ここから本文です

"マツコとゲストの本音ガチバトル"が売りで、さまざまなジャンルのスペシャリストがその道の知られざる世界を紹介し、マツコ独自の世界観からこぼれる"マジなコメント"が楽しいトークバラエティ『マツコの知らない世界』。

サムネイル

地下鉄(ペイレスイメージズ/アフロ)


【無料配信】「マツコの知らない世界」最新話を配信中>>


2011年に始まった深夜放送で好評を博し、2014年には夜21時からのゴールデンタイムに昇格。2016年からは、さらに9分拡大で20時57分から放送している。
見どころは言うまでもなく"マツコ節!"。
皆が知ってそうで意外と知らない世界を、マツコの世界観で覗(のぞ)き見る。マツコが漏らすコメントは、「みんなが言いたかった胸の奥に詰まった言葉を、時には斬り捨てるように思いっきりよく、また時にはしみじみ納得できるリアクションで言ってくれる」感が、見ていて本当に気持ち良い。

■日本ならではの"駅メロ"という気遣い

さて、今回注目したいのは"駅メロの世界"。ゲストは"駅メロ"ツウの松澤健さん(35)。
松澤さんは、150曲以上の駅メロを再現できるサラリーマンだ。これまで全て耳コピし、楽譜まで出版している。いわゆる"電車オタク"の駅メロバージョンと言っても良いだろう。
通勤、通学、その他に誰もが利用する電車で、日常的に耳にする"駅メロ"に着目しコレクションする。マイナーなジャンルではあるが、「あ! それ! どこの駅だっけな?」という、痒(かゆ)い所に手が届く感じが地味に心地よい。
加えて、視聴者の心の声をマツコが代弁するので、さらにスッキリ爽快感がある。

駅メロの現在のコンセプトは、「忙しい日本人の疲れを取る癒やしのメロディー」である。
もともとは、発車ベルの"ジリジリジリ?"というキツイ音だった。それが1970年代くらいから、耳当たりの良いよう音楽に変り始めた。電車利用者の快適さを目的とし、警笛でドアを閉めるよりも、心に響く注意喚起に変え、音楽療法的な音声に変っている。
確かに、「乗れ?!」と怒鳴られるより、「ぼちぼちドア閉めますよ」と言われた方が、「じゃあ乗るね」って穏やかな気分になれる。
流れる曲は5秒から10秒と短く、外出した際には往復で1日に最低2回は聞くので、知らない間に覚えてしまう。
こういう細かい気遣いは、日本特有ではないだろうか。

私が以前住んでいたフランスでは、電車の発車は発車ベルかブザーが決まり。駅で音楽なんて聞いたことはない。
長距離列車が出る大きな駅に至っては、たくさんのホームでいくつものベルが鳴り響き、音も大きいのでカオスと言っても過言ではない状態になる。自分の乗る電車は、自己責任で早めに乗っておくしかないという厳しさだ。
それに比べ日本の気遣いと便利さは、改めてすごいって思う。

■ディテールがおもしろい!

話を松澤さんの紹介する"駅メロ"に戻そう。
ここではJRの駅メロに焦点を当て、山手線のすべての駅の音楽をパネルで紹介した。
それぞれちゃんと名前がついていて、例えば外回りでは新宿が「twilight」、渋谷「小川のせせらぎ」、高田馬場「鉄腕アトムA
」、内回りは新宿「新たな季節」、日暮里「春トレモロver」、恵比寿「第三の男F」といった具合だ。
"春"や"せせらぎ"という癒やし効果を盛り込んだものが多く使われている。これは、コンセプトの" 癒やしのメロディ"と合致していて、なるほど納得できる。

それでは聞いた感じはどうだろう。マツコは本当に癒やされるのか。
マツコは癒やされてるというより、聞き覚えのあるメロディを懐かしむ方に走ってしまった。いつものマツコ節が炸裂(さくれつ)し、「春って感じは全然しないけど......」とバッサリ切るところが、予定調和ではなく、やっぱり面白い。
さらに松澤さんが自信を持って紹介する、"新宿駅のおすすめ、駅メロ聞き分け術"は、はっきり言ってオタクにしかわからない醍醐味(だいごみ)で、視聴者にさして共感は得られそうにない。
それでもマツコは、ゲストの思いを見ている者に分かり易く翻訳してくれる。「なるほど、そう解釈するのか?」というコメントは、絶妙で納得できる。

ただ、一つ気になるのが、松澤さんが再現するピアノ。
残念ながら、ミスタッチが多い。
「完全再現!」と言い切るのなら、完璧に再現してもらいたい。たった10秒しかないメロディなのだ。1つのミスタッチが、商品の価値をダイナシにしてしまう。しかも駅メロは耳慣れている音楽だ。ちょっとでも違う音が鳴ると、違和感を抱かれてしまうので、細心の注意と完成度が求められる。

それにしてもサラリーマンでありながら、駅メロを150曲以上も集め、耳コピで再現し、楽譜まで出版するという徹底した志。加えて各音楽への解説や聴きどころの説明など、思わずほほ笑んでしまう番組だった。
さらに素の思いをさらけ出す"マツコ節"は、「悪意がない」というより善意でゲストを受け止めている。その「他意なく素直に批判してるだけ」というマツコのスタンスは魅力的で、ついつい「次回も見ようかな」という気にさせてくれる。
何気なく眺めるようにお付き合いするには、最適な番組と言えよう。

文責・パリ帰りのピアニスト はたじゅんこ
次世代メディア研究所

Facebookコメント
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。
PR

最新記事

rss

もっと見る

本文はここまでです このページの先頭へ