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刑事ドラマが5本並んだ2017年度春ドラマ。
異彩を放っているのは長谷川博己主演『小さな巨人』だ。警察ドラマだが、主なテーマは組織に対峙(たいじ)する個人。TBS日曜劇場がこれまで何度も放送してきたドラマと路線が似ている。
それもそのはず。日曜劇場快進撃の基盤をつくった大ヒットドラマ『半沢直樹』『下町ロケット』『ルーズヴェルト・ゲーム』のスタッフが再結集して制作にあたっているのだ。
さらに顔芸とも言われる表情での演技で視聴者を魅了する香川照之を始め、落語界からの抜擢(ばってき)やNHK朝ドラからのヒロイン起用など、役者陣の雰囲気まで同じトーンになっている。

サムネイル

TBS日曜劇場の視聴率と満足度


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■視聴率は必ずしも順調とは言えない

このテイストの日曜劇場の中では、今回の視聴率は必ずしも順調とは言えない。
そもそも大ヒットの『半沢直樹』は、初回から19.4%、2話目で20%を超えるなど、とてつもないロケットスタートを切っていた。その後も一度も数字を下げることなく進展し、最終回では42.2%と歴代ドラマ2位に輝く大記録を打ち立てたほどだ。

『半沢直樹』は例外中の例外として除くとして、他2作と比べてみよう。
初回は阿部寛『下町ロケット』・唐沢寿明『ルーズヴェルト・ゲーム』と互角だった。ところが2~5話では、『下町ロケット』に大きく離されてしまった。それでも『ルーズヴェルト・ゲーム』とは大差ない。
過去3作との単純比較では、後半に向け15%超えは期待できる軌跡を描いていると言えよう。

■満足度は堅調

テレビ番組の良し悪しは、視聴率という量的評価だけでなく、実際に見た人たちの満足度など質的評価でも測ることができる。データニュース社「テレビウオッチャー」の満足度調査(5段階評価)でみてみよう。

『半沢直樹』は連続ドラマの初回としてめったに出ない好記録で始まっていた。その後も満足度はどんどん上昇し、視聴率が30%に迫った5話では4.48とあり得ない高さになっていた。その後も4.4台を連発して、最終回の視聴率42.2%につながった。やはり例外中の例外と言わざるを得ない。

それほどではないまでも、『下町ロケット』も初回から3.9を超え、2話以降はずっと4.1超と稀有(けう)な実績を残した。3.72でスタートし、その後一度も4.0に届いていない『小さな巨人』は、残念ながら『下町ロケット』には及びそうもない。
それでも『ルーズヴェルト・ゲーム』とは、満足度でも互角だ。1~3話で上回り、4~5話で少し挽回された。その後は、7話で4.0を突破し、8話で4.11、最終回4.22と順調に上昇していた。ここまでの『小さな巨人』も、順調に環境を整えており、『ルーズヴェルト・ゲーム』と同様の展開をする可能性は十分あると言えよう。

■どんでん返しの妙

『小さな巨人』は今回の5話で芝署編が終わった。
当初は小野田一課長(香川照之)がゴーンバンクとつながっていると思われたが、実際には芝署の三笠署長(春風亭昇太)が本当の敵だった。
その証拠を見つけ出すための捜査は、難航を極めた。ところが小野田一課長の協力もあり、タイムリミットギリギリで証拠にたどり着く。そして間一髪で、ゴーンバンク社長の息子・中田隆一(加藤晴彦)逮捕となった。同時に三笠署長の犯罪も暴くことに成功した。

ここまで"どんでん返し"の連続で、息もつかせぬ展開が続いたが、物語は5話最後でさらに大きな"どんでん返し"が待っていた。三笠署長への処罰は一切なしで決着してしまったのである。
捜査一課長が犯罪に加担していたのでは、警察への信用が保てないというのが表向きの理由。
そして本当の事情は、三笠署長が警察の天下り先のあっせんをしており、それをつぶすわけにはいかないという組織の論理が優先されたのである。

エンディングは現在と過去のさまざまな会話が交錯する。

三笠署長 「この私を敵に回すということは、警察組織全体を敵に回すということ」
小野田一課長 「われわれ警察にとっての最もやっかいな敵は、警察組織そのものということかもしれない」
三笠署長 「いずれわかるよ。おまえたちがやっていることは、おまえたち自身を否定することになる」
小野田一課長 「正義だけでは国民の真の安全というものは守れない。おまえたちがめざす捜査一課長というのは、そういうものなのだ」
香坂 「そうだとしても、私は私なりの正義を貫き通してみせます」
三笠署長 「香坂、おまえはまだ何もわかっていない。本当に恐ろしいのはあの男。出世のために仲間を裏切ったからだ。敵は味方のふりをする。おまえもせいぜい気をつけることだな」

芝署編ラストは、香坂(長谷川博己)のナレーションで終わる。
「警察とは何なのか。いったい誰が味方で誰が敵なのか......このあと本当の敵を知ることになる」

見事な"どんでん返し"であり、これまでの布石の完璧な回収だ。
そして何より、6話以降の豊洲署編の完全無欠の番組宣伝になっている。これで『小さな巨人』中毒にならずに済む視聴者はいるだろうか。試しに、第5話をもう一度見直してみることを強く勧める。

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文責・次世代メディア研究所 鈴木祐司

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