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累計70万部を突破したベストセラー小説を、福士蒼汰&工藤阿須加というフレッシュなコンビで映画化された『ちょっと今から仕事やめてくる』が5月27日に公開を迎えた。現代に即した「長時間労働」「パワハラ」「自殺」など、働く人の多くが抱えている悪しき労働環境という重いテーマを内在しつつも、すっきりとした鑑賞後感を与えてくれる本作。生みの親である原作者の北川恵海さんと、メガホンをとった成島出監督が映画制作までの裏話を語った。

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左から成島出監督、原作者・北川恵海氏=映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)


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■小説を読んでいて映像が浮かんでくる作品だった

――北川先生の作品を映画化するまでのいきさつを教えてください

成島: プロデューサーの池田さんから、面白い本があるのでぜひ読んでみてくださいと勧められて。読んだらすごく面白くて、一晩で読破してしまいました。ここまでしっかりした小説なら、すぐに脚本の初稿をあげられると思い、他のスケジュールも顧みず引き受けたんです。

――どんな部分に一番惹(ひ)かれたのでしょうか?

成島: 題名もそうですが、重い題材なのに登場人物を含め、とても柔らかく優しい印象を持ったんです。読後感がとてもよかった。手がけた前作が、『ソロモンの偽証』という宮部みゆきさんのとてもメッセージ性の強い作品だったので、しっかりしたテーマがありつつも、着地点がソフトで心地よいこの作品をぜひ映画化してみたいと思いました。

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映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)
(C)2017映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会


――デビュー作が実写映画化されるというお気持ちは?

北川: 私は小説を書くとき、映像が頭に浮かんでくるタイプで、基本的に2時間ぐらいのドラマや映画をイメージしているんです。理想は高く、映像化されればいいなという思いではいましたが、こんなすてきな作品にしていただけてとてもうれしいです。

――本作を実写化する際に、一番気をつけた部分はどこですか?

成島: 柔らかさや心地よさという"感覚"の部分ですね。映画用に設定を変えさせていただいた部分もありますが、僕も読んでいて自然と映像が浮かんでくる作品だったので、根っこの部分は北川さんが大事にされたことを伝えていきたいと思っていました。

■福士蒼汰&工藤阿須加は演出家からみて「とてもいい素材」

【キャストインタビュー映像】公開記念特番>>


――福士さんと工藤さんというキャスティングについて、意外という声も聞かれましたが。

成島: 脚本を書き始めた段階で、池田プロデューサーからこの二人でいきたいという話があったんです。僕が原作を読んだとき、二人をイメージしたかというとそうではなかったですが、演出家という視点で考えたとき、二人ともとてもいい素材であると思っていたし、この題材にはあうと感じました。

――実際にご一緒していかがでしたか?

成島: 会って話し込むと、池田プロデューサーの直感は合っていたとすぐ思いましたね。小説の目線が優しく爽やかなのですが、福士くんも工藤くんもすごく素直な男でひねくれていない。(福士演じる)ヤマモトと(工藤演じる)青山は、とてもはまりましたね。

■映像が美しく引き込まれる映画

――出来上がった作品をご覧になってどんな印象を持ちましたか?

北川: ものすごく映像が美しいなと思いました。最初に成島監督とお会いしたときに、山梨の田舎の映像を撮りたいと仰っていたのですが、作品をみたときに「監督はこういう映像を想像されていたんだ」と納得しました。温かさや熱量も伝わってきて、とても引き込まれました。

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原作者・北川恵海氏、映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)


――成島監督の作品自体は、これまでご覧になっていたのでしょうか?

北川: 『ソロモンの偽証』や『ふしぎな岬の物語』なども好きです。怖いシーンもあるのですが、そういう場面でもとても映像がキレイで温かみを感じるんです。

――先ほど、映像をイメージしながら小説をお書きになると仰っていましたが、登場人物を当て書きされることはあるのでしょうか?

北川: 実在の俳優さんをイメージするということはないですね。どちらかというとアニメーションに近いような感覚の映像が多いんです。

――成島監督はこれまでも原作ものを映画化されていますが、原作者とはどんな形で向き合うのでしょうか?

成島: いろいろですね。とんでもなくうるさい方もいれば、全部お任せしますという方もいらっしゃる(笑)。この作品は、変更したい設定をご相談させていただきましたね。お話しして、納得していただき進めました。

北川: 私もデビュー作で、映像化されるという経験がなかったので、まずはお話を聞いてみようという思いでした。お会いして熱量を感じましたし、撮りたい絵がはっきりと見えていらっしゃるんだなって感じましたので、口を挟まない方がいいと思ってお任せしました。

■原作を映像化すると強く伝わってしまう難しさがある

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成島出監督、映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)


――今回、映像化する際に難しかった部分はありますか?

成島: 映画って生身になるので、文字で読んだときはちょうどいい表現も、映像にすると2~3歩強く入ってしまうんです。そこが難しいんですよね。
いい例が会社のシーン。吉田鋼太郎さん演じる部長が工藤くんを思い切り追い詰めるシーンが続くのですが、映像にするとかなりキツイ。さじ加減は悩みましたね。小説とそこまで変更はないのですが、お客さんが見ていて離れてしまうんじゃないかという不安がずっとありました。でも、中途半端にすると半端な映画になってしまうので、一か八か勝負をかけました。

――設定変更という部分では、工藤さん演じる青山の会社の先輩が男性から(黒木華演じる)女性になっていますよね。

成島: この変更は理屈抜きに直感でしたね。最初は原作通り男性の予定だったのですが、脚本を書いていくうちに、女性の方がラストへ抜けていく展開で効いてくると思ったんです。それで北川さんに相談させていただきました。

――急きょ変更したのですか?

成島: そうなんです。それで華ちゃんに相談してみたら、ちょうど彼女が夏休みで。でも休みを返上して参加してくれたんです。この部分も、原作を映画化することの難しさを痛感したところですね。映像の方が強い印象を与えてしまう可能性があって、原作通り男性でいくと、かなりの人がバッドエンドを想像してしまうと思ったんですよね。

北川: でも出来上がった映像を見て、女性にした方が救われると感じましたね。

【主題歌】コブクロ 「心」ミュージックビデオ>>


【劇中歌PV】『ちょっと今から仕事やめてくる』>>


(取材・文:磯部正和 撮影:中村好伸)
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成島出(なるしま・いずる)
1961年4月16日生まれ。山梨県出身。大学のサークルで監督を務めた『みどりの女』にてぴあフィルムフェスティバルに入選。その後、助監督として相米慎二監督や平山秀幸監督らに師事し、脚本家として活躍。2004年公開の『油断大敵』で映画監督デビューを果たすと、『フライ,ダディ,フライ』(05年)、『孤高のメス』(10年)らの話題作を手掛け、『八日目の?』(11年)では日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞するなど、日本を代表する映画監督の一人。座右の銘は「広い世界をみなさい、心の目で」。

北川恵海(きたがわ・えみ)
大阪府吹田市出身。2014年に「ちょっと今から仕事やめてくる」で第21回電撃小説大賞《メディアワークス文庫賞》を受賞し小説家デビュー。座右の銘は「柔よく剛を制す」。
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作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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