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GP帯(夜7~11時)放送の春ドラマが出そろった。
初回の視聴率で見ると、天海祐希主演『緊急取調室』シーズン2が17.9%。2位以下を4ポイント以上ひきはなしトップとなった。ただしこの日は直前に『世界フィギュアスケート国別対抗戦』が放送され、20%ほどでドラマにバトンタッチしている。番組開始時のこのげたが数字を大きく押し上げた可能性があるので、追い風参考というべきかもしれない。

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天海祐希, Dec 14, 2016 : 映画「恋妻家宮本」の完成披露舞台あいさつ(写真:MANTAN/アフロ)


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実際、2014年1月から放送されたシーズン1は、平均視聴率12.9%・データニュース社「テレビウォッチャー」の満足度3.74と、悪くはないが決して傑出していたわけではない。視聴率では、上は16.1%から下は11.2%とバラツキは結構大きかった。満足度も、3.58から3.94と上下に大きくぶれていた。
「"密室の銃撃戦"ともいうべき緊迫の取り調べ劇」と謳(うた)われているが、シーズン1では勝利の方程式がまだ確立していなかったようだ。

■大化けするか? シーズン2

ただし90年代からヒットドラマを多数生み出してきた井上由美子が脚本担当だ。そこにはまり役の天海祐希が主演、脇を実力派ベテラン俳優で固めるシーズン2は、もしかしたら大化けするかもしれない。

警視庁捜査一課の刑事である真壁有希子(天海祐希)は、射撃訓練を受けていた。
いっぽう多摩川河川敷で、宅配便の配達車の中から28歳の配達員、小牧修介(石田卓也)が殺されているのが見つかった。死因は薬物による中毒死。なぜか小牧は死ぬ直前に必要のない傘を広げていた。
現場捜査中の警察官に「私が殺しました」と白河民子(三田佳子)が自首した。民子は40年前に夫を亡くしてから、孤独だが花を愛しひっそりと暮らしていた。

被害者の側にあった水筒のお茶には薬物が混ぜられていたが、そこには民子と同じマンションに住む綾野ふみかとその子供達の指紋が残っていた。
自首した民子は数時間とたたないうちに記憶が曖昧になり、証拠品と指紋の不一致など事情聴取をする有希子らの捜査は難航した。
民子は自首していた。にもかかわらず証拠不十分の老女の誤認逮捕となれば警視庁はマスコミに叩(たた)かれる。
有希子ら緊急事案対応取調班"キントリ"は、奇想天外な手口と動機の老女に苦戦を強いられる......。

■取調室の緊迫感を音楽が彩る

冒頭の射撃演習シーンの射撃音が、強烈な爆音でドラマ開幕のスタートを知らせる。
鳴り響いた足元でじわじわとリズムセクションを巧みに使用し、BGMとしての音楽でシーンを彩る。
音楽を手掛けたのは、林ゆうき。経歴を見てみるとなんとも面白い。
高校時代に男子新体操の選手となり、競技のためのBGMの選曲に興味を持ち作曲を始める。のちには新体操用の曲を提供するまでになる。

2009年からは多くのドラマ音楽に携わる。最近では2014年『緊急取調室』シーズン1の他、連続テレビ小説『あさが来た』、『フラジャイル』、『グッドパートナー無敵の弁護士』、『嘘の戦争』など。
音楽の特徴は、BGMを主体とする上でテクノやエレクトロ、ミニマリスムなどを得意としているようだ。
第1話の中で20曲以上の音楽が流れるがモチーフの使い方が構築的に変化していく様子は興味深い。次第にダイナミズムを増し事件が解決に向かうにつれ壮大な音楽が後押しする。こうした効果的な音楽構成は、なるほど説得力がある。
例えば冒頭の射撃シーンの後、殺人事件現場では意外にもミニマリスムという音の少ない音楽で特にメロディは使わずリズムセクションのモチーフが繰り返される。メロディでシーンを盛り上げるのではなく、セリフや視覚的な背景に音楽が色を足している程度で来る。

捜査が始まると、有希子らが行う民子への事情聴取が一挙にピークを目指す。民子の自供と有希子の迫りくる尋問を彩る音楽。林氏の職人芸は圧巻だ。
大詰めに向かい民子が真実を語り始め、物語は解決へと向かう。この時の音楽は、モチーフだけのBGMに少しずつメロディを織り交ぜ、徐々にメロディの比重を増していく。ラストのシーンでは、いつの間にかメロディが盛り上げるドラマ音楽として迫力満点となっている。

■犯罪から見える人生の悲しみ

物語のクライマックスで有希子が民子に投げ掛ける「非を犯すことは、自分自身を踏みにじることではないですか!」という言葉。
犯行の動機に迫る鋭い一言だが、結果は77歳老女の人生に秘められた孤独と悲哀を暴いてしまう。

シーズン1は取り調べで犯人と対決する物語であると共に、有希子の夫・匡の殉職の謎に迫るなどホームドラマ的要素も入れていた。
ところがシーズン2では、完全一話完結の取調と心理戦による駆け引きに徹するようだ。民子が有希子の生活を問うやりとりも出て来るが、有希子はきっぱりその話をはね付け、民子への追求に邁進(まいしん)して行く。
ただし決定的な証拠を突きつけることに躊躇(ちゅうちょ)もみせる有希子。結果として、老女の孤独で哀しい人生がより浮き彫りになってしまう。井上由美子の脚本力の勝利と言えよう。

やはり取調での心理戦による駆け引きに徹することで、シーズン2が大化けする予感も持たせる初回だった。
「人生を積み重ねる中で、超えてはいけない一線を越えてしまった普通の人々」を1話完結で描くようだが、視聴者が自分事として見入ることができる内容だ。

今クールは"警視庁捜査一課"ドラマがめじろ押しだ。
『警視庁捜査一課9係』『警視庁・捜査一課長』『小さな巨人』『緊急取調室』。
これらを見比べる楽しみ、展開の楽しみ、キャストを追う楽しみ。各ドラマはさまざまな視点で視聴者を楽しませるだろうが、この"キントリ"はユニークな存在として光を放つことだけは間違いなさそうだ。

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文責・パリ帰りのピアニスト はたじゅんこ
   次世代メディア研究所

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