」など。また、新海誠監督作品の美術監督として「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」「君の名は。」などにも参加している。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

(取材・文/壬生智裕)

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