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高倉 健主演映画『鉄道員(ぽっぽや)』や『あ・うん』など数々の名作を世に送り出してきた降旗康男監督×木村大作キャメラマンのコンビが贈る、新作映画『追憶』(5月6 日公開)。劇中、主演の岡田准一をはじめ、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、吉岡秀隆、安藤サクラといった、次世代の日本映画界を背負う実力派俳優たちが濃密な人間物語を展開するが「良いキャスティングだったね」と口をそろえて語る降旗監督、木村キャメラマン。日本映画界のレジェンドが撮影秘話や、好きな俳優などについて語った。

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木村大作キャメラマン×降旗康男監督 映画『追憶』(5月6 日公開)


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■久々でも何も変わらない互いの信頼感

――9年ぶりのタッグとなりましたが、以前と変わった部分はありましたか?

降旗: 特にないですね。9年の間にいろいろなことがありましたが、現場では何も変わっていませんでした。

木村: 『あ・うん』から『鉄道員(ぽっぽや)』までも10年近く空いていましたから。特別な時間ではないですよ。ぜんぜん変わらない。

――その間に、木村さんは監督として作品(『劔岳 点の記』、『春を背負って』)を撮られています。

木村: あれはキャメラマンの仕事がないからやっただけ、なんて(笑)。映画をやっていきたいけれど、仕事がない。それだったら、自分で撮っちゃおうって。映画は企画が通れば撮れますし、仕事を勝ち取るためにやりました。だから監督を経験したからって、二人の関係は何も変わらないです。

■二人の間には言葉はいらない

――本作はオリジナル脚本による作品ですが、撮影前に打ち合わせなどはされたのでしょうか?

木村: 基本的にはしませんね。脚本に対する僕の意見は時々話しましたが、降旗監督もきっと同じ考えだろうという解釈で進めていました。

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木村大作キャメラマン 映画『追憶』(5月6 日公開)


降旗: そうですね。細かい話はしません。

木村: 事前の話し合いって危険な部分もあるんです。言葉で表現できないことだってあるし、それだったら行動したほうがいい。もし僕のすることが間違った方向に進んでいたら「大ちゃんそれ違うよ」って言うと思うんです。何も言わないというのは合っているということ。膝を突き合わせて、細かいことを話す必要がないんです。
先に行動していると、監督の狙いやどういうことを考えているかが分かってくるんです。僕ぐらい降旗監督のことがわかるキャメラマンはいないかな。だからその通り撮ればいい。

――そういう信頼関係は、初めてタッグを組んだときからあったのでしょうか?

降旗: 最初のころからそうでしたね。

木村: 『駅 STATION』(1981年)が最初でしたが、その以前から降旗監督の過去の映画を見ていて、自分なりの方向性は見えていたんです。それを実践していったのですが、監督からは意見がなかったので「これでいいのかな」って進めていきました。

■岡田准一は受けの芝居が良い

――本作の主演を務めた岡田准一さんは、お二人からみてどんな俳優さんですか?

木村: 本人には"受けの芝居"がいいと話したんです。受けの芝居って実は難しい。役者によっては変な教育を受けている人もいて、相手のセリフが終わらないと表情を出さない人もいる。でも、一言しゃべると先の話は分かるじゃないですか。そこで表情は変わるわけで......そのために受けの芝居は多重カメラで全部撮っているんです。受けの芝居を撮っていて無駄がないという俳優は、30代という若さでは、なかなかいない。岡田さんはそこがいいよね。

降旗: 台本はダイアローグ(対話)が主体で書かれていますが、絵で表現したいのはダイアローグをしゃべる人物。ダイアローグをなぞるのではなく、ダイアローグを言う人物にこそなることが大事。その意味で、岡田さんと小栗さんが対峙(たいじ)するシーンでは「勝手にセリフを変えていいから、自分たちのやりたいようにやってくれ」って言ったんです。そこから二人もグッと入り込んでいきました。

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降旗康男監督 映画『追憶』(5月6 日公開)


――長年、数々の名優を撮ってきたと思われますが、お二人にとって"いい俳優"とはどんな俳優でしょうか?

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『追憶』(5月6 日公開)
(C)2017 映画「追憶」製作委員会


降旗: ダイアローグをただ読む俳優さんは面白くないですね。ダイアローグをいかすようなアクションやイントネーションを、しっかり役柄に染み込ませるような俳優さんがいいですね。

木村: 僕の場合は端的で、お芝居をする俳優さんは嫌ですね。「あの人うまい!」と言われている人はあまり好きじゃない。芝居をしない俳優さん、もっと言えば、日常が出ている俳優さんがいいですね。30歳過ぎれば人生経験もある程度あるだろうし、そういうものがセリフを言わなくても自然と出ている、精神性を感じるような俳優さんが好きです。まあ、すべてがそういう俳優さんだと話が進まなくなってしまうので、せめて主演、その相手役、マドンナぐらいはそういうラインアップをそろえたいです。

――『追憶』はそういった俳優さんたちがそろっている印象を受けますが。

木村:そうだね。基本的にはみんな頑張ったね。

■この作品は女優を含めてすべてノーメイクで撮影!

