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かつて"ドラマのTBS"と名をはせた同局は、近年新たな路線を模索している。
一番直近の大変革には、2015年秋にGP帯(夜7~11時)ドラマを4枠から3枠に減らした改編がある。その代わりに、「テッペン!水ドラ!!」という30分のドラマ枠が新設された。深夜ならではのエッジが効いた新しい企画の開拓や、次世代のドラマクリエイターの発掘・育成が目的という。
オダギリジョー主演『おかしの家』で始まり、前田敦子『毒島ゆり子のせきらら日記』がシリーズ平均で最高視聴率2.5%を記録した。他に松井珠理奈『死幣-DEATH CASH-』、剛力彩芽『レンタルの恋』など、尖(と)がったドラマを中心に放送してきたが、今回の『3人のパパ』はハートフルコメディと大きく路線を変えてきた。

サムネイル

"テッペン!水ドラ!!"の視聴率


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■アイデア満載の新路線

クール前半戦で見る限り、新路線は視聴率的にまずまずのようだ。
同枠最高視聴率だった『毒島ゆり子のせきらら日記』を除くと、『3人のパパ』は傑出しているわけではないが、極めて安定した数字をとっている。
尖(と)がったドラマは話題になりやすいが、視聴率が乱高下することがある。『死幣』『レンタルの恋』などは、2.5%未満の範囲で振り幅が1%ほどに達した。『毒島ゆり子のせきらら日記』に至っては、最低と最高の差が2%を超えた。まさに乱高下と言えよう。

これらに対して『3人のパパ』は、前半戦5回は0.5%の範囲に収まった。ハートフルコメディは、極めて安定した実績を残している。しかもコメディだからと言って、あなどってはいけない。実は本や演出にアイデアが満載で、志の尖(と)がった作品となっている。

筆者が見る限り、少なくとも3つ斬新な部分がある。

1つは"イケメンがイクメン"というアイデア!

ルームシェアする3人のイケメン男子の家に、突然赤ちゃんがやってきた! 平林拓人(堀井新太)は、遅刻魔のサラリーマン。帰宅すると部屋の中で赤ちゃんがスヤスヤと眠っていた。そこには、「しばらく預かってください。あなたの子供です」と衝撃的なメッセージ。ルームメイトの羽野恭平(山田裕貴)は、大手商社に勤めるエリート。婚約者の高橋るい(相楽樹)と交際中だが、合コンで知り合った何人かと、ひそかに浮気している。
もう一人のルームメイト・岡山朔(三津谷亮)は、アパレルブランドで働く、クールでマイペース。センスが良く中性的なので、女性にモテるが「女性に興味がない」。突然現れたベビーに仰天しながら、皆それぞれ心当たりがあり、誰も現実を受け入れない。ところが、泣きやまない赤ちゃんという現実を前に、「ほっとけない!」と拓人が心を決め世話し始める。すると恭平も朔も、次第に手伝うようになる。

2つ目は、コメディなのにドキュメンタリーという演出。

深夜のコメディだが、演ずる役者がドキュメンタリー・タッチでインタビューに応ずるシーンがあり、構成として斬新かつ新鮮だ。セリフや演技に込めるのではなく、「知りたいところは聞いちゃおう」という思い切りの良さ。シーンの切り替えもわかりやすくなり、飽きを感じさせない演出がおもしろい。

3つ目は、男女で両極端な番組評価!!

初回放送後のネット上の感想・評価は男女で真逆になった。男たちは非難ゴーゴー。
「この枠で初めから興味がないのは初めて」「やっぱり興味ないや。すまんね」。
正反対に、女たちは高評価。「予想以上に面白い。3人の掛け合いには、面白さだけじゃなく、安心感も」「(見てて)初めから泣くとは思わなかった(中略)赤ちゃんかわいすぎる」「赤ちゃん癒される!可愛い。来週も楽しみ~~(^ω^)」

テレビ番組は毀誉褒貶(きよほうへん)が激しいほど名作という見方もある。制作陣は視聴者の反応も織り込み済みで、いろいろなアイデアをちりばめてドラマを制作している可能性がある。心憎い!

■ここまでのストーリー展開

とりあえず1週間預かることにしたイクメン3人は、赤ちゃんを晴大と名づけた。
しかし恭平と朔は当初、拓人に晴大の世話を押し付けようと企てる。ところが拓人がいなくなってしまうと、恭平と朔はそれぞれ赤ちゃんと1対1で向き合うことになりスッタモンダする。かくして3人の関係に次第に軋(きし)みが生ずる。

そして1年。
シェアハウスに掲げられていた「(互いのプライバシーに)深入りしない」というルールは、いつの間にか「子育てルール」に変わっている。しかも3人はすっかり晴大にメロメロ。誰が初めて「パパ」と呼ばれるかを競うようになっていた。

今回の第5話では、恭平(山田裕貴)と朔(三津谷亮)が仕事で1週間家を空けることになり、拓人と晴大の2人きり生活が始まろうとしていた。ところが拓人は恭平から借りた自転車から転げ落ち、右腕の骨にヒビが入る大けがをしてしまう。
そこで拓人と接近したい華(松井愛莉)が、1週間の母親役をすることになった。

有給を取って新妻さながらに張り切る華。だが彼女のやる気とは裏腹に、晴大はイヤイヤ期に突入。何でも「イヤ」という晴大に苦戦しながらも、華は必死に世話をする。
そんな折、晴大が電池を飲み込んだと思い込んでしまった華は、吐き出させようと晴大を叱り、泣かせてしまう。それを見た拓人は「母親ぶってんじゃねぇよ!」と華を糾弾してしまう......。

華が飛び出したと気づいた拓人は、残された育児ノートを読み、彼女の努力と愛情の大きさを知る。
......そして感動的な仲直りが、なぜかカラオケルームで行われる。

ドラマのプロデューサー・松本友香氏は、制作意図をこう語っている。
「"ゆとり・さとり"といわれる世代に生まれた私は、この世代が"愛"にも"生(性)"にも無関心と無責任であることに漠然とした不安を感じていました。このひっかかりをドラマにできないかと思ったのがこの企画の始まりです」「"命の象徴・赤ちゃん×イマドキの若者"の不思議な違和感が生む笑いや化学反応が、このドラマのみどころとなっています」
恐らく松本Pには、イケメンがイクメンする中で、今ドキの男を育てようとしている意図がある。そんな男に関わることで、女も成長するという仮説がある。
コメディで一見軽いノリのドラマだが、笑っている内に根源的なテーマがそこはかとなく伝わって来る。そんな大それた実験番組がどんな具合に仕上がり、視聴者がどう受け止めるのか、大いに期待したい1作である。


文責・次世代メディア研究所 鈴木祐司

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