個性的なキャラクターが縦横無尽に跋扈(ばっこ)する映画『無限の住人』(4月29日公開)。木村拓哉演じる、死ぬことを許されない「無限の体」を得てしまった伝説の人斬り・万次(まんじ)が、運命によって引き寄せられた少女・凜(りん)の敵討ちの用心棒として、壮絶な戦いに挑むアクション・エンタテイメントだ。
映画を陰から支えるスタッフインタビュー第2弾は、キャラクターを総合的に形作る役割を担うキャラクタースーパーバイザーの前田勇弥さんに、本作での仕事内容や、木村拓哉演じる万次へのこだわりなどを聞いた。
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■漫画原作の実写化、コスプレにはならないように!


――キャラクタースーパーバイザーとはどんなお仕事なのでしょうか?
前田: ビジュアルを統括する仕事です。原作をもとに木村さんなり、戸田(恵梨香)さんなりが演じるキャラクターの衣装や、ヘアメイクなどビジュアルにまつわる全体的な部分を見る役割を担っています。


――作品に参加するのは、キャストが決まってからなのでしょうか?
前田: 三池(崇史)監督から「次にこういう作品やるから」って言われたときからスタート。決まっているときもあれば、そうではないときもあります。同じキャラクターでも、演じるキャストによって全然違うイメージになると思います。
――今回、本作ではどんな部分にこだわったのでしょうか?
前田: まず、どの作品でも役そのままの衣装に着られちゃっている感が見えることだけは、絶対にならないように心がけています。原作がある場合、どうしてもコスプレみたいになってしまうことがあるんです。そうならないように、木村さんの場合、ヘアメイクさんと「今回は汚そう」っていう話をしました。作品全体的にも、小ぎれいな世界観にしたくなかったんです。
――非常に個性的なキャラクターが多い作品ですが、印象に残っている人はいましたか?
前田: みんなそれぞれ苦戦しました。男性は基本的に着物だったので、セオリーにのっとっていましたが、女性は難しかったですね。(百琳(ひゃくりん)役の)栗山(千明)さんはミニスカートですし、(乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)役の)戸田さんは大きなスリットが入っているので、見え方が1センチ違っただけでも大きくイメージが変わってきます。場面ごとに臨機応変に変えていきました。


――コスプレ感が出ないようにというのは、具体的にどういったことを意識しているのでしょうか?
前田: エイジングですかね。服は人がずっと着ているとよれてくるので、そういった部分で汚しや、やすりをかけて着る人になじむようにしていきます。万次は永遠の命であり、同じ服をずっと着ているので、その部分のリアリティと、それが作品に浮いてしまわないように全体的なバランスを考えました。
■木村拓哉には妥協がない!
――前田さんならではのこだわりのポイントは?
前田: ちょっとした汚し方だったり、人によって微妙に帯の位置を変えたり、(福士蒼汰演じる)天津影久(あのつかげひさ)で言えば、この時代にレザーはないよねっていうところで、あえてインナーにレザーを使っていたり、万次で言えば、中に着ている襦袢(じゅばん)に柄が入っていたり......。あまり見えるところではないのですが、注目していただければと思います。
――今回、木村さんとお仕事をされてみて、どんな印象を持ちましたか?
前田:妥協のない方ですね。撮影中、あれだけ激しいアクションがあってもずっと素足で草履なんです。あとは、寒くてもインナーが見えるのが嫌だと言って着ないんです。ものすごく寒い撮影だったのに、素足で襦袢(じゅばん)と着物の2枚だけ。撮影上、見えないときでも「万次は履かないよね」って。1枚着るだけで動きも変わるし、見え方が全然違うんです。そういうことも意識されて、徹底されるんです。こういう姿勢を見せられたら、こちらも負けてられないって思いますよね。本当に格好いいですよ。
■三池組の神髄「どんなにハードでも楽しい現場!」

――三池監督とは何度もお仕事をご一緒されていますが、現場ではどんなお話を?
前田:出会って5~6年ご一緒させていただいていますが、基本的に任せてくれて何もおっしゃらない方ですね。
――三池組でお仕事をされている方は、みな大変だけれど楽しいとお話されています。
前田:そうなんですよ。時間がタイトで寝る時間もないし、すごく大変なのですが楽しいんです。なぜかって考えたのですが、三池監督自身が先頭を走ってくれているので、それに引っ張られて自分たちも「もうちょっと考えてみます」という形になっていくんです。決して言葉には出されませんが、「もうちょっと出るだろ、おまえならやれるでしょ」みたいな期待を感じるんですよね。だから頑張れるし、楽しいんだと思います。
――前田さんならではの作品の見どころを。
前田:キャラクターの個性がすごく強くて、それぞれの魅力を放っています。原作からドンピシャかというのは分かりませんが、かなりこだわってキャラクターを作っていったので、ぜひ見て欲しいですね。
(取材・文:磯部正和)
トレンドニュースでは、本作を支える技術者たちのインタビューを連載。
第3回は、現場で撮影を担当した、カメラマンの北信康さんにお話を伺います。
【特別映像】木村拓哉演じる万次 「Who is 万次?」>>
【特別映像】戸田恵梨香演じる乙橘槇絵 大きなスリットが入った女剣士の姿>>
そのほかキャラクター特別映像>>
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前田勇弥(まえだ・ゆうや)
スタイリストとして主な作品は、『悪の教典』(2012)、『喰女‐クイメ‐』(2014)、『土竜の唄』シリーズ(2014/2016)、『寄生獣』(2014)、『風に立つライオン』(2015)ほか。
トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
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