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お笑いには過去5回のブームがあった。
第1次は1960年代の演芸ブーム。浅草芸人や落語家たちがテレビに抜擢されてスターになった時代だ。
第2次は1980年代の漫才ブーム。たけしやさんま等の時代である。
第3次は1980年代後半から90年代前半、とんねるず・ダウンタウン・ウッチャンナンチャンらが台頭した時代だ。
第4次は1990年代後半。『めちゃめちゃイケてるッ!』『進め!電波少年』など作りこまれた番組で、大数の芸人が輩出された時代である。
そして第5次は2000年代前期から後期の「ネタ見せ」番組ブーム。その牽引(けんいん)役は、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系列)だった。

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M-1グランプリの時代

M-1グランプリは、結成から10年以下(第11回大会以降は15年以下)のコンビ/グループを対象とした漫才のコンクール。2001年にスタートし徐々に人気を博したが、「10年の節目をもって発展的解消することが次につながる」とし、2010年の第10回大会を以ていったんは幕を閉じた。その後5年の空白期間を経て、2015年より復活し、現在までで全12回の実績を誇っている。

M-1グランプリの休止に象徴されるように、2010年代に入るとテレビでネタ番組を見る機会は激減。『爆笑オンエアバトル』(NHK)、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)などの人気番組は相次いで終了し、2010年代には毎週レギュラーのネタ見せ番組はほとんどなくなった。2015年にはビートたけしが東スポ紙上で「お笑いブームは完全に終わった。あと10年は来ないだろう」と発言したことも話題となった。

お笑いブームは終わった?

歴代M-1グランプリの視聴率と出場組数を見てみよう。両者には相関関係が見て取れる。
アマチュア参加も認められるこの大会は、回を重ねるごとに参加組数が増加。素人である筆者も趣味が高じて参加した経験を持つほどで、世間の盛り上がりは大きく、最大で4,835組(第10回)もの参加者を誇った。視聴率も2008年には関西で35.0%(関東では23.7%)を記録しピークを迎えたものの、以降は低下し、直近の第12回大会では関西23.8%、関東13.5%に留まっている。

この数字を見ると確かにブームは終わったように映るが、実は2016年の視聴率、出場組数は2005年の第5回大会とほぼ同数である。2005年といえば『エンタの神様』(日本テレビ:2003年~)、『笑いの金メダル』(テレビ朝日系列:2004年~)などのネタ見せ番組が人気を博し、まさにお笑いブームを作り上げていた時期だ。確かにピークの2008年大会より視聴率や出場組数は低いが、人気が著しく低下した訳ではない。むしろ、お笑いが文化として根付き、一定のレベルを保つようになったと言えるのではないだろうか。

データニュース社による「テレビウォッチャー」満足度調査を見ても同様のことが言える。2015年、2016年に放送された『M-1グランプリ』の満足度はいずれも3.8(5点満点)を獲得。これは高評価の基準となる3.7を上回っており、NHKの朝ドラ『とと姉ちゃん』と同レベルの高評価。一定以上の人気を保っていると言える一つの指標だろう。

お笑いは衰退期? 成熟期?

ビジネス用語に、プロダクトライフサイクルという言葉がある。これは製品が市場に投入されてから、寿命を終え衰退するまでのサイクルを体系づけたもので、1.導入期、2.成長期、3.成熟期、4.衰退期に分類される。導入期、成長期では市場拡大が最優先課題となるが、衰退期では投資を抑え効率性を高めたり撤退時期を判断することが重要となる。

上記の4区分において、「お笑い」は、今どの段階にいるだろうか。多くの局は「衰退期」と判断し、テレビからネタ見せ番組を撤退させる判断を下しているようだ。しかし、前述の分析からもわかる通り、現在も一定以上の人気は保っている。まだ「成熟期」にいると言えるのではないだろうか。

異色のネタ番組『笑×演(ワラエン)』に期待

一般的に成熟期においては、特定ターゲットを狙ったシェア拡大に努めることが1つの戦略となるが、その象徴的な例が今クール水曜深夜放送の『笑×演(ワラエン)』(テレビ朝日)だ。
この番組は、"芸人が書いたネタ"を"役者が演じる"という趣旨。若手芸人たちと映画や舞台、ドラマなどの第一線で活躍している実力派役者陣が挑むもので、実際にネタを見るだけでなく、作り上げていく過程も楽しむことができる。また、ネタに演者のキャラクターが押し出されることで、コアなお笑い好きだけでなく、役者側のファン層も取り込むことができるように感じる。

4月12日深夜の放送では、M-1グランプリ第11回大会ファイナリストの「タイムマシーン3号」と「馬鹿よ貴方は」が台本を担当。対する演者は、小沢仁志&小沢和義のコワモテ兄弟ペアと布施博&川野太郎ベテランペア。実力派俳優陣の演じる漫才が想像以上と話題だ。

新たな視点でお笑いの「成熟」を目指すこの『笑×演(ワラエン)』。ときには"笑えん"ネタがあるかもしれないが、筆者は心から応援していきたい。


文責:一般社団法人日本味覚協会 代表 水野考貴
著者ブログ:『味覚ステーション~世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト』

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