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今期ドラマの最大の特徴は、事件解決モノや刑事ドラマが多いこと。夜帯には9本も並んだ。

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天海祐希, Jul 15, 2016 : 東京・赤坂の赤坂サカス「サカス広場」に期間限定でオープンする「餃子にストロングーッド!-196℃ チューハイガーデン」のオープニングイベント (写真:MANTAN/アフロ)


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月曜:『貴族探偵』(フジテレビ系)
火曜:『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)
水曜:『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)
木曜:『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)と『緊急取調室』(テレビ朝日系)
土曜:『4号警備』(NHK)と『犯罪症候群』(フジテレビ系)
日曜:『小さな巨人』(TBS系)と『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(フジテレビ系)

この中にあって天海祐希主演の『緊急取調室』は、前半戦の視聴率でトップになると共に満足度も高く、特筆に値する存在となっている。

■視聴者の反応でトップ争い

初回から5話までの前半戦でみると、視聴率でも刑事ドラマが圧勝となっている。ベスト3は以下の通り。

1位:テレビ朝日『緊急取調室』平均14.2%
2位:TBS『小さな巨人』平均13.2%
3位:フジテレビ『CRISIS』平均11.1%

3位の『CRISIS』は、このところ視聴率好調の関西テレビが力を入れている作品。
主人公は、生と死・正義と法・真実と現実の境界を描いた『BORDER』で主演した小栗旬と、ハードボイルドの極北を行く『ダブルフェイス』『MOZU』に主演した西島秀俊。「国家を揺るがす規格外の事件に立ち向かう、規格外の男たちの活躍を描く」ドラマで、迫力のアクションにかなりお金をかけているようだ。

2位の『小さな巨人』は、警察ドラマだが組織に対峙(たいじ)する個人をテーマにしている。
『半沢直樹』『下町ロケット』『ルーズヴェルト・ゲーム』など、TBS日曜劇場がこれまで何度も放送してきた路線の延長上にある。
大きな顔芸で視聴者を魅了する香川照之を初めとするそうそうたるキャストと本格的なセット・シーンは、日曜劇場に相応しい豪華なドラマに見える。

これら2本と比べると、刑事ドラマでも『緊急取調室』はテイストが違う。
そもそも刑事ものは男の世界になり勝ちだが、紅一点の女刑事(天海祐希)を主人公に据え、一味違う味わいになっている。しかも刑事の疾走・聞き込み・銃撃戦・犯人との格闘など、視聴者の目を引く派手なシーンはほとんどない。
つまり"禁じ手"を作り、取調室という密室の会話劇を柱にストーリーを展開させている。比較的低コストで制作できるというメリットはあるが、それでも脚本・演出・演技力などで見応えを創り出し、視聴率トップというのは偉業と言えよう。

■『緊急取調室』のオリジナリティ

テレビ朝日の刑事モノといえば、『相棒』『警視庁捜査一課9係』『警視庁・捜査一課長』『科捜研の女』などが有名だ。いずれも安定した視聴率と一定以上の満足度を確保する。ただし視聴者は圧倒的に中高年が多く、総合的に指標化すると、必ずしもトップ争いに参戦しない。ところが『緊急取調室』には、従来のテレ朝刑事モノと一線を画す。
その秘密は、同ドラマシーズン1と2の違いからも見て取れる。

天海祐希演ずる真壁は、SIT(特殊事件捜査係)在籍時に関わった事件で犯人との交渉に失敗し、新しい左遷先として薄暗い緊急事案対応取調班(通称:キントリ)に異動となった。決して自白しない、供述が二転三転する訳アリの容疑者を落とすべく結成された取調べ専門のチームである。

シーズン1では話のメインが真壁の回もあれば、他のメンバー中心もあった。一話完結で進められたが、並行して真壁の夫・匡(眞島秀和)の殉職の謎にも迫っていた。ところがシーズン2からは、取調と心理戦による駆け引き中心の刑事ドラマに方針が転換され、真壁家のホームドラマ的要素は排除された。
シンプルに一番面白い話に絞りノイズを除去したようだが、結果として視聴者の支持は高まった。シーズン1と2の当初5話で見る限り、視聴率も満足度(注)も格段に高くなっている。

(注)2400人を対象としたデータニュース社「テレビウォッチャー」調査

■絶妙なストーリー展開

高い満足度の前提は、刑事モノとして単に謎解きが面白いだけない。犯行までのプロセスに、共感できる事情や情緒が含まれている点も大きい。

例えばシーズン2の初回では、宅配便の配達員に恋心を抱き、思いが踏みにじられたあげくに殺害してしまった老女(三田佳子)が取り調べ対象だった。女優2人の演技バトルが圧巻だったが、強く見える老女の裏に秘められた孤独感は痛々しいものがあった。

3話では、殺人容疑の夫婦の供述がミソだった。当初は全く別の内容だったが、示し合わせたわけではないのに途中でほぼ一致し、結果として捜査は難航を極めた。ところが1点の食い違いから、事件は解決に向かう。実はそれは夫婦の互いの人生のズレを象徴するものだったが、多くの夫婦にとっても身につまされる部分があった。

そして今回の第5話は、犯行の記憶が一切ない男との対決。
男は旅行会社の社員・水越辰也(塚本高史)。夜10時に退社して包丁を握った状態で目覚めるまで、水越の記憶は白紙。肝心の被害者も特定できない状態から、真壁有希子(天海祐希)らキントリの取り調べは始まった。
やがて取り調べの中で、水越の記憶喪失はうそであることが暴かれる。実は勤める会社のブラックぶりを世に問うため、水越が仕掛けた狂言だった。

働き方をめぐる近年の話題を取り込んだストーリー展開。「ブラック企業の罪は、ただ時間や労力が奪われえるだけじゃない。人間の能力を枯渇させてしまう」という水越の主張には、確かに一理ある。
ただしその主張を広めるために、被害者は放置された。助かる可能性を失ってしまったのである。"主張は正しくとも、手段が間違っている"ことに、キントリは容赦しなかった。
単純に考えるわけにはいかない現代の複雑さを見せつけられるストーリーとなっている。

刑事ドラマの典型的な演出を"禁じ手"にしているだけあり、よく練られた当ドラマの切り口や展開は奇想天外。前人未到の領域に挑むシナリオライターの井上由美子や演出陣の奮闘は、見どころ満載と言えよう。

文責・次世代メディア研究所 鈴木祐司

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