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今年も熱い甲子園の季節がやってきた。そこで今一度振り返っておきたい映画が、斎藤嘉樹と中村蒼(なかむら・あおい)のW主演による『ひゃくはち』(監督:森義隆、2008年公開)だ。野球部の補欠部員を描いた本作を見れば、試合の裏にあるドラマも想像しやすくなるのではないだろうか。

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阪神甲子園球場 (ペイレスイメージズ/アフロ)


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■"ベンチ入りできるかどうか"の青春

物語は、ノブ(中村蒼)と雅人(斎藤嘉樹)が2年生のときから始まる。応援の練習では、先輩から気合いが入ってないとボールを投げつけられ、頭を打つとバカになるのかという実験のためにペットボトルで殴られる。2人は先輩たちから理不尽な暴力を受けていた。そして、先輩が惜しくも甲子園を逃し引退した姿を見て、雅人とノブは「ついに来るぞ。俺たちの時代が」と握手を交わす。

そこから2人は、さまざまな手を使いベンチ入りをもくろむ。しかし、現実は厳しく、鬼監督のサンダー(竹内力)から任せられるのは雑用ばかりだった。ベンチ入りできるかどうかの当落線上にいる2人は、プロからも注目される逸材の純平(高良健吾)らレギュラー陣と、立場の違いや嫉妬から揉(も)めごとを起こしてしまう。さらには数少ないベンチ入りの座を賭けて、雅人とノブの間にも亀裂が生じる――。

■「誰でもいいから死んでくれ......!」

「本当は、メンバーの誰でもいいから死んでくれないかって、祈ってるやつがいるってこと。知っててください」

これは、雅人が新米記者の相馬(市川由衣)に投げかけた言葉なのだが、高校野球の厳しさが表れたセリフだろう。青春映画とはいえ、登場する球児たちは、まったくの優等生ばかりではない。雅人はたばこも吸うし、女子大生との合コンにも参加する。爽やかな熱血高校球児とはほど遠い。それでも「メンバーの誰でもいいから死んでくれ」と考えるほど、野球への気持ちは本物だ。

そんな雅人が県大会の決勝でおこなった"伝令のシーン"は印象深い。レギュラーと補欠、その壁の大きさに苦しんでいた雅人が、自分に出来る精一杯で、チームの役に立つことができた瞬間なのだ。

■甲子園の見え方が変わる?

全国約4000校のうち、甲子園に出場できるのはたったの49校。一握り中の一握りだ。しかも部内でもベンチ入りできる人数はたったの18人で、部員全員が出場できるわけではない。チームが甲子園に出場しようが、試合に一度も出場することなく引退する選手がほとんどなのだ。

この『ひゃくはち』は、努力の末に甲子園出場を手にする球児でも、惜しくも敗退してしまう球児でもなく、試合に出ることができない2人の球児を描いている。これを見れば、甲子園の表舞台に立てなかった球児たちの苦悩を、少しは理解できるかもしれない。そうすれば、熱い戦いが繰り広げられている現実の甲子園を、もっと深く楽しめることだろう。

(文/沢野奈津夫@HEW

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