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警視庁の捜査一課とは、殺人、強盗、暴行、傷害、誘拐、放火などの凶悪犯罪の捜査を扱う部署。捜査一課長とは、警視庁ノンキャリア最高の現場指揮官。大勢の課員を指揮し、常に複数設置されている捜査本部へのそれぞれの指示とマスコミへの対応を行い、捜査が行き詰った時は自ら現場に出向くこともある司令塔の役割だ。

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香川照之, Apr 10, 2017 : 連続ドラマ「小さな巨人」の制作発表(写真:MANTAN/アフロ)


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今クールはこの捜査一課長を描くドラマが2つある。
テレビ朝日はその名も『警視庁・捜査一課長』。内藤剛志が演ずる捜査一課長は、「ヒラから成り上がった最強の警部」で、沈着冷静で情にも厚い正義漢として描かれている。
一方TBSの『小さな巨人』では、駆け引きや権謀術策に長けたひと癖もふた癖もありそうな捜査一課長。香川照之が怪演している。
両ドラマ初回の視聴率は、前者14.5%・後者13.7%とほぼ互角。正反対と言っても過言でない2つの捜査一課長像は、ともに視聴者に大いに支持されているようだ。

捜査一課長に対峙(たいじ)する一警察官

『小さな巨人』では、警視庁捜査一課強行班1係長の香坂真一郎(長谷川博己)が主人公。
次期捜査一課長の有力な候補で、最年少の出世と事件解決の功績を認められ、一課長の小野田義信(香川照之)の右腕となるエリート警察官だ。
3度目の事件解決の手柄を祝って、前一課長で現所轄の署長を務めている三笠洋平(春風亭昇太)と料亭で会食中、どこで聞きつけたのか、小野田が突然現れる。
三笠はエリートとして出世した"警務畑"。対すると小野田は、ノンキャリアで現場のたたき上げの"現場畑"。このタイプの違う2人は、香坂を高く評価している点では一致しているが、水と油の関係だ。
この会食に飛び込んだ小野田は、香坂のミスを利用し、香坂を所轄に左遷した。
香坂が所轄にやってくると、IT企業ゴーンバンク社の社長、中田和正(桂三枝)の誘拐事件が起きる。
"使える人材がいない"所轄に異動になった香坂は、思うように捜査が進められないでいたが、渡部久志刑事(安田顕)の積み重ねた捜査を手掛かりに、事件の鍵を得て解決にむけ大きく貢献する。
これにより香坂は小野田に評価され、「捜査一課に戻れるようにする」と言われるが、前提だった管理職昇進試験を当日になってパスし、事件解決を優先して所轄に戻ってしまう。

台本と役者の力

脚本を手がけるのは、丑尾健太郎。
香坂の語りで始まる、薄暗い湖の水面を撫(な)でるような滑らかな不気味さ。「敵は味方のフリをする」「捜査は、理論です」「人をよく見ていると匂いまでわかってくる」など、インパクトがあり心に残るフレーズを、ストーリー展開の流れの中でピンポイントに注入して来る。映画、ドラマだけでなくアニメや舞台と幅広く手がける、手腕のなせる業だろう。

そして、演ずる俳優陣の素晴らしさには、脱帽としか言いようがない。
主演の香坂を演じる長谷川博己の表情、緊迫感、魂からこみ上げる気迫は、目を離さずにはいられない。
実力派俳優で陣を固める中、やはり小野田役の香川照之の演技は、格別だ。
"目ヂカラ"は歌舞伎役者のよう。さらに「顔のシワまでも気迫で変えられるのか」と思えるほど、体の細部に至るまで、ひと癖もふた癖もある捜査一課長を演じる。ホントにすごい!

音楽は迫力満点&センス抜群

さらにドラマにとって重要な役割を果たしているのが、音楽担当の木村秀彬だ。
コーラスで始まるピアノの音色から、じりじりと広がりを見せ、オーケストラ+ドラムの壮大な演出をオープニングに使用し、シーンが変わっても曲を変えずに、さらに盛り上がりを増していく。
タイトルを出すまでのオープニングを長いスパンで捉え、ラヴェルのボレロのように、少しずつクレッシェンドし核心に迫るかのようだアメリカの広大な大地を低空飛行で地を這(は)うような、果てしないスケールの大きさは、誰もが書けるものではない。シンセサイザーを駆使し、ストレスフルなシーンの演出も、文句のつけようがない。

さらに、彼は沈黙の価値をよく知っている。
ドラマ音楽は、シーンに色付けすることによって効果を得るが、"音が無い"という選択が大きな効果をもたらすことがある。見る者の心をがっちりと掴み、もうはっきり言って逃げられない、という感じでいつの間にか、見入ってしまう。ちなみにハイセンスでクリエイティブな作品だった2016年夏クールの『そして、誰もいなくなった』の音楽も、木村によるものだった。

何も言うことはない。「来週も絶対見たい」と思うドラマだ。
ストーリーのオリジナリティ、俳優陣の素晴らしい演技、ハイセンスなクオリティの高い音楽。三拍子そろったドラマである。しかも細部を凝視すればするほど、面白さが見えて来る。日曜の夜がとっておきとなり、楽しみになった。

文責・パリ帰りのピアニスト はたじゅんこ
   次世代メディア研究所

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