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テレビ朝日は今期GP帯(夜7~11時)の3ドラマに、すべて刑事ものを持ってきた。
もともと同局は、水曜21時を刑事ドラマ、木曜20時をミステリー、木曜21時を自由枠としていた。よって木曜21時には、『就活家族 ~きっと、うまくいく~』『ドクターX ~外科医・大門未知子~』『はじめまして、愛しています。』など、多様なテーマが来ることが多かった。
ところが今期は、なぜかすべてが刑事もので、しかもシリーズものという極めて珍しいクールとなった。

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テレ朝 刑事3ドラマ対決


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今回の3本を視聴率・録画数・F1(女20~34歳)の視聴者数・49歳以下視聴者数・満足度・絶対見たい率で比較してみた(注)。すると『緊急取調室』が全指標でトップとなり、従来の同局ドラマの得意分野たる"刑事もの""ミステリーもの"の可能性を大いに拡張したことがわかる。

(注):視聴率はビデオリサーチ社関東900世帯調査から。録画数・満足度・見たい率などは、データニュース社「テレビウオッチャー」関東2400人調査から。

■量的評価で突出した『緊急取調室』

まず視聴率。全9話の平均は14.1%で、3本の中でトップとなった。しかも今期GP帯の全ドラマの中でも1位と、最も見られた物語となった。
ちなみにテレ朝は3本とも二桁に乗せており、全局の中では最も安定的に数字を稼ぎ出していた。

次に録画数。「テレビウオッチャー」のモニター2400人中、1話平均で100人ぐらいが録画をしており、他の2本の倍以上となった。リアルタイムでの視聴者が多いだけではなく、録画再生でじっくり見たいという人もかなりの数に上っていた。多様なニーズに応える力作だったことが伺える。

テレビ番組は世帯視聴率だけではなく、どんな人が見ているのかも広告営業的には大切だ。広告効果が期待できる若年層が多く見る番組ほど、ビジネス的にはスポンサーに喜ばれるからである。
この視点でも、『緊急取調室』は優れていた。1話あたりのF1(女20~34歳)視聴者の数や含有率も、49歳以下男女の数と比率も、他2本を大きく引き離した。

とかくテレ朝のドラマは、視聴率は高いが中高年が大半で、若年層に見られないと思われがちだ。ところが『緊急取調室』は違っていた。とかく男の世界になりがちな刑事ドラマの中で、天海祐希を紅一点の主人公に据えた点がユニークだ。さらに刑事ドラマによく見られる「刑事の疾走」「聞き込み」「銃撃戦」「犯人との格闘」など、視聴者の目を引く派手なシーンはあまり出てこない。あえて"禁じ手"を作り、取調室という密室の会話劇を柱にストーリーを展開させることで見応えを創り出そうとした切り口も秀逸だった。

■質的評価でも大差

こうした斬新な作り方は、普段以上に若年層を呼び込んだだけではない。満足度や次回見たい率など、質的評価でも優れた成績をもたらしていた。

まず満足度。
『警視庁・捜査一課長』の全話の平均満足度は3.70。『警視庁捜査一課9係』は3.66だった。ドラマの平均値は3.6~3.7なので、両ドラマとも平均的な評価となった。
ところが『緊急取調室』の満足度は3.85。他2ドラマを大きく引き離した。しかも、F1が4.12、M1が4.04と極めて高い数字となった。派手なシーンが少なくとも、会話劇のスリルが若年層に届いていたようだ。

「次回絶対見たい率」でも同様の傾向が出た。
「次回絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」の5段階評価をしてもらったものだが、他の2ドラマは視聴者の4割台の人がそう思っていたが、『緊急取調室』だけは5割を超えていた。しかもこの評価は回が進むほど高まる傾向にあった。ファンの心をがっちり捕まえていたことがわかる。

■続編への期待

最終回は、被弾した真壁有希子(天海祐希)が、キントリチーム解散の危機の中で奮闘し、チームワークをフル動員して、今回の事件だけでなく、5年前の冤罪(えんざい)事件も暴いていくというストーリーだった。
これまで1話完結型で来たが、ラストは2話連続の物語で、視聴者の満足度も高くラスト前の8話が3.93、最終回が3.92の好記録となった。

視聴者の中には、最後を惜しむと共に、次のシリーズを望む声が少なくなかった。

「これが最終回とは少し心残りです。取調室の捜査官たちの人間模様をまだまだ観たいと思いました」男70歳(満足度5)
「自供へ追い込むときの、迫力が見ごたえあり楽しめた」女34歳(満足度5)
「面白かった次回も期待」男55歳(満足度5)
「最後に何となく次回続編もありそうな感じがして期待してしまった」女66歳(満足度4)
「絶対また見るから、やってほしい」女39歳(満足度5)

テレビ番組は、例えば『水戸黄門』のような大いなるマンネリで視聴率を安定的にとることもある。しかし、かつての『踊る大捜査線』のように、定番をあえて禁じ手にすることで、新たな境地を切り開くものもある。
今回の『緊急取調室』は、明らかにそうしたパイオニア的ドラマだったと言えよう。今期最高視聴率を叩(たた)き出したが、単に記録が残るだけではなく、刑事ドラマのイノベーションを起こしたという意味で、多くの人々の記憶に残るドラマとなったことであろう。
どこまで進化を続けられるか。次の挑戦を待ちたい。

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文責・次世代メディア研究所 鈴木祐司

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