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"武井咲が銀座の女王になる"松本清張の名作『黒革の手帖』が始まった。

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武井咲, Jul 10, 2017 : 連続ドラマ「黒革の手帖」制作発表記者会見(写真:MANTAN/アフロ)


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江口洋介、仲里依紗(なか・りいさ)、滝藤賢一、高嶋政伸、真矢ミキ、奥田瑛二、伊東四朗など、豪華キャストが勢ぞろい。テレビ朝日ではすでに4回。TBSで1回。今回で5回目のドラマ化だ。
同局のドラマは刑事モノやサスペンスが多いが、夜の銀座を舞台に"ファムファタール"(男を破滅させる魔性の女)が、次々と獲物を狙っていくストーリーは新鮮だ。

■初回の概要

原口元子(武井咲)は、東林銀行世田谷北支店の行員。派遣社員だが、正行員と同じように業務のすべてをこなし、現場での信頼を得ていた。その支店は違法な"借名口座"を扱っていた。莫大(ばくだい)な金額を預ける顧客、陰であっせん・管理する上司、コネ入行の常識はずれな新入社員......。元子は、自分の生活との温度差を感じていた。父の借金を肩代わりした母が亡くなり、その返済のために夜は銀座のクラブ『燭台』でホステスもしていた。

そうした生活の中で、自分とは縁遠かった人々と出会う。
衆議院議員秘書・安島富夫(江口洋介)。楢林クリニック院長・楢林謙治(奥田瑛二)。銀座のクラブ『燭台』のママ・叡子(真矢ミキ)。大手予備校上星ゼミナールの理事長・橋田常雄(高嶋政伸)。政界のドン・長谷川庄治(伊東四朗)。
そんな中、支店の顧客の画像を内部職員がSNSに投稿するという事件が起きてしまう。犯人はコネ入行の新人だったが、支店長・藤岡彰一(菅原大吉)と次長・村井亨(滝藤賢一)は、罪を派遣社員の元子と山田波子(仲里依紗)に押しつけ、派遣切りをしようとする。これを契機に、元子が今まで用意していた秘密の情報『黒革の手帖』をもとに、1億8000万円の横領を企て、物語は怒涛(どとう)の展開を始める......

■テレビ朝日の気合

ドラマの出来には、テレビ朝日の気合が満ち溢(あふ)れている。
豪華キャストに見劣りしない銀座クラブのセット、華やかな衣装、迫力満点の音楽などだ。ド迫力、センス抜群の音楽の提供は、音楽プロダクション「ワンミュージック」の偉業である。この事務所は、若手30代の作曲家やミュージシャンが所属しており、その活躍は目覚ましいものがある。
去年の大ヒット『逃げ恥』の他にも、『家売る女』『世界一難しい恋』、今年は『大貧乏』『東京タラレバ娘』『母になる』などがある。さらに今クールでは『ブランケット・キャッツ』『わにとかげぎす』『カンナさーん!』などを所属アーティストが手掛けている。今ノリに乗っているチームと言えよう。
ドラマ音楽に留まらず、さまざまなジャンルを駆使しており、想像豊かな世界を広げてくれる。サントラとして聴いても、とても価値のある音楽集になっている。

■武井咲の可能性

今回、最も気合いが入っているのは、『黒革の手帖』の主演を最年少で務める武井咲(23)だろう。
そもそも同ドラマは、今から35年前に初めてテレビドラマ化されたが、その時の主演は当時39歳の山本陽子。既に映画・ドラマ・舞台で大活躍する大女優だった。
2回目のドラマ化で主演を務めたのは33歳だった大谷直子。やはりNHK朝の連ドラ『信子とおばあちゃん』や、日本アカデミー賞最優秀賞の『ツィゴイネルワイゼン』で主役を演じるなど、地位が確立していた人が演じた。
2時間ドラマとなった3回目は、36歳の浅野ゆう子だった。『君の瞳をタイホする!』『抱きしめたい!』などに多数出演し、"トレンディドラマの女王"と称されていた。
4回目は米倉涼子が抜擢(ばってき)された。23歳でモデルから女優に専念し、トレンディドラマで活躍をしている中、29歳で大役を任された。

こうした先輩女優と比べると、今回の主役の武井咲は弱冠23歳。清純な役を演じることが多かったが、今回はイメージを一転させ、銀座の高級クラブのママという、個性だけでは演じきれない役に体当たりしている。
銀行での上司や傲慢(ごうまん)な顧客に対する恨み、"カネ"に振り回されてきた理不尽な社会への怒り、夢を現実に変えるハングリー精神などを、露骨ではなくストイックに匂わせる演技は圧巻だ。がぜん心拍数の上がってしまう横領のシーンや、支店長と次長を堂々と"ゆする"シーンは、ドキドキしながらもなぜかスカッとする。
たまっていた邪魔な塊が、ポロッと取れた時のような爽快感すら覚える。あえてぜいたくを言えば、"原口元子"というキャラクターをもっと深読みした、マグマの核のような威圧感とフツフツと沸き起こる腹黒いパワーも見てみたい。

安島富夫役の江口洋介や、長谷川庄治役の伊東四朗ら大御所が登場すると、それだけでドラマが引き締まり、作品のクオリティがぐっと上がる。
叡子役の真矢ミキは、本人の人柄からか、銀座の高級クラブのママにしては優しすぎる感じもするが、役にはまった存在感は説得力がある。
また気が弱い波子も、仲里依紗の無鉄砲なパワーを秘めた演技力で、今後の暴れっぷりを予感させる。
武井咲も、これまでの殻を破り捨て、土壇場での凄みを見せ、視聴者の度肝を抜くような圧倒的な演技を見せてくれるものと信じたい。

松本清張の名作を新たに料理し直した、ごちそうをいただく木曜の夜。ぜいたくな時間を満喫させてもらうことにする。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所

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