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東京スカパラダイスオーケストラ、およそ3年ぶり通算20枚目のオリジナルアルバム『Paradise Has NO BORDER』が3月8日にリリースされる。Ken Yokoyamaをはじめ、TAKUMA(10-FEET)、尾崎世界観(クリープハイプ)や、片平里菜、さかなクンなど多彩なゲストをフィーチャーし、スカやジャズ、ロック、昭和歌謡など、古今東西あらゆる音楽スタイルを取り込んだ、「東京スカ」という唯一無二のサウンドスケープ。それはまさしくタイトル通り、「境界線のない楽園」というべきものである。

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東京スカパラダイスオーケストラオリジナルアルバム『Paradise Has NO BORDER』3月8日にリリース


3月にはLAの音楽フェス参加も控えている彼ら。今回は谷中敦(バリトンサックス)、加藤隆志(ギター)、茂木欣一(ドラムス)の3人に、新作についてたっぷりと語ってもらった。

新アルバムからインストナンバー「Girl On Saxophone X」MV‐Short Ver. >>


■コラボ+新曲=もっともパワフルで強いアルバムに(加藤)

──およそ3年ぶり、通算20枚目のオリジナルアルバム本作『Paradise Has NO BORDER』をリリースした経緯は?

加藤:これまでのキャリアを全て取っ払い、「本当に好きなことをやっていこう」というところから始まりました。昨年はシングルという形式で、自分たちの好きなアーティストとさまざまなコラボをやらせてもらったのですが、それらを集めて新曲と一緒にしたのが本作です。結果的にアルバムというフォーマットを取っ払い、バラエティに富んだ、これまでのスカパラの中でも、もっともパワフルな、力の強いアルバムになりました。

茂木:「アルバムを作ろう」ってところから始めちゃうと、やっぱりどこかでバランスを取ろうとしちゃう。そういうところを外さないと、次の一歩が出てこない気がしていて。『The Last』(ベストアルバム、2015年3月リリース)で、それまでの作品に「ありがとう!」とお礼を言いつつ、そこからまたデビューするくらいの勢いで、何も持たずただ出てきた曲に全力投球していきました。

加藤:そのうち「コラボする相手は"一人一曲"じゃなくてもいい」ということになって。(横山)健さんとのコラボ曲が3曲入っていたり、尾崎(世界観)くんとも2曲やっていたり。あるいは、さかなクンとのコラボ曲「Paradise Has No Border」に至っては、ライブ音源とスタジオ音源を組み合わせて1曲にしている。そういうのって、アルバムとしてのまとまりを考えなかったからこそ実現したアイデアだったのかなと思います。

さかなクンもゲスト出演「Paradise Has No Border」(Live Ver.)>>


──まさに"No Border"な作品ですよね。アメリカの政権が変わって、さまざまなボーダーが生まれやすくなっている今の世界情勢へのメッセージのようにも聞こえますね。

加藤:この作品はトランプ政権が誕生する前に完成していたので、特に何か政治的なメッセージを意識したわけでもないのですが、結果的に今の世相を表すタイトルになってしまいました(笑)。3月にはアメリカのLAにて開催される「Skanking Reggae Festival 2017」に出演する予定なのですが、向こうでどんな風に受け止められるのか楽しみです。

■いつもアルバムができると亡くなった友人たちがどう思うか考えるけど、今作は別格(茂木)

──前回のインタビューは、横山健さんとのコラボ第一弾「道なき道、反骨の。」をリリースした時でした。その後、第三弾までコラボが続きましたが......?

