安童夕馬原作、朝基まさし作画による人気コミック「サイコメトラー」でおなじみの人気キャラクター、コスプレ大好きみっちゃんこと、福島満が主役に大抜てきされたスピンオフ作品、「でぶせん」がHuluにて連続ドラマ化。コスプレ衣装の買いすぎで借金生活へと転落し、自殺の名所である樹海で一生を終わらせるつもりが一転、なぜか帝辺高等学校の教師として生きることになった姿をコミカルに描き出した物語だ。
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なぜか動物園並みの不良たちであふれ返る帝辺高等学校だが、その中でもひときわ異彩を放つのが、全身タトゥー、そり込みという強烈なビジュアルの黄龍力生だ。ヤクザの息子として周囲から恐れられている黄龍を演じるのはNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で若旦那の清をコミカルに好演した大野拓朗。今回の「でぶせん」で清と真逆のキャラクターを演じた気持ちはいかなるものだったのか、大野に話を聞いた。
――黄龍力生という強烈なキャラクターですが、この役が来た時の感想は?

大野「『でぶせん』は、もともと大好きな作品で、その世界観に入れると思ったら、とてもうれしかったです。まさか映像化するとは思っていなかったですし、自分が出演するとも思っていなくて。でも、黄龍という、めちゃくちゃやりがいのある、意欲的なキャラクターをやらせてもらえることになって、本当にドキドキしました」
――最初に反発していた生徒たちがひとりずつ、次第に心を開いていくさまが原作の見どころですが、そういった意味で全6話のドラマの中で、黄龍の一番の見どころは何話目あたりになりますか?

((C)安童夕馬・朝基まさし/講談社)
大野「4話で黄龍の物語が急展開します。でも、その後の5話、6話も見てもらいたいです。結局、見どころは全部ですね(笑)。全体を通してみんなのキャラクターが強いし、パワーもめちゃくちゃ強いので、すべてのシーンを黄龍として全力でやりきりました」
――原作では、黄龍は途中から出てきたキャラクターでしたが、このドラマでは1話から登場しましたね。
大野「原作ではそうですね。ドラマ版は、設定やエピソードなども少しずつ変わっています。そこらへんはあまり言えない部分だったりするんですけど」
――ドラマだとコミカル要素が強い?
大野「そうですね。コミカル要素とエロ要素が多い作品だったので、台本読んでドキドキしっぱなしでした。これどうやって撮るのかなと思って。例えば『全裸で温泉に入ってくる』と書いてあるとか。これは台本だから書いてあるだけなんだろうと思ったら、本当に全裸で入ってきた。すごい作品ですよね。僕もこれから見るのが楽しみです」
――女装コスプレ好きのぽっちゃりした男性が、女性教師になりすまして教鞭(きょうべん)をとる、という物語は、映像化するのが難しいと思われていました。主演の森田甘路さんの抜擢(ばってき)も話題になりましたね。
大野「森田さんはすごかったですね。もう本当に女性に見えちゃって。思わず『森田さんって彼氏いるんですか?』と聞いてしまって。まわりが、『え? 彼氏?』という空気になりましたよ(笑)。でもなんだか本当に女性らしく見えたというか。森田さんのお芝居も面白かったです」
――楽しい現場だったのではないでしょうか?
大野「そうですね。面白い現場でした。この年になって、学園ドラマができるとは思っていませんでしたし。ワンカットワンカットが終わるたびに、みんなが笑っちゃうような、そういう撮影現場でしたね。役としても、飛び道具的な、とにかく怖く、といったことを考えながら芝居をしていました」


――現場では皆さん、けっこうイケイケな感じだったんでしょうか?
「そうですね、時にはやり過ぎと言われちゃう人もいました。でも、やり過ぎと言われるのは役者にとっていいことですし、お芝居を思いっきり演じる人が多かったので、自分も一緒になって吹っ切って演じていました」
――「とと姉ちゃん」の時と真逆の役柄ということで話題ですが、『セーラー服と機関銃 -卒業-』の舎弟役なども含めて、俳優としていろいろな役をやるんだ、という意気込みを大野さんから感じます。
大野「『セーラー服と機関銃 -卒業-』は誇張せずに、声も変えないようにと言われて。わりとナチュラルに素のままでやりましたし、(「とと姉ちゃん」の)清は、コミカルな感じで作り込みました。そして今回の黄龍は、ザ・ヤクザという感じを誇張していて、それぞれに雰囲気が違います。もちろん『とと姉ちゃん』とは真逆の役で、だからこそ本当に黄龍に見えたらいいな、まったく別の表情をできたらいいなと思います。
同一人物に見えない、と言われるのが一番うれしいですね。例えばネットで検索した時に『あれ、「とと姉ちゃん」に出てた人? もしかして清さんをやってた人が黄龍だったの?』みたいな感じで言われたらうれしいです」
――黄龍という強烈な役を演じるにあたり、どういったモチベーションでやろうと思いましたか?

