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沙村広明原作の人気漫画を木村拓哉主演で実写映画化した『無限の住人』(4月29日公開)。映画を陰から支えるスタッフインタビュー連載の最後を飾るのは、本作の指揮をとった三池崇史監督。これまで数々の話題作を世に送り出してきた三池監督に、自身のスタイルや初めてタッグを組んだ木村拓哉という俳優の印象などを聞いた。

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監督・三池崇史、木村拓哉主演の映画『無限の住人』(4月29日公開)


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■原作を捻じ曲げることはできない!

―― 沙村広明さんの原作を読んでどんな印象をお持ちになったのでしょうか?

三池: 個人的な感想で言うと、"女性"を描きたい作家なのかなって。女性が逆境のなかでみせる、はかなさや美しさみたいなものを。頭で考えるより、衝動というか沸いてくるもので展開していくような作品という印象を持ちました。天津影久(あのつかげひさ)との対決をもって原作は終わっていますが、廃刀令が施行された後の、万次(まんじ)の後日談が素晴らしいんですよね。力強く、才能のある作家だなって思いました。原作が大好きです。

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木村拓哉演じる万次と杉咲花演じる浅野凜『無限の住人』(4月29日公開)


―― 映像化するのに意識したことは?

三池: 原作を捻じ曲げることはできないというか、それができなければ原作がないものを撮ればいいわけで。明確なメッセージがシンプルに貫かれているので、原作のせいにして、いろいろぶつけられるなという感じがありましたね(笑)。

―― かなり激しいアクションシーンも見どころです。

三池: あまりアクションが強調されないようにとはいつも思っているんです。アクション映画とは違う感覚が欲しいんですよね。日本にはアクションを"みせる"ための映画を作る伝統がないので。

―― それはどういう意味でしょうか?

三池: たとえば(凶戴斗(まがつたいと)役の)満島(真之介)くんは今回が初めての立ち回りで、刀を持つ役も初めてだったのですが、馬にも思い切り乗っているんです。2日間で乗れるようになっちゃって。やっぱり沖縄のやつすげーってね(笑)。でも日本映画でこういった技術を使うところがあまりない。本当は撮る側も撮られる側も20年、30年って積み重なっていってアクション映画って出来上がっていくと思うんです。昔は撮影所が人を育てていたのですが、いまはそういう部分に投資するという考えもないですからね。

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満島真之介演じる逸刀流の剣士・凶戴斗(まがつたいと)『無限の住人』(4月29日公開)


■「木村拓哉がバチバチに来る」アクションシーン

―― そんななか、木村さんと対峙(たいじ)する敵たちの戦いのシーンは迫力がありました。

三池: 満島くんにしても初めての立ち回りのなかで、木村拓哉がバチバチに来るので、彼もバチバチに行くしかない。そういう経験は財産になっているし、高められていくんです。

―― 木村さんは以前のインタビューで、三池さんからはほとんど演出を受けなかったと仰っていました。

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監督・三池崇史、木村拓哉主演の映画『無限の住人』(4月29日公開)


三池: 「この作品をこうしよう」とか「こう思っているからこうして欲しい」みたいなことを話し合うのがあまり得意じゃないんです。映画とか登場人物に関しての考え方って、監督と役者って全く違うと思うんです。だからこそ面白い部分もあって......。
それを無理に話し合ったりすると、お互い共通点を見つけて妥協するわけですよ。だからあえて話すのではなく、たとえば「ここはガチで芝居を」というのを言葉にするのではなく、ガチじゃないと切り抜けられないような人数を敵に持ってきたり、動きのいいやつをぶつけたりすることによって、相手は「ガチじゃないと切り抜けられないな」ってならざるを得ない状況にする。そういうやり方ですね。

■ これほど存在感のある人間に初めて出会った!

―― その意味では木村さんとのタッグはいかがでしたか?

三池: 役者としてというよりも、これほど存在感のある人間に初めて出会いました。朝一から片目をつぶしたメイクをして、ずっとそのまま十時間以上いるんですよ。本人は「万次はこうですよね」って。格好いいけれど、気が狂っちゃうんじゃないかなって思うわけですよ。こちらも「ためしにやってみましょうか? でもどこかできつかったら恥ずかしがらずに言ってくださいね」って話したけれど、踏ん張るんですよ。あとは、全編足場の悪いところでの撮影でもずっと草履なんです。

―― そうさせたのは三池組の熱意だと仰っていましたが。

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監督・三池崇史、木村拓哉主演の映画『無限の住人』(4月29日公開)



三池: こちらの熱意というのは、どうやって役者を守るかということ。特殊メイクで足を作っておいて、引いた絵でどうみせるかとか、万次は武器を収集しているので、戦った西洋人から靴を入手していた......みたいな解釈もできる。そういう可能性を衣装合わせの時に提示したり......そういうことですよね。でも彼は、草履でやることを選んだ。日本映画史上初じゃないですかね。不通はみんな地下足袋で、その上に草履はいて、肌色塗ったりしていますよ。

―― なぜそういったことにこだわったと思いますか?

三池: 当時は「SMAP」というスーパーアイドルの木村拓哉という存在で、万次という人間からあまりにも遠い位置にいた人。こうした肉体の痛みや不自由さを表現するために、芝居の経験ということじゃない、なにかを得たかったんじゃないのかなって思うんです。(片目で)見えないことと足の痛みと寒さ、そんななか、ずっと現場にいるんですよ。普通ならカットがかかって、次の撮影が1時間後だったら、車のなかに帰りますよね。

―― 先ほど、原作を捻じ曲げることはできないと仰っていましたが。

三池: 単純に原作者がみて「やっぱり映画化を許すんじゃなかった」と思わせてはいけないと思っています。結果的にそう思われてしまうことはあるかもしれませんが、思わせないように頑張るってことですね。どう頑張るかというと、原作のいいところ、好きなところを増幅させていていく感じ。ただ自分の解釈を膨らませて「こんな見事な映画になりましたよ」なんて言われても原作者は困っちゃうと思うしね。沙村さんは長い時間かけて漫画を描いているので、その時間ごと否定するわけにはいかないので、結果どう感じるかは分かりませんが、われわれは「映画化なんて許すんじゃなかった」とは思われないようにやったと信じています。

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木村拓哉主演『無限の住人』(4月29日公開)


(取材・文・撮影:磯部正和)
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三池崇史(みいけたかし)
1960年生まれ。大阪府出身。1991年にビデオ映画『突風!ミニパト隊』で監督デビューし、1995年公開の『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』で初の劇場公開作品を手掛ける。その後は、個性的な作品を世に送り続け、海外の映画祭でも高い評価を得ている。
座右の銘は「市川海老蔵」。その理由を「厄介な人だけど面白い。優しさもあり人間として強い」と語っていた。

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