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伊藤淳史主演の深夜ドラマ『脳にスマホが埋められた!』(読売テレビ・日本テレビ系 木曜23:59~24:54)が始まった。子役の頃からテレビに出演していた伊藤だが、人気を決定的にしたのは『電車男』(2005年)だった。

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伊藤淳史/Atsushi Ito, Mar 04, 2016 : 『第39回日本アカデミー賞』授賞式(写真:MANTAN/アフロ)


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秋葉原に出没するオタクで、温厚だが臆病なヘタレを、伊藤が見事に演じ切っていた。
しかも「キタ ーーーヽ(´ω`)ノ ーーー!!」など、顔文字を含めたネット上のやりとりをうまく演出したドラマとして記憶に残る。
そして何より、決して二枚目でなくとも、伊東美咲演ずるエルメスのような美女と付き合えることもあるという、夢と希望を世の男たちに抱かせた功績は大きかった。

■"脳内スマホ人間"

あれから12年。
今回伊藤は、"電車男"以上にITな"スマホ人間"として帰ってキターーー。
タイトルの通り、折茂圭太(伊藤淳史)の脳に、ある日突然、スマホが埋め込まれる。そのシステムにより、他人のスマホの中身をのぞくことができてしまう。オンラインで人のチャットや、検索エンジンの内容まで見えてしまうというのだ。

スマホに頼らずに生きてきたアナログ人間の折茂圭太は、アパレル会社"エグザルトン"に勤める、バツイチ&子持ちで、しかもリストラ候補のサラリーマンだ。
今もガラケーを使っているが、"脳内スマホ人間"になってしまったことで、社内外のさまざまなトラブルに巻き込まれていく。

■デジタルとアナログのはざま

ドラマは、一話ずつの完結で、ストーリーはただのバーチャルではなく、トラブルに巻き込まれる折茂をヒューマンドラマが色付ける。気軽に見られてあと味よし! 放送時間も、「そろそろ寝ようかな」という時間に、ちょっと見るには、ちょうどいいテイストの物語になっている。

誰もが持つスマホ。今や電車に乗れば、乗客のスマホ使用率は90%を超えるといっても過言ではない。アプリを使えば、SNS・ゲーム・路線情報・チャットを始め、音楽を聴いたり、動画を見ることだって、スマホ一つあればなんでもできてしまう。「スマホ中毒」という言葉があるほどだ。
ところがこのドラマでは、スマホに囚われてしまうのは、スマホのヘビーユーザーではなく、今もガラケーを使うアナログ人間の折茂だ。
このあえてパラドクサルな視点も、新鮮味があって面白い。

他人の裏側が見えるようになってしまった折茂は、表面的な人の言動とホンネのギャップに傷つきながらも、それでも自らは誠実さを忘れない。
ITが発達しスマホが普及するとともに、人と人とのコミュニケーションが薄弱になり、人同士の関係もかつてとは大きく変容している。ネットを介した犯罪や、SNSを利用したイジメも出て来ている。こうした便利になりすぎた現代社会の歪(ひず)みも、ドラマは皮肉かつコミカルに描き、しかも古き良き人間性であるべき姿へと正していく。

■ハイセンスな音楽

ドラマ音楽に注目してみよう。
イマドキっぽくて軽快! どこかで聞いたような......作曲家の名を見て、ピンときた。
兼松衆氏だった。彼は前クールの話題作『あなたのことはそれほど』を手がけていた。去年では今話題の船越英一郎主演の『黒い十人の女』があり、おととしには『下町ロケット』も担当している。
現代的で軽快。ノリが良くて聞きやすいし、シーンになじむ。

スマホの効果音と言えば、『東京タラレバ娘』でも頻繁に使用され、今や珍しくない。それでも今回は、チャットのタップ音だけでなく、充電切れや電源を入れるときの音など、芸は相当細かい。
さらに非現実的なバーチャルな世界を演出するために、ゲーム音楽に用いる電子音やシンセを多く使用し、都会的なイメージのアパレルオフィスでは、クラブ系サウンド、ハウスミュージックを用いる。そのセンスは洗練され、兼松氏の若さも感じられる。
しかもジャズピアニストだけあって、アレンジがうまい! リズムセクションも、グルーブ感があってカッコイイし、数々のドラマ音楽を手がけているだけあって、まとまりがありハイセンス!

■初回の評価は上々

ちなみに読売テレビ制作の前ドラマ『恋がヘタでも生きてます』と比べると、初回の視聴率3.7%は同率となった。
ところがデータニュース社が関東2400人をモニターした調査「テレビウオッチャー」では、『恋ヘタ』を上回るスタートとなった。満足度で0.22上の3.50、「次回絶対見たい」率で6ポイント上の45%に達している。深夜ドラマの初回としてはかなり高いと言えよう。
しかも録画した人も16%ほど増えている。やはりアナログ人間が"脳内スマホ人間"になってしまうというコンセプトは、かなり気になっているようだ。

"ホンネとタテマエ"がある日本人だからこそ、「人のスマホの中身が見えちゃう」というのは興味深い切り口だ。隠せば隠すほど、見えたら困る、心の声。
普通なら頭にきて、大問題続出だろう。そこを伊藤淳史演ずる、ちょっとヘタレだが人間性豊かな主人公が、周囲の人間を少しずつ和ませていくのだろう。
12年前にエルメスの心を射止めたように、閉塞感に満ちた現代人に夢と希望を抱かせてくれることを期待したい。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所

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