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『追憶』(5月6 日公開)
(C)2017 映画「追憶」製作委員会


――長年タッグを組まれていますが、改めてお互いの魅力を教えてください。

木村: 僕にとって降旗監督は人生の師でもあるんです。20年ぐらい前に、すぐ人と衝突する自分自身の生き方が嫌になって、降旗監督に相談したことがあったんです。降旗監督は、スタッフからも慕われているのですが、僕は逆でしょ? だからどうしたらいいか教えてくださいって聞いたことがあったんです。その教え通り生きようと思ったこともあったんです。結局元に戻ってしまったけれど(笑)。

降旗: ものすごくリアリストなんだよね。映画ってすごくお金がかかる。そういうことに対して「このぐらいのお金ならこのぐらいのことができる」ってものすごくしっかりと判断ができる人なんです。そこから仕事の仕方を考えていける。夢見る映画少年な一面も持ちつつ、やっていることはリアルだなって感じます。

木村: 映画ってお金なんですよ。この規模でこのスケジュールだったら、このぐらいだろうってね。その予算の中で、どれだけすごい映像を作るのかが僕の役目。お金のことを考えずに、好きなことをやっていたら、映画界から切られちゃうよね。出来上がった作品を見て、実際かかった以上のお金をかけて作ったんだろうなって思わせたいという気持ちはあります。

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『追憶』(5月6 日公開)
(C)2017 映画「追憶」製作委員会


――長年培ってきた技術力が成せる技なのですね?

木村: いや、技術だけでは映像はとれないんです。なによりも、人。いいスタッフに囲まれないと、いい絵は撮れない。この作品、実は俳優さん、女優さんを含めてノーメイクです。最近の映画ではないんじゃないかな。メジャーな映画だからね。ノーメイクでもしっかり映し出せるんです。本当にいいスタッフですから。

――映画界のレジェンドが大切にしていること、座右の銘を教えてください。

降旗: 「風の吹くままに」かな。

木村: 最近は「誰かがいかなければ道はできない」という言葉が残っています。この言葉、青年時代に聞いて頭にインプットされてから抜けないんですよね。『劔岳 点の記』で香川照之に言わせたセリフなんだけれど、仕事の仕方にもそういうところがある。「俺がいくんだ、俺について来い」みたいなね。

――「最近は......」ということは、以前は違う言葉だったのでしょうか?

木村: それ以前は、降旗監督と同じ「風に吹かれて気の向くままに」でした。その話でいうと、(高倉)健さんの『あなたへ』(2012年)という映画の次の作品のタイトルは『風に吹かれて』だったんです。シナリオもできていて、準備にかかろうというときに、健さんが体調を崩されて......。結局は実現しませんでした。僕は『あなたへ』に参加していないので、『風に吹かれて』が実現すれば、僕のよりどころになったのだけれど、『あなたへ』が遺作になってしまって残念です。

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『追憶』(5月6 日公開)
(C)2017 映画「追憶」製作委員会


映画『追憶』は、降旗康男監督×木村大作キャメラマンの巨匠コンビが奏でるヒューマンサスペンス。主演に岡田准一を迎え、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラ、吉岡秀隆と日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結した。一つの殺人事件をきっかけに刑事、被害者、容疑者という形で25年ぶりに再会を果たした幼なじみの3人。それぞれが家庭を持ち、歩んできた人生が、再び交錯し運命の歯車を回し始める――。2017年5月6 日公開。

(取材・文・撮影:磯部正和)

降旗康男(ふるはた・やすお)
1934年8月19日生まれ、長野県出身。1957年、東京大学文学部仏文学科卒業後、東映東京撮影所に入社。1966年に映画『非行少女ヨーコ』で映画監督デビューを果たすと、『新網走番外地』シリーズや、『駅 STATION』(81年)、『あ・うん』(89年)、『藏』(95年)など数々の作品を手掛け、『鉄道員(ぽっぽや)』(99年)では日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞するなど、日本を代表する映画監督。座右の銘は「風の吹くままに」。

木村大作(きむら・だいさく)
1939年7月13日生まれ、東京都生まれ。1958年東宝に入社。撮影部に配属され『隠し砦の三悪人』や『用心棒』といった黒澤明監督作品に撮影助手として参加。1973年に撮影監督デビューを果たすと『八甲田山』(77年)、『復活の日』(80年)、『駅 STATION』(81年)、『あ・うん』(89年)などを担当する。監督作品として『劔岳 点の記』(09年)、『春を背負って』(14年)がある。座右の銘は「誰かがいかなければ道はできない」。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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