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主演は長瀬智也。
『クロコーチ』(2013年)『フラジャイル』(2016年)など、近年はニヒルな役が多かったが、今回は久々の純愛ラブストーリーに挑んでいる。

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坂口健太郎, May 03, 2017 : 「GirlsAward 2017 SPRING/SUMMER」に登場(写真:MANTAN/アフロ)


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原作は韓国KBSドラマ『ごめん、愛してる』で、脚本は、イ・ギョンヒが書いている。
共演する俳優には、大竹しのぶ、坂口健太郎、吉岡里帆に韓国の若手人気俳優、イ・スヒョクが出演し、豪華なキャスティングで脇を固める。最近のドラマは、『逃げ恥』や『地味スゴ』など、なんでも略してしまうパターンが多いなか、「ちょっとタイトルがクサイなぁ」と感じる。原作が韓国ドラマで、そのリメイク版ということもあり、こうしたイマドキっぽさに逆らうのも「たまには良し!」としよう。

■交錯する人間関係

始まりの舞台は、ソウル。
幼い頃母親に捨てられ、養護施設で育ち、不遇な暮らしをしてきた岡崎律(長瀬智也)は、ソウルの裏社会でマフィアの中に生きている。ひょんなことから三田凛華(吉岡里帆)に出会い、スリに合い困った凛華を律が助ける。律は韓国マフィアの息子ペクラン(イ・スヒョク)を狙った事件に巻き込まれ、頭に撃たれた銃弾が残り、余命宣告されてしまう。
そこで実母を探し求め、日本へ向かうことになった。
ところが初めて会った母・日向麗子(大竹しのぶ)は、かつて一世を風靡(ふうび)したピアニストであり、今は天才ピアニストとしてデビューした息子のサトル(坂口健太郎)を溺愛している。母の愛を求める律、息子を溺愛する麗子、自由な天才サックス奏者古沢塔子(大西礼芳)を追いかけるサトル、純粋な礼華。それぞれの愛の形が交差する。

ストーリー展開は、さまざまなパーツが拡散していて、のちに全てが集結するのだろう、と予感させる。
ソウルでの律の暮らし、「兄貴」と慕うペクランと律の関係、礼華とサトルの幼なじみを超えた兄妹のような信頼感、別々に暮らす裕福な律の両親、登場人物の背景を描くシーンをブツ切りで、大きな皿の上に盛っていく。一見、話が四方八方に飛び散り、展開の構築性に乏しい気もするが、たくさんのパーツがバラバラな状態のパズルだと思うと、長いゲームの始まりとも見える。
長瀬の流暢(りゅうちょう)な韓国語や、本物のピアニストに見える坂口健太郎のピアノのタッチ、人気韓流スター、イ・スヒョクの鍛え抜かれたシックスパックなど、とにかく見どころは満載だ。

■ピアノを初め、音楽に説得力!

普通のテレビドラマでは、音楽が秒刻みで埋め込まれ、にぎやかな印象に走りがちだ。
ところがこの作品では、音楽だけが立ち過ぎず、セリフ・街の雑音・静寂などがとても効果的に生かされ、作品に入り込みやすい映画のような演出となっている。音楽は坂口健太郎のピアニストが鍵になっていることもあり、ショパンやシューベルトを初めとしたクラシックがメインで、劇中音楽もオーケストラのアレンジが多く見られる。聞き心地がよく、アコースティックな音とメロディーが、心にスッと入ってくる。

サトルを演じる坂口健太郎の革命のエチュードは、手元のアップではさすがに吹き替えを使っているのだろうが、鍵盤に対する手のポジション、タッチ、姿勢、どれを取っても文句のつけようがない完成度で、また美しい。
多忙なスケジュールの中、ここまで仕上げた坂口の努力と俳優としてのプライドが、クオリティの高さを実現している。
説得力の高さは脱帽だ。

■あえてケチをつければ......

韓国では、この原作ドラマは高視聴率を記録し大ヒットとなったが、果たして日本でもヒットとなるのだろうか。
「冬のソナタ」や「チャングム」など、日本でも大ヒットした韓国ドラマは数々あるが、今回は舞台が韓国と日本にまたがり、多少の温度差があるように思う。
ペクランの誕生日を祝うシーン。パーティでペクランの両親が誕生日を祝福するのだが、母親がペクランにキスをしようとしてかわされるシーンは、正直ドン引きだ。「みんなが見てるから」とペクランは母に言う。文化の違いと言われればそれまでだが、「見てなかったらするの?」とつい疑問を抱いてしまった。
日本サイドの親子を見てみても、日向麗子とサトルの関係は、一定の距離を超えた共依存である。こうしたウェットすぎる状況の中、律を演じる長瀬だけは、日本人だが韓国に長く住んでいる"外国人化"された雰囲気を作り上げ、全体の中で際立ったアクセントになっている。

■今後の挽回は......

初回視聴率は9.8%。
去年1月『家族ノカタチ』以来、6クールぶりに一桁に終わった。
データニュース社『テレビウオッチャー』が調べる満足度でも、初回3.38は他のTBS日曜劇場と比べかなり低い。
今回の"愛"というテーマは、人の心に語りかけやすく、うまくいけば大ヒットしやすいメリットがある。ところが上手に料理しないと、味付けによっては舌を濁す材料にもなり得る。
しかも日曜劇場は、前クール『小さな巨人』を初め、『A LIFE』『99.9』『下町ロケット』など、近年は大人の男が見て納得する路線が高い数字をとっている。それらと比べると今回の初回は極端に男性視聴者が少ない。同ドラマより『警視庁いきもの係』の方が多いくらいで、恋愛より渡部篤郎と橋本環奈の一風変わった刑事ドラマを選んだ人が一定程度いたようだ。
これまで大差がついていた両ドラマ枠の視聴率も、今回は9.8%対8.9%と珍しく肉薄されてしまった。

日韓共作となるドラマを実力派俳優の手でどのように料理していくのか。
どんな展開が待ち受けているのか。
繊細な坂口健太郎とワイルドな長瀬智也の好対照。そして吉岡里帆、大竹しのぶ、イ・スヒョクがうまく絡み、魅力的な物語を紡ぎ出すことを期待したい。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所

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