大野「なるべく計算して、クラス全員に嫌われるような行動を取ってやろうと思ってやりました。クラスの人たちに『ここは頭叩(たた)いていい?』と相談したり、『もうちょっと靴磨いてよ』と上から目線で言ってみたりとか。もちろん、後でちゃんと『ごめんね』と謝りましたけど(笑)」
――全身タトゥーはどのように作られたのでしょうか?

大野「ほかの番組との都合で、すぐに消さないといけなかったので、最初は水性ペンで書いてもらっていたんです。初日は4時間かけて、6~7人がかりで描いてもらいました。ただ、背中だけでなく、胸も腕も同時にやってもらわないといけなかったので、体を起こして、手を広げたままの体制を4時間キープし続けないといけなかった。けっこうきつかったですね。でも途中からシールにしてみようかということでシールタトゥーにしてみたら、案外、シールの方がきれいにいきました(笑)」
――シールに変えてからは、早かったですか?
大野「それでも2時間くらいですね。けっこう時間はかかりました。描くのも、初日は4時間でしたが、次の日は2時間で終わったりとか。でも2時間で終わらない時は、撮影の合間にもう一度直してもらったり」
――全身タトゥー姿になった自分を見て、どんな気分でした?
大野「普段、役でもタトゥーを入れる機会なんてなかなかないので、面白い体験でしたね。鏡を見て自画自賛、いかついなと思いました。現場でエキストラの方が来た時も、僕を見る目が違うんですよ。怖い人が来ちゃったな、みたいな感じで、よそよそしい目で見られることが多かったので、本当に黄龍になったような気分でした」
――撮影中はずっとそのままの状態で過ごすんですよね。
大野「首から上もタトゥーが出ているんで、休憩中にコンビニに行く時なんかも、Tシャツは着ないようにして、襟のある長袖のシャツを着て過ごしたりしました。それでも時にはウワッという目で見られることもありましたね。それから街でタトゥーをしている人を見かけると、勝手に親近感を抱いたりして。なんだか新鮮でしたね」
――これからドラマをご覧になる方に向けて見どころを。
大野「原作のパワーに負けない、パワフルな作品になりました。下ネタもしかり、コメディー要素もしかり。それぞれのキャラクターの個性もしかり。全部が、原作にひけをとらない、力強さだと思います」
――ドラマを見て、原作も読みたいという人もいると思うのですが。
大野「とにかく笑える作品です。ちょっぴり下品なところもあって、そこは僕も好きなところだったりするんですけど、なのに感動できるという、そこが原作の魅力だと思います。気楽に読めるのに、感動できて、日々の癒やしになれるような作品ですので、ドラマを見た方には、ぜひとも原作の方も読んでもらいたいですね」
――それでは最後に座右の銘は?
大野「『いつでも笑顔でいられますように』です。笑顔がすべてですね。うまくいかないと笑顔にもなれないですし、うまくいくためには努力をしないといけない。結局、笑顔になるためには日々、積み重ねていかないといけないなって。プラス、この仕事をしていく上で、人を笑顔にしたいという気持ちも強いので、それが僕の座右の銘です」

◆大野拓朗(おおのたくろう)
1988年11月14日生まれ。東京都出身。2010年、ホリプロ50周年記念事業『キャンパスター★H50』でグランプリを受賞。同年、映画『インシテミル~7日間のデス・ゲーム~』で俳優デビュー。近年では、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16)、NHK初主演「ラスト・アタック?引き裂かれた島の記憶」(16)、情報バラエティ「Let's天才てれびくん」のメインMCを務めるなど活躍の場を広げている。主な出演作品には、ミュージカル『エリザベート』、舞台『ヴェニスの商人』、「三匹のおっさん」シリーズ、連続ドラマ初主演「LOVE理論」、大河ドラマ「花燃ゆ」などがある。来年1月16日(月)より、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の主演を務める。
座右の銘:いつでも笑顔でいられますように
(取材・文/壬生智裕)
(写真:トレンドニュース)
((C)安童夕馬・朝基まさし/講談社)
トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
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