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2009年3月に1作目の映画が公開されるやいなや、連日満員で立見を記録するなど話題をさらった『SR サイタマノラッパー』。続く二作目、三作目も数多くの賞を受賞するなど若者を初め多くの観客を魅了し、その話題作が連続ドラマとなった(金曜24時52分~25時23分・テレビ東京系)。
『モテキ』『マジすか学園』『勇者ヨシヒコシリーズ』『孤独のグルメ』『山田孝之のカンヌ映画祭』『バイプレイヤーズ』等々、低予算だがユニークで、コアなファンを集める"迷作"が多いテレビ東京の深夜ドラマ枠である。

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入江悠/Yuu Irie, Jun 15, 2013 : 「第22回日本映画プロフェッショナル大賞」「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」で作品賞を獲得(写真:MANTAN/アフロ)


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■TVドラマの舞台は東北へ

ドラマはIKKU、TOM、MIGHTYのSHO-GUNGの3人が東北各地を訪ね歩くロードムービー仕立てで、ずっと追い続けてきた、あきらめない夢と青春とのけじめをつけるさまを描いていく。
埼玉の田舎で育った弱小ラップグループ、"SHO-GUNG"のメンバー3人は、成功を夢見ているが、現実は厳しく夢を追うどころか、7年前に解散してしまった。そして結成から、10年の歳月が過ぎる。
ある日、夢を諦められずにいたメンバーの一人、IKKU(駒木根隆介)の元に、川崎にある有名なライブハウスであるクラブチッタから、ライブ出演のチャンスが舞い込んでくる。IKKUは、SHO-GUNGを再結成させるために、TOM(水澤紳吾)に声をかけるが、TOMはガールズバーでバイトをしながら貯金をしている。TOMの嫁のトリーシャ(コトウロレナ)に子供が生まれるため、家庭を築こうとしていたのである。
TOMはラップ生活を"地獄"といい、SHO-GUNGの再結成を拒む。それでもIKKU はTOMを連れ出し、もう一人のメンバーであるMIGHTY(奥野瑛太)を青森に探しに行く。2人は、無事にMIGHTYを埼玉に連れて帰ってこられるのだろうか。

■音楽出し惜しみの"音楽ドラマ"

ヒットした3作の映画はかなりの低予算だったというが、今回のドラマ化でも相変わらず予算はキビシそう。しかしそれが、結果的にユニークな作品に仕上がっている。まずヒップホップを題材にし、しかも本物のグループが出演しているにもかかわらず、ドラマ中に流れる音楽が極端に少ない。約25分という短編ドラマの中、流れる音楽はたった5曲。そのうち音無しのラップソロが2曲を占める。音楽だけでなく、ラップ本来の"言葉の妙"を楽しむことができる。

冒頭でIKKUがクラブチッタでのライブ出演の通知を持ってTOMのところへ走るシーン。4ビートのドラムベースに、シンプルなモチーフのパターンメロディが流れる。「Hey TOM!」とラップが始まりそうなところで、トリーシャが出て来てしまい、ドアの音で曲はあっさりカット。音楽好きとしては「おっと、ちゃんとラップ聴かせんかい!」って気分だ。

ただし、捨てきれない夢に希望の光を持って現れたIKKUの気持ちをシャットアウトするようで、心憎い演出ではある。そして、途切れてしまったその先をラップのソロで、TOMに気持ちを伝える。これは、「メッセージをリズムに乗せて送る」という、ラップ本来の原点のスタイルを思わせる。

ただし、いかんせん田舎臭さがただよう。いつか、オリンピック銅メダリストの元アスリートが、ツイッターで「どんなに頑張っても、日本人にはラップは馴染まない」と投稿し、猛烈な批判を受けていたが、個人的には同感だ。ただ「踏まれたぶんだけ、韻を踏め。」とあるように、言いたいことを韻を踏んで言うことに意味があるようだ。個人的にはNYに憧れを持ってラップを歌っても、どこかで自分のスタイルを貫かなければ、憧れはただのマネで終わってしまう。日本語のメッセージとメッセージの間に、英語で「Hey!」や「Yo!」と合いの手を入れるより、「あらよっと!」と入れた方が、前フレーズの日本語にぴったりなんじゃないのかとも思える。

■注目すべきはユニークさ

しかし、このドラマではラップがダサいか、カッコ良いかは重要な問題ではない。"サイタマノラッパー"が音楽を愛し、ラップを愛し、夢を追い続けながらも葛藤を抱くヒューマンドラマ。多少のダサさが彼らのひたむきさを演出し、ユニークさを追及できている。

そして洗練された音楽がないわけじゃない。オープニング曲「マイクの細道」を歌うのはRhymester。数々のフェスティヴァルやライブでパフォーマンスし、彼らのラップのキレと豊かな音楽性が、ボリューミーな空間を広げてくれる。かくてドラマの出だしは魅力的になっている。
そしてエンディング曲「つきとさなぎ」を歌うのは、ぼくのりりっくのぼうよみ。弱冠19歳の大学生だが、中性的な個性派ヴォイスと、日本語を楽しんでいるかのような、R&Bの世界は独特で面白い。
どちらも本ドラマに向けた描き下ろしだという。確かにドラマの世界観やSHO-GUNGたちの心情がこめられ、しっくり来ている。
さらにアップをほとんど使わない映画的な、しかもロードムービー的な撮影の仕方に、2つの曲はぴったりと合っており、本作品のユニークさを引き立てている。

いずれにしても、自作自演の主人公SHO-GUNGのメンバ?3人の夢はどうなるのか。果たしてクラブチッタでのライブは実現するのか。そして最後には、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。今後の展開に期待したい。

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文責・パリ帰りのピアニスト はたじゅんこ
   次世代メディア研究所

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