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今期ドラマの中で視聴率トップを行く『緊急取調室』。

今のところ『小さな巨人』と熾烈(しれつ)な首位争いを演じている。『小さな巨人』の7話平均13.2%に対して、『緊急取調室』は6話平均で14.2%と、1ポイントほどリードしている。ところが満足度で見ると、5話平均3.85の『緊急取調室』に対して、『小さな巨人』は7話平均3.91と逆転している(注)。

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視聴率トップ2ドラマの実績


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しかも『緊急取調室』は、1話完結型のため上下動が激しい上に、第5話で急落している。これに対して『小さな巨人』は、初回こそ低かったものの、2話以降は3.9台の高値で安定している。ストーリーが連続型で、後半に盛り上がるパターンを実績も反映している。今後、『緊急取調室』がどう逃げ切りを図るのか、注目が集まっている。

(注):視聴率はビデオリサーチ社関東900世帯調査から。満足度はデータニュース社「テレビウオッチャー」関東2400人調査から。

■2ドラマの評価比較


今期GP帯(夜7~11時)ドラマの中で、両ドラマがトップを争っているのは視聴率だけではない。実は毎回欠かさず見続ける視聴者の数でも接戦を演じている。
データニュース社「テレビウオッチャー」のモニター関東2400人のうち、5話まで全てを見続けた人の数は『緊急取調室』59人に対して『小さな巨人』は60人。わずかに1人リードしているが、初回を見た人の数は155人対165人。つまり初回を見た人の中で5話まで見続けた人の率に換算すると、『小さな巨人』36.4%に対して、『緊急取調室』は38.1%とわずかに1.7ポイント逆転する。ドラマにずっぽりハマっている人の状況でも、両者はデッドヒートを展開。

長谷川博己主演『小さな巨人』は、今期数多い警察ドラマの1つだが、メインテーマは組織に対峙(たいじ)する個人。『半沢直樹』『下町ロケット』『ルーズヴェルトゲーム』など、TBS日曜劇場がこれまで何度も放送してきた路線と同じだ。ただし今回は、原作を持たないオリジナル作品という点で強みを発揮している。長谷川博己・香川照之・岡田将生・安田顕など個性的なキャラクター、どんでん返しの連続、時事ネタをストーリーに取り込むタイムリー性。これらが高く評価される要因のようだ。
視聴者の声にも、そうした強みは表れている。

「捜査一課と所轄刑事がぶつかり合いながら事件を解決していくなんて、今までにない刑事ドラマ」
「出演者・演出など、完全に半沢直樹・ルーズヴェルトゲーム・下町ロケットだな。本庁と所轄という構図は踊る大捜査線だし、いろんなモチーフを組み合わせたという感じ」
「敵は味方のふりをする! すごい言葉ですね」
「この番組はスピード感があり脚本が良い。来週も楽しみだ」
「内通者はてっきり一課長だと思っていましたが、意外や意外、署長だったんですね」
「巷(ちまた)で話題になっている"豊洲"と"○○学園"、タイムリーだ!」

一方『緊急取調室』も負けていない。
刑事ドラマは男の世界という印象が強い。しかも刑事の疾走・聞き込み・犯人との格闘・銃撃戦など派手なシーンを多用し、視聴者の目を引く演出が多い。ところが同ドラマは、こうした要素をあえて排除している。取調室という密室での会話劇で見応えを創り出しており、従来にないアイデアが高く評価されたと言えよう。

「脚本が面白い」
「見応えがある」
「天海祐希が紅一点でメリハリがある」
「派手なアクションシーンもなければ、犯人は誰か? という謎解きもない。取調室という密室の中で、調べる側と調べられる側の駆け引きが火花を散らす」

取り調べを受ける側の事情や人間性への深掘りと、緊迫感のあるストーリー展開が支持されていたようだ。

■"オンナ"を巡る攻防の第6話


両ドラマが火花を散らす中、『緊急取調室』第6話は視聴率を14.3%と、同ドラマ初回の17.9%に次ぐ高視聴率を叩(たた)き出した。主人公の真壁有希子(天海祐希)は、これまで"オンナ"を前面に出して取り調べに当たったことは一度もなかった。天海祐希も、演ずるにあたり女性性は極力抑えていた。ところが今回は、"オンナ"を演ずることで仲間の刑事たちも欺き、犯人の鉄壁の守りも突き崩すことに成功する。天海祐希が演ずる女性の側面は、極めて希少価値の高いドラマと言えよう。

銀行員の大谷雅美(阿南敦子)が自宅マンションから転落死した。多数の住人が「やめて!」という悲鳴を聞いたが、他殺の物証はなく自殺と断定されてしまった。ところが後に、雅美の携帯電話が飛び降りる前後につながっていたことが判明。通話相手は雅美が通っていたサロンのネイリスト・茂手木恭子(鶴田真由)。
調べると、この6年のうちに女性顧客が2人、恭子に多額の融資をしたのちに自殺していた。捜査一課は雅美を含む3人の顧客に、恭子が自殺を強要したと推理し、緊急事案対応取調班(通称・キントリ)に出動を要請した。
当初は事情聴取を拒否し続けた恭子だったが、有希子が担当するなら協力するという。さっそく有希子は取り調べを開始するが、どんなに問い詰められても落ち着き払った態度。しかも有希子の手を見てシングルマザーであることを見抜き、その労をねぎらってくる。さすがの有希子も感情とペースを乱され、管理官の梶山勝利(田中哲司)から厳しくたしなめられてしまう。
挽回を誓った有希子はキントリ・メンバーと連携し、恭子の関与を裏付ける証拠を求め、自殺者たちの関係者に聞き込み捜査を敢行。そんな中、有希子が不審な行動を取り始める。なんと、こっそり単独で恭子のサロンへ向かい、ネイルにアートを施して帰ってきたのだ。

取り調べる側とされる側が、"オンナ"の弱さを巡って火花を散らす。その結果とは......。
老女の孤独、末期患者に向き合う医師の葛藤、夫婦のすれ違いなどに、深くメスを入れてきた井上由美子のペンは、女の厳しい現実と心の隙間にも容赦なく肉薄する。
あえて制約を設け、その中でこそ迫真の世界を活写できるという新たな境地を行く『緊急取調室』。難しい方針を最後まで貫き通せるか。視聴者にどこまでリーチし続けるか。今期もっとも注目すべきドラマの1つと言えよう。

文責・次世代メディア研究所 鈴木祐司

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