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日曜夜11時よりTBS系列(MBS制作)にて放送されている『情熱大陸』。
1998年の開始以来、放送回数が900回を超える言わずと知れた人気番組で、毎回スポーツ、音楽、学術など第一線で活躍する個人やチームなどにスポットを当て、その人物の魅力、素顔に迫っている。

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雑誌/インターネット 広告費の推移


【無料配信】食雑誌「dancyu」新編集長・植野広生氏が出演 「情熱大陸」配信中>>


芸能人やプロスポーツ選手などのいわゆる"有名人"のみならず、海洋生物学者(6月18日放送)や洞窟探検家(6月11日放送)など、一般の方にはなじみのない特定の分野で活躍する方にもスポットを当てるのがこの番組の特徴だ。6月25日の放送では、食雑誌「dancyu」の新編集長に就任した植野広生(うえの こうせい)氏が主役であった。

「dancyu」は "男子厨房に入ろう"から取ったユニークな名前の創刊27年目のグルメ雑誌。食をテーマにこだわりを持って追求する情報誌として、一般読者だけでなく料理人たちからも絶大な支持を得ており、出版不況の逆風の中、1号あたりの平均部数は2012年の約98,000部から2017年では約113,000部と14%も伸ばしている。(出典:日本雑誌協会マガジンデータ)

■メディアとしての「雑誌」の価値

雑誌は、新聞、ラジオ、テレビと並んでマスコミュニケーションメディア主要4媒体の1つだ。これらは長きに渡って主要な広告媒体として機能してきたが、最近ではインターネットの台頭に伴いその優位性にかげりが見え始めている。
特に雑誌については、広告費は2006年にインターネットに逆転されてから毎年減少傾向で、右肩上がりのインターネットに2016年では約6倍もの差をつけられている(出典:電通「日本の広告費」)。無料で手軽に情報を手に入れられるインターネット全盛の時代に、雑誌は明確な差別化を図らなければ生き抜いていけない。

植野氏は番組の中で「dancyuの信頼性やブランドを高めていって、"食のことはdancyuを見ればいいよね"と言ってもらえるようにならないと、デジタルに圧倒的に勝つことはできない」と述べている。では信頼性やブランド、ネットと差別化された価値とは、具体的にどのようなものだろうか。

■グルメ雑誌の価値は「信頼性の高さ」だけじゃない!?

番組では、植野氏が築地市場を訪れ、知り合いの仲卸人からおいしいお店の情報を仕入れる場面が描かれている。足を運んで仕入れる情報は、発信者が匿名であることが多いネットと比べて精度は高い。この「情報の信頼性が高い」点はネットより雑誌が優位なポイントの1つだろう。

また、番組では、「信頼に足るプロが評価するお店ならば、訪ねる価値が有るというものだ」と説明していた。たしかに、舌の肥えた料理のプロが「おいしい」という店は、誰にとってもおいしいようにも思えるが、果たして本当にそうであろうか。

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【グルメ記事】雑誌とネットに求められるもの


筆者が所属する一般社団法人日本味覚協会では、自分の味覚が良いか悪いかをチェックする「味覚診断」を実施している。診断項目の1つに、高級品と言われる某チョコレートと、スーパーなどで手に入る比較的安価なチョコレートを食べ比べて味を区別するテストがあるが、目隠しでのテイスティングを終えた参加者からは後者のチョコレートの方がおいしかったという声をよく聞く。
人間には「食べ慣れている味の方がおいしく感じる」という性質があるので、これは間違った結果ではない。味覚の感度には良い、悪いがあるが、おいしいと感じるかどうか(嗜(し)好性)については、良いも悪いもないのだ。
この「好み」の問題については、食文化によるところが大きい。外国の料理が良い例で、海外旅行の際、現地の人はおいしいと感じて食べている料理をまずいと感じた経験がある人も多いのではないだろうか。

食文化は海外か日本か、あるいは西日本か東日本かといった地域の問題だけではなく、食への意識によっても違いが生まれる。食に対してお金や時間をかけず、量が食べられればよい、と考える人と、食べることに関する優先順位が何よりも高く、食に時間やお金をかけている人とでは、おいしいと感じる基準が変わってくるのだ。
グルメ雑誌の購入者は、お金をかけて雑誌を買っているという時点で、普通の人より食への意識が高い人だろう。だからこそ、「プロが評価するお店」はおいしく感じられ、その情報が価値となっている。対してネットは、投票形式で星の数などを示しているように「多くの人が評価するお店」を探すのに適している。ただ、食への意識がそれほど高くない人にとっては、「多くの人が評価するお店」の方が「プロが評価するお店」よりおいしいと感じる可能性があるので、これはこれでマッチしていると言える。

つまり、グルメ雑誌にとって、情報の信頼性の高さも大事ではあるが、それよりも雑誌のターゲットとなる読者と情報元であるプロとの食文化(おいしいと感じる基準)が一致していることが重要なのではないだろうか。番組で取り上げられたdancyuは、この"読者視点"の姿勢が優れているからこそ、発行部数を躍進させている結果となっているのだろう。

『情熱大陸』6月25日の放送内容は食に携わる筆者にとってはとても興味深い内容だったが、自分には関わりのない分野でも興味を引き立たせる構成となっているのがこの番組の良いところだ。ぜひご覧になっていただきたいと思う。

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文責:一般社団法人日本味覚協会 代表 水野考貴
著者ブログ:『味覚ステーション~世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト
監修:次世代メディア研究所

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