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岡田准一はジャニーズ事務所の男性アイドルグループ・V6のメンバーだが、もう何年も前からアイドルというより、独自の地位を確立する俳優の風格が備わりつつある。

阿川佐和子は「若い頃から、こんなに落ち着きのあるアイドルっているのか?」と不思議に思っていたという。
そんな二人の会話は、普段着のままの極めて自然な言葉のやりとりだが、よく聞くと含蓄のあるものとなっている。最大の原因は、岡田が若い頃から、じゅうぶんに考えた上での言動に心掛けてきたためのようだ。

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April 2, 2017, Tokyo, Japan - Japanese author Sawako Agawa holds a talk show with Japan's prominent swordsmith Kunihira Kawachi(Photo by Yoshio Tsunoda/AFLO)


岡田准一 主演映画『追憶』(2017年5月6日公開)予告編映像やキャスト紹介など>>

■上京

岡田准一は14歳の時、「天才・たけしの元気が出るテレビ!」内コーナー"ジャニーズ予備校"に母が応募して合格。ジャニーズ事務所入所3カ月で、V6の最年少メンバーとしてデビューした。ほぼ下積みがないまま、瞬く間に人気アイドルに上り詰めてしまったのである。

それでも当初、苦労はあった。14歳という年齢を考えれば無理もない。
そもそも大阪から上京する列車の中で聞いていたのが、ミスチルの「星になれたら」。

「街を出て行く」
「夢の続きが今も捨てきれない」
「ちょっと違うんだ 昨日の僕とは」
「会えなくなるけど さみしくなんかない」

こんなフレーズを何度も何度も聞きながら、曲に背中をおされるように、女手一つで育ててくれた母との別れを受け入れている。

■デビュー後

しかしデビュー後は、決して順風満帆とはいかなかった。
V6の他のメンバーは何年ものジュニア時代を経てデビューしている。歌も踊りも基礎のない岡田は、メンバーにも先生にもずっと注意されっぱなしだった。
「YOUだけレベルが足りないから」
ジャニーズ事務所のトップにも、そうたしなめられていた。劣等感が絶えず付きまとった。

それでも人気アイドルグループの一員として活動しながら、俳優として徐々に活躍し始める。
ドラマ『木更津キャッアイ』で初の単独主演。その後、『図書館戦争』『永遠の0』といった映画、大河ドラマ『軍師官兵衛』など、数々の大作で主演を務める。
特に『永遠の0』で第38回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞を受賞(2014年)。レベルの足りないアイドルは、かくして最高の主演俳優に上り詰めたのである。

■岡田准一を育んだもの

母子家庭で寂しい思いも抱きながら育った岡田。それでも母の古風な方針が核を確立させている。

「将来、あなたに面倒見てもらう気はない」
「自分の責任で生きて行きなさい」
「一人の男として育てる」

小学生の頃から、こんな風に言われて育っている。結果としてデビュー後も、「大人の男とは何か」をずっと追い求めていたという。
俳優業での出会いも大きい。

すごい人と尊敬していた緒形拳に、「向いている! 俳優つづけろ」と言われた。
「ナチュラル目指してるだろ。でも、それだけが芝居じゃない」と指導も受けた。

田村正和はロケの空き時間には、ずっと台本を読み、どう演技するか考えていた。そんな背中が岡田に真摯(しんし)な姿勢を伝えた。

緒形拳以外に、渡哲也や原田芳雄も「しっかりした時代もの・歴史ものが演じられる人になって欲しい」と言い残した。それで30~40歳の時に演じられるようになりたいと岡田も考えるようになった。
「勉強しなけりゃいけない」......いつの間にか、1日に映画3本、あるいは本1冊が自分のノルマになった。20代の日々である。
かくして33歳の若さで、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の主役を務めるに至った。

■母子家庭から豊かな人間関係へ

母が育んだ人間としての核は、多くの出会いの中で大きく膨らんでいった。
上京後、高校時代にずっと一緒に過ごした俳優・高橋一生の存在も大きかった。屋上で「JUST THE TWO OF US」を聴きながら、人生を語った時間が、自分でものを考え判断する力を養っている。

そして何より、最大9歳年上のV6のメンバーらに大らかに見守られて来たのが、肩に力を入れない自然な振る舞いにつながっている。
実はアイドル業と俳優業は二律背反な部分がある。
どんどん汚くなって行くことを良しとする俳優業。かたやアイドル業は、かわいいまま、きれいなままでいることを求められる。そんな矛盾を乗り越えられたのは、V6のメンバーが皆そこを自然に切り分けてきたからかもしれない。

「V6のメンバーと一緒にいる時間を楽しみたい。楽しくずっといたい」
こう語る岡田准一だが、こうした人間関係の中で、アイドルと俳優の二面性をどう成熟させていくのか。そして「考えて違う役柄を演ずるのではなく、人間力で映る」俳優にどう進化していくのか。

芸能人生の軌跡に阿川佐和子が迫る『サワコの朝・岡田准一』は、ぼんやり見ているうちに、おなかにズンズン重い思いが響いてくる、インタビューの佳作となっている。

文責・次世代メディア研究所 鈴木祐司

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