谷中:1枚目の「道なき道、反骨の。」は、横山くんが初めて日本語で歌うというチャレンジがあって、次の「さよならホテル」では、日本語どころかラブソングを歌ってもらおうと(笑)。そして、「遠い空、宇宙の果て。」ではついに、宇宙まで行っちゃった(笑)。自分の中で、歌詞を書くときの生涯のテーマとして「望遠鏡と顕微鏡」というのがあるんですね。望遠鏡で遠くの星をのぞくのも、顕微鏡で小さな世界をのぞくのも、全て同じ気持ちなんじゃないかと。インナースペースというくらいで、自分自身の内なる世界にも無限の可能性が眠っているのに、それを抑圧され世の中が息苦しくなる現象が、あらゆる場所で起きている。本当は、自分の中に無限の可能性が広がっているのだということを、感じてもらえたらいいなと思って書きました。

feat.Ken Yokoyama 「道なき道、反骨の。」>>


feat. Ken Yokoyama 「さよならホテル」>>


夜、輝いている星も、実はもう随分前に爆発し消滅してしまったかもしれなくて。僕の中では、先に亡くなってしまった友達も、遠い宇宙へ行けば会うこともできるのかなとか。そんなことを思いながら作った歌詞です。

茂木:いろいろ考えますね。「あの人だったら、このアルバムを聴いたらどう思うかな」とか。

谷中:そうだね。亡くなったあの人が好きそうなレコードを手に入れたり、好きそうな洋服を着ていたりするたびに、「誰に自慢すりゃいいんだ......!」って思う(笑)。「あの人に自慢したい!」って。そういうふうに思うのは切ないけど、大事な感情だよね。

加藤:スカパラのメンバーも、何人か亡くなった人がいますけど、このアルバムこそ彼らに聞かせたいって思います。健さんや尾崎くん、里菜ちゃんとコラボしている僕らを見たら、「すげえ!」って驚いてくれるんじゃないかな。しかも、ちゃんと彼らとつながる脈々としたものがあるっていうか。

谷中:そうだね。思い出しちゃう。

──尾崎世界観さんとのコラボは、どのように実現したのでしょうか。

加藤:僕がもともとクリープハイプのファンだったんです。彼の歌声は、すごく骨っぽくてソウルフルだと思うんです。哀愁というか、ブルースのようなものを感じる。それって僕らの奏でるスカやレゲエと、絶対に相性がいいと思ったので声をかけさせてもらいました。今回、アルバム収録に当たってちょっとミックスバランスを変えたのですが、尾崎くん本人から「自分の声が、まるで管楽器の一員のように聞こえました」と言ってもらいました。

尾崎世界観をボーカルに迎えた「爆音ラブソング」>>


■グッとくるボーカリストは、その人の人生がにじみ出ているような声を持つ人(加藤)

──横山さんも尾崎さんも、もう一人のゲストボーカル片平里菜さんにしても、いわゆる「どんなジャンルでも歌いこなす、テクニカルなボーカリスト」というよりは、個性的で唯一無二な存在。スカパラが、一緒にコラボしたいと思うのはどんなボーカリストでしょうか。

"妖艶""気怠い"ノスタルジック・スカチューン! 片平里菜を迎えた「嘘をつく唇」>>


谷中:今回の3人に共通しているのは、「どんな時でも自分自身であろうとする」ボーカリストであること。それって実はものすごく大変なことで、体現できている人に男女問わず惹(ひ)かれますね。

──確かに、ボーダレスでありながら、自分自身を貫き通すって難しいことだし重要です。

谷中:そうだね。加藤流の言い方をすれば、「くぐってきている」人たち。

加藤:やっぱり、歌っていうのはその人のバックグラウンドが出ると思います。僕が聴いていてグッとくるボーカリストっていうのは、その人の人生がにじみ出ているような声を持つ人かな。もちろん、テクニカルに上手な人が、時に人の心を打つこともあると思うんですけれど。やっぱり自分がバンドを好きなのは、そのバンドのバックグラウンドや歴史込みだと思う。僕らスカパラもそうありたいですね。インストバンドであるぶん、音色に人生が刻まれているといいなって思います。

──スカパラともコラボした上原ひろみさんに、以前インタビューした時「音楽は会話」で、「予想もしないところに飛んでいくのが面白い」とおっしゃっていました。

谷中:全くその通りですね。音楽に望むのって、その部分。予想外のことが起こるからバンドをやったり、コラボしたりするのだと思う。ライブ中でもハプニング大好きだもんね、僕ら(笑)。

