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奥田民生を崇拝する雑誌編集者(妻夫木聡)と、男を狂わすファッションプレスの美女(水原希子)との恋愛模様を描いた映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』が9月16日に公開を迎える。メガホンをとった大根仁監督と、原作者の渋谷直角は、以前から交流があり「説明しなくても通じる部分がある」と互いに信頼しあっているという関係性。そんな二人に作品の魅力や、映画完成までの日々を振り返ってもらった。

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映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』9月16日に公開


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■妻夫木くんが「やりたい」ということで大きな企画に

――渋谷先生の作品を実写映画化するまでのいきさつを教えてください。

大根: 以前から知り合いで、SPAでの連載が始まったときから作品は読んでいたんです。直感的に、映像化するなら自分が一番向いているなと感じていたのですが、キャスティングを含めた具体的なビジョンがなかなか思い浮かばなくて、自分から積極的に企画を持っていくことはしていなかったんです。でも単行本化されてわりと早い段階で、担当の編集者から「妻夫木(聡)くんがやりたいと話している」と聞いて、彼が入ってくれるなら、大きな展開ができるはずと思い、東宝のプロデューサーに企画を持っていきました。そうしたらやりましょうという話になって進んでいったんです。

――渋谷先生はご自身の著書で映画化していく過程を「オロオロ日記」として書かれていますが、出来上がった作品を見てどんな感想を持ちましたか?

渋谷: 段階を踏んで3回見させていただいたのですが、最初はDVDだったんです。家でお酒を飲みながらの鑑賞だったのですが、めちゃくちゃおもしろくてずっと笑っていました。すごく感動して大根さんに「おもしろかったです」って伝えたら「まだ3割程度だから」っていわれてビビったのを覚えています。

大根: おもしろさが3割じゃなくて、(最初の段階のDVDは未完成で)完成度として3割ぐらいのものだってことだったんだけどね(笑)。

渋谷: あとは、完成しちゃうと急に不安な気持ちも出てきました。怖くなるというか......。

――その不安とはどんなものなのでしょうか?

渋谷: 映像化に対する不安ではないんです。なんというか、僕の漫画にしても文章にしても、たいして売れるものじゃないので、東宝さんが、こんな大きな規模でやるなんていう状況に対して怖いというか。僕はもう42歳なのですが、もし25~26歳ぐらいだったら、こういう取材の場でもいきったことをいっていると思うし、もっと浮かれていたと思うのですが、40代になると、大根さんのキャリアに傷つけちゃいけないとか、東宝に迷惑かけちゃいけないとか、そういう気持ちに引っ張られていっちゃう。

■大根さんも僕も"藤原ヒロシが入っている"サブカルに共感(渋谷)

――原作者と映画監督というのはいろいろな距離感がありますが、渋谷先生と大根監督はとても近い関係のようですね。

大根: 監督と原作者という関係だけではないですね。俺の「POPEYE (ポパイ)」の連載にイラストを描いてもらったりしているし、共通の知り合いもいっぱいいて、近いところで暮らして遊んできたりしているので。同じ学校で「あいつとは絶対仲良くなれそうだな」って感じているやつとバンドを組んでみた感じ。共通言語も多いし、描いてあることで、ハテナと思うことはないですね。

渋谷: 音楽とか洋服とか漫画とか映画とか、カルチャーと呼ばれているものへのスタンスに共感できる人。「サブカル」って一括りにしても、たぶんいろいろあって、マガジンハウス的なカルチャーというのもあるんですよね。音楽、映画、マンガばっかりじゃなく、普通に洋服とかインテリアとか雑貨とかアート的なものも超好き、みたいな。藤原ヒロシ的なものとかも。で、「サブカル」と括られるところでは、意外とマガジンハウス的なカルチャーが入ったコンテンツを発信してるヒトってそんなに多くないのかな、って気がするんです。大根さんも僕もそこが"入っている"。だから、わりと影響を受けてきたものが近いという安心感があります。

大根: 藤原ヒロシ的なものを妄信しているわけじゃないけれどね。

渋谷: もちろん。でも劇中の編集部に置くもの一つでも、そういうのを実際に好きで買ったり興味あったりしてきた人と、興味ないのに置いちゃう人だとぜんぜん説得力が違って見えるんですよね。映画を見て大根さんで良かったって思いました。

大根: でも「あり」か「なし」かを判断するのは非常に難しかった。俺もすべてわかっているわけじゃないしね。

渋谷: 編集部ものって絶対仕事してない感じの職場とか割とあるじゃないですか(笑)。この作品に出てくるライフスタイル誌「マレ」の編集部なんかは、こんなおしゃれな編集部は実際にはないんだけど、ちゃんと雑誌を作っているにおいがあった。そこはすごいなと。大根さんの作品に出てくる編集部はいつもそうだけど。実際、妻夫木さんたちはマガジンハウスの編集部に見学にいっていただいて、それを取り入れているのでディテールとか、マガジンハウスでアルバイトしていた人間にはヤバイものがありました(笑)。

――劇中登場する小道具の「マレ」は渋谷先生が作られたんですよね?

渋谷: 最初、「マレ」のバックグランドだけ教えてといわれたので、「(J・D・)サリンジャーの最後の作品が偶然載っていた」「毎号、紙質と表紙のロゴを変えるアナーキーな精神」とか適当なことばっかりいっていたら、「作ってくれ」ってこちらに振られたのでヤバイって思いました(笑)。

大根: 企画が立ち上がったものの、それほど準備に余裕があるわけではなくて。編集部のハコはできたのですが、雑誌自体は、劇中劇というか、劇中フィクションだったので、そういうものって作るのが難しいんです。『バクマン。』でもそれは経験しているのですが、もともと「週刊少年ジャンプ」という実在する雑誌もあるし、その中で新連載されそうな漫画ということなので劇中再現のイメージはしやすかった。でも「マレ」のようなライフスタイル誌は本当に難しい。それで俺が一番信頼している美術デザイナーの都築(雄二)さんに相談したら「美術で引き受けると変なことになると思うので、誰かに頼んだほうがいい」って話になって、それなら「描いた人が一番いいんじゃない?」ってことになったんです。話をしたら快く引き受けてくれたんですよ(笑)。

――渋谷先生もスタッフの一員という感じで携わっていたんですね。

渋谷: 一員ではないですけれどね(苦笑)。

大根: いや間違いなくスタッフの一員だよ(笑)。

渋谷: もし万が一、次にまた僕の作品が映像化されるという話になったら、これからはテキトウなこと言うの絶対やめようと思いましたね(笑)。でも僕にとっては未体験ゾーンへの突入だったので、経験値として得られるものは得たいという思いもあったし、雑誌作りとは違う新鮮さがあったので大変でしたがおもしろかったです。

――渋谷先生も、この作品を映像化するなら大根監督という思いは強かったのですか?

渋谷: 大根さんにぜひ! というより最初からつばをつけてくれていたので、もし映像化の話になったら、大根さんが一番リアルに作ってくれるだろうなという思いはありました。

■"狂わせガール"は水原希子を一本釣り

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――水原希子さん演じた"狂わせガール"はとてもリアルな女性でしたが、渋谷先生の経験に基づいたキャラクターだったのでしょうか?

渋谷:「この人を描いてやれ」みたいなモデルはまったくいないのですが、よくそういわれますね。毎回と言っていいほど言われる。なんででしょう。

大根: (妻夫木演じる)コーロキの佇(たたず)まいが、渋谷直角的なところがあるからね。なるほど、これは実話だなって思っちゃうのかもしれないね。

渋谷: 僕にも創作という能力があるんですよ!(笑)。でも女の人に会って、今までのやり方が通用しなくてオロオロするという経験はありましたし、そういう細かい感情の機微は入っていると思いますが、別れた彼女が悲しむということはないですよ(笑)。

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――エロカワガールを演じた水原さんですが、苦心された部分はありましたか?

大根: なかったですね。あかり役は希子ちゃんをアテ書きしていましたし、芝居の飲み込みも早かった。現場に入ったら、こちらの想像以上で、いったことはなんでもやってくれました。セクシャルなシーンやディープキスなども、まったく恐れがないんです。それを受け入れる妻夫木くんもすごかったし、希子ちゃんも楽しんでやっていましたね。

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――大根監督作品の女性は本当に魅力的ですね。

大根: 特別なことをしているつもりはないんです。女優はみんなかわいいしきれいだし、エロいでしょ? そのまま撮れば、そう写るはずなんですよ。

渋谷: でもそうじゃない映画もたまにありますよね。「この女優さん、なんで今回はこんなかわいくないんだろう」みたいな。大根さんの作品はそういうガッカリはないですね。女性撮らせたら大根仁か成瀬巳喜男かっていうぐらい。僕の中では安心の(笑)。

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大根: あんまり自覚はないですね。ただ昔みたいに女優だからという意識はなくなりましたね。以前は嫌われたくないという遠慮があったのですが、別に付き合えるわけでもないし、年を重ねてそういうのはなくなりました。芝居やってダメだったときの理由が、昔は「機材のタイミングでちょっと」みたいないいわけをしていたのですが、いまは「振り返った姿がブスだったからもう一回」とかいっていますからね。それが大きいのかもしれませんね。オカマのおっさんみたいな感じですよ(笑)。

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――最後に渋谷先生から作品のオススメポイントを教えてください。

渋谷: 一日のイベントの一つに組み入れていただいて観ると楽しいと思うんですよね。たとえば、友達数人や恋人と約束して、ご飯とか飲みに行って、軽く飲んだあとに映画館に行って、鑑賞後また飲みながら「アレはさあ」「俺も昔さあ」って語らうような......。あともう一つは、彼女、彼氏じゃない異性とお忍びで観に行く、っていうのも面白いかもしれません(笑)。

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映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』は恋の喜びや絶望を味わい、もがき苦しむ抱腹絶倒のラブコメディ。音楽は、タイトルにもなっている奥田民生の珠玉のナンバーを余すことなく全編に使用。個々の楽曲は主題歌やBGMの枠を超えた役割を与えられ、大根マジックにより革新的な音楽映画として再編集。出演は妻夫木聡、水原希子、新井浩文、安藤サクラ、リリー・フランキー、天海祐希、松尾スズキ。2017年9月16日公開。

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(取材・文・撮影:磯部正和)
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大根仁(おおね・ひとし)
1968年12月28日生まれ、東京都出身。テレビドラマの演出家として数々の作品を手掛ける一方、2010年にテレビ東京で深夜ドラマ化された「モテキ」の劇場版で映画監督デビュー。その後も、『恋の渦』や『バクマン。』などで監督を務め高い評価を受ける。座右の銘は「秘すれば花」。

渋谷直角(しぶや・ちょっかく)
1975年5月12日生まれ、東京都出身。漫画家、コラムニストとして、数々の連載や著書を持つ。主な著書には、本作のほか、「コラムの王子さま(42さい)」「デザイナー渋井直人の休日」が発売中。座右の銘は「もののあわれ」。

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