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『サワコの朝』(MBS/TBS系全国ネット)は、土曜朝7時30分から放送される、タレントでエッセイストの阿川佐和子がインタビュアー兼MCを務めるトーク番組。毎回、各界の著名人がゲストに呼ばれ、トークの中でゲストが選ぶ曲も紹介される。番組ホームページには、各放送回の阿川のファッションも紹介されており、番組全体にグリーンを基調としたナチュラルな中にも、ちょっとしたオシャレ感が漂っている。休日の朝にちょうどよい番組だ。

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ハリセンボン/Harisenbon, Jun 09, 2015 : 「ハイネケン 誘拐の代償」のイベントに登場(写真:MANTAN/アフロ)


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■音楽は人を語る

インタビュー番組で、ゲストが思い入れのある曲について語るコーナーが設けられることはままある。
人が好む音楽は、結構その人の背景なり人となりを映し出している。つまり好きな食べ物や好きな服装を聞くよりも、深い情報が得られるように感じる。好きな映画や本を聞いてもそのような情報は得られるだろうが、音楽は繰り返し聴けるし、他のことをしながら聴けるので、その人のよりコアの部分に根付いているような気がする。

■ゲストの面白エピソード

今回のゲストは、テレビで見ない日はないほど人気の女性お笑い芸人コンビ「ハリセンボン」。
箕輪はるか(37)が挙げた「思い出の中で今でも輝いている曲」は、DREAMS COME TRUEの「うれしい!楽しい!大好き!」。近藤春菜(34)が「今、心に響く曲」として挙げたのは安室奈美恵の「Contrail」(選択を間違ったことがわかっても、分岐点には戻らず前に進んでいく、という趣旨の歌詞)。
とても明るく、あるいは前向きな2つの曲だが、それぞれの曲にまつわるエピソードはちょっと変わっている。はるかは「タイトルの3つの感情"うれしい""楽しい""大好き"が、どれも自分になかったから」という。そもそも芸人を目指したのも、あまりにも人付き合いに不慣れで、「少しでも人と話せるようになるように」とリハビリめいた理由からだったらしい。「目立ちたい」「有名になりたい」という要素はほとんどなかったようだ。
いっぽう春菜は、アムラー全盛期の頃からの安室の大ファン。さすがにアムラーの格好はしないながら、自らアムラーポリス(アムラー仲間の服装などをチェックする役割)を自任していたという。彼女自身「コンプレックスを笑いに変えたい」という思いがある中で、困難にぶつかる度に、この曲を聞いて元気をもらうそうだ。

■戦略的提携関係

これひとつ取ってみても、二人はなかなかの凸凹コンビである。
人付き合いはおろか、自ら発信することも苦手なはるかは、お笑いの世界に飛び込んだことで、その存在感のなさが逆に際立って、芸風に生かされている。見た目はアムラーになれなかった春菜は、「コンプレックスを笑いに変える」という目的の中にあって、自らが最大限生きるよう、戦略的に箕輪と組んだのではないかと思われる。
アイドル的な容姿でないことを逆売りするだけの人なら他にもいる。何かもう一つ必要だと思ったとき、とらえどころのないはるかから「何かを引き出し、相乗効果を得ることが自分ならできるかもしれない」と無意識に思ったのではないだろうか。自分にない要素を相手から引き出し、組み合わせたものに付加価値やオリジナリティをつけていくというのは、クリエイティビティとしても、処世術としても、極めて高等なテクニックだ。もちろんその利益が、相手にも還元されているので成り立つ関係である。

■「角野卓三じゃねぇよ」誕生エピソード

番組では、二人それぞれのとっておきのエピソードが紹介された。MCの阿川から「角野卓造じゃねぇよ!」のギャグ誕生のきっかけを聞かれた春菜。
芸人1年目にモノマネのオーディションに行かされた時、モノマネ・ネタがなかった春菜らは、同期で集まり互いに「誰に似ているか言い合う」こととなった。そこで『渡る世間のお父さんに似てない?』と指摘されたのが事のきっかけだった。
その後、ロンドンブーツ1号2号の番組に初めて出演した際に、田村淳へ「角野さんに似てるっていわれます」と売り込むと、淳が「角野さんどう?」と話を振ってくれたという。その時、咄嗟(とっさ)に「角野卓造じゃねぇよ!」と言葉が出てきたという。
以後、「~じゃねぇよ!」は春菜のおはこになっていく。
マイケル・ムーア監督、シュレック、ケンタッキーおじさん、カンニング竹山、サンドイッチマンの伊達みきお、亀井静香、吉田茂等々。かくして20代女子が、「~じゃねぇよ!」で次々に世界の中年おじさんを飲み込んで行った。「モンタージュ写真で作った人類の平均的な顔」とスタジオでは盛り上がりを見せていた。

■片思いすらなかったはるかに彼氏!

一方はるかは、28歳で人生初の彼氏ができたエピソードを披露。
春菜が知らないうちに、「実は......京都旅行に行ってきました」と報告され、お土産にお守りを渡された時の驚きを春菜が打ち明けた。
「京都旅行でギューとかチューとか何かあるんでしょう」とストレートに質問する阿川。
照れ笑いを浮かべながら絶句するはるか。すかさず春菜が「女優じゃねぇんだからさ」と絶妙な突っ込みで爆笑をとり、フォローする。

さらに恋人がいない春菜に対し、はるかの態度が変わったという。「ちょっと上から見てくるわけですよ。"春菜も自信持った方が良いよ"とか。人ってみるみるうちに調子乗るなって」と爆笑の連続。
ところが当時の彼氏とは「4年ぐらいお付き合いして、お別れしました。その後、何もないですね。1回お付き合いできたら、いいなって思っていたので満足です」とはるかは最後まで控えめだ。

■規格外でなんぼ

人を感動させるのは簡単でないが、人を笑わせるという職業も容易でない。
人の笑うツボは、感動するツボに比べてバリエーションが多いし、世情や流行と共に移り変わる。数々の表現の中でも、一番幅が広いのはお笑いかもしれない。

かつてお笑いは、時代や世相の皮肉を表現し、世の中の不満の受け皿になってきた歴史もある。
現代においても、「世の中の常識から普通はタブーとされる、ちょっと逸脱したことをやって見せたり言ってみたりすることで笑いを取る」というスタイルは多く見受けられる。

劣等感から芸人を目指した近藤春菜。箕輪はるかは極度の人見知り。
普通に見るとマイナスの要素が出会っただけである。ところがマイナス二つが化学反応を起こすことで、女性お笑い芸人として断トツの人気を獲得し、人々に笑い=幸せをもたらしている。

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コラムニスト:小澤 森
監修:次世代メディア研究所

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