茂木:予想通りの連続だったら、ここまでバンドも続かなかったんじゃないかな。

谷中:そうだね。会話におけるハプニングと同様に、音楽におけるハプニング、脱線みたいのが楽しくて仕方ない。コラボ相手とのハプニングも、お客さんとのハプニングもそう。

■男湯と女湯もノーボーダーになった(谷中)

──新曲「Girl On Saxophone X」は、ミュージックビデオを銭湯で撮ったそうですね。

加藤:監督の番場秀一さんが、相当ぶっ飛んだ人で(笑)。今回は蒲田にある本当の銭湯で撮影しました。異空間でしたね。でも、ギャグっぽい映像にするつもりはなくて、すげえカッコ良い仕上がりになりました。銭湯の景色が、僕らの「東京スカ」という世界観とシンクロしたような、そんな映像になっています。海外の人が見ても、楽しんでもらえるんじゃないかな。

谷中:男湯から女湯へとワンカットで移動するシーンも見所です。男湯と女湯もノーボーダーになった(笑)。

──個人的には「Prism」の摩訶(まか)不思議な構成、美しい旋律と狂ったギターソロが異色でとても印象に残りました。

茂木:おお、うれしいですね! この曲は「東京オリンピックパラリンピック」に向けての、NHKドキュメンタリー番組『東京2020 100の物語』のために作った曲です。「順風満帆なだけじゃなく、挫折も込みで目標へ向かっていく」というのが裏テーマとしてあって。ライブでの再現を前提としていなかったぶん、こういう不思議かつドラマティックな構成になりました。

──では最後に、今後の展望をお聞かせください。

加藤: 2017年も日本だけでなく海外も攻めていきますよ。そのスタートとして、3月にアメリカでのフェス出演、また日本に来日するスカの先輩・スペシャルズのサポートアクトも決まっています。あと、最近は若いバンド中心のフェスにも声をかけてもらったりするので、国境も世代も超えて、「Paradise Has NO BORDER」というキーワードを伝えていけたらいいなと思っています。

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東京スカパラダイスオーケストラオリジナルアルバム『Paradise Has NO BORDER』3月8日にリリース


『Paradise Has NO BORDER』

新曲には3作目となるKen Yokoyamaとのコラボ新曲に加え、谷中敦とTAKUMA(10-FEET)のダブルボーカルRAP曲を収録。

01. Skankin'Rollin'
02. Routine Melodies Reprise
03. 爆音ラヴソング feat.尾崎世界観(クリープハイプ)
04. Believer
05. 天空橋
06. 嘘をつく唇 feat.片平里菜
07. Samurai Dreamers <サビレルナ和ヨ> feat.TAKUMA(10-FEET)
08. Paradise Has No Border feat.さかなクン
09. 道なき道、反骨の。 feat.Ken Yokoyama
10. Girl On Saxophone X
11. 遠い空、宇宙の果て。 feat.Ken Yokoyama
12. めくったオレンジ feat.尾崎世界観
13. Prism
14. さよならホテル feat.Ken Yokoyama

◆ 東京スカパラダイスオーケストラ
1989年、「TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA」をインディーズでリリース。翌1990年、シングル「MONSTER ROCK」、アルバム「スカパラ登場」でメジャーデビュー。以降、ルーツのスカをベースに、ジャンルにとらわれない幅広い音楽性、すなわち"TOKYO SKA"で世界屈指のライヴバンドとしての信頼を勝ち得ていく。現在のメンバーは9人。NARGO(トランペット)、北原雅彦(トロンボーン)、GAMO(テナーサックス)、谷中敦(バリトンサックス)、加藤隆志(ギター)、川上つよし(ベース)、沖祐市(キーボード)、大森はじめ(パーカッション)、茂木欣一(ドラムス)。

座右の銘:谷中「叶えた夢に 火をつけて燃やす(「爆音ラヴソング」の歌詞より」、茂木「楽しもうとすると、楽しい!(日めくりカレンダーに書いてあった言葉)」、加藤「前身(まえみ)あるのみ(「前のめり」という意味)」

(取材・文・写真/黒田隆憲)

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