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日本テレビ系列で木曜日の夜10時59分から放送の『脳にスマホが埋められた!』。これまで5話までが放送され、そろそろ全体の折り返し地点と思われる。
番組ホームページによれば、「アパレル企業に勤めるリストラ候補の主人公。彼の脳がある日突然スマホのようになり、自分と無関係な社内のさまざまなトラブルに巻き込まれる、一話完結のSFヒューマンドラマ」とある。

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新川優愛, Jul 03, 2017 : 連続ドラマ「脳にスマホが埋められた!」の完成披露試写会(写真:MANTAN/アフロ)


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■スマホが埋め込まれた人間の存在する世界とは?

最初に番組タイトルを聞いた時に思い浮かんだのは、『トータル・リコール』(2012年公開、コリン・ファレル主演)の、手のひらに埋め込まれた携帯電話だった。
この映画は、1990年公開のアーノルド・シュワルツェネッガー主演『トータル・リコール』のリメイク版。記憶を買ってバーチャル旅行をするまさにその時、現実だと思っていた植えつけられた記憶の下から、部分的に本当の記憶がよみがえり、本当の自分を探しつつ見えざる敵と対峙(たいじ)する、といういかにもSF的なストーリー展開が筆者の大のお気に入りだった。
物語の中では、登場人物が手を耳にかざして通話を行い、またガラスに手を触れると、ガラスが即席のモニターとなり、さまざまな映像やデータが映し出されていた。VR(バーチャルリアリティー)やウェアラブルが実現している現在、脳にスマホ(端末)を埋め込むと、どこまで世界が拡張するのか、期待に胸が膨らんだ。

■現代版透視能力? 読心術?

実際に番組を見ると、予想の斜め上を行っていた。
何と脳にスマホを埋め込まれた"スマホ人間"は、他人のスマホ(の画面)が見えてしまうのである。現代のスマホが持つ機能のうち、脳内スマホで扱われているのはほとんどが映像の投影で、唯一の例外が、近くにいる同じスマホ人間の位置を3次元メッシュに示すことであったが、投影されていたのは目の前の他人のスマホ画面。

リアリティを出すためか、他人のスマホ画面は、主人公側から見ると裏側になるので、吹き出しのメッセージが鏡文字になっていた芸の細かさに感心した。どうやらスマホ人間は、他人のスマホをのぞき見したり、他人のチャット"ニャイン"にメッセージを送ったりすることはできても、他人のスマホの操作まではできないようだ。とはいえ、他人の極めて個人的なツールであるスマホをのぞけるのだから、一般人に比べ限りなく優位の種になったわけである。

ちなみに脳内でなければ、他人のスマホを見ることは現代でも可能である。
例えばコールセンターで働くオペレータのPC画面を、スーパーバイザーが遠隔で、リアルタイムにチェックするということは普通に行われている。またアメリカの国防総省あたりは、要人だけでなく、地球上の全通話とメールテキストを傍受しているというのもおそらく都市伝説ではない。

■あか抜けないヒーロー

こんなすごい人間に進化したのであるから、さぞかしすごい活躍をするかと思いきや、もともと不器用な主人公・折茂圭太(伊藤淳史)は、進化してもやはり不器用なままで、全然ヒーロー感がない。

気高い理想を掲げて世直しに情熱を燃やすことはもちろんない。スマホ人間を求めて近づいてきたヒロイン・石野柳子(新川優愛)に脳内スマホの扱い方をレクチャーされた上、彼女の報復計画に気が進まないながらも協力することになる。
行きがかり上でも正義感は強いので、元部下を助けようとするも、元部下カップルに騙(だま)され、誤った行動に出てしまう。そしてスマホ人間になる前よりもさらに自信を喪失、脳内スマホの電源をオフるなど、ちょっと情けないくらいである。

能力と振る舞いのギャップが視聴者には受けるのではないかと思うが、ドラマの話の中では、報復をもくろむ柳子に見切りをつけられてしまい、彼女は別のスマホ人間と出会う。

■人間の本質

さて、このドラマの中では主人公以外にもスマホ人間が登場する。
パーティーの特別ゲストとして登場した1人目(林家ぺー)はともかく、今回登場の2人目・安達(佐藤寛太)は、突然とてつもない力を手にした人間の典型に思える。
「まずその力を使ってみたい」
「どうせ使うなら悪をこらしめるヒーローになりたい」
しかし信じていた人の裏切りを目にしてしまうと、守りたかった世界がくだらないものに思え、ニヒルな優越感を求めるようになってしまう。

■本当の強さ、かっこよさ

本当の強さとは、弱さである。
本当のカッコよさとは、己のカッコ悪さを知り、知ってなおカッコ悪い振る舞いが出来ること、と言い換えてもよい。
柳子(新川優愛)が新たに手を組んだスマホマンに、「お願いします、彼女を返してください」と頭を下げた圭太(伊藤淳史)。安達(佐藤寛太)は肩すかしをくらって戦意喪失(不戦勝)、柳子はその行為に心を奪われる。実際、見た目に反して、圭太は後光が差すほどにカッコよかった。

大いなるカタルシスであった。
さらに、感動シーン直後に憎まれ口をたたき合うコミカルさが視聴者を心地よく現実に引き戻す、という演出の心憎さにも、筆者はやられてしまった。

■SF<ヒューマンドラマ

最後に、強烈なインパクトの外見を持つ柳子の親友・安田部々香(安藤なつ)にボソリとものごとの本質を言わせる脚本と、安藤の演技力の秀逸さを書き加えさせていただきたい。

タイトルの割にSFの要素は多くないが、SFかどうかはどうでも良いくらい、この作品は秀逸なヒューマンドラマといえる。
後半戦がどう展開されるのか、楽しみだ。

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コラムニスト:小澤 森
監修:次世代メディア研